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Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
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マイナス金利で生じた邦銀と日銀の溝、好評の金融支援策でも埋まらず

  • 銀行業界は日銀の流動性供給、資金繰り支援策は歓迎
  • 邦銀幹部は利ざや圧迫するマイナス金利政策の撤廃を引き続き要望

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新型コロナウイルス感染症対策として日本銀行が打ち出した大規模な金融支援策も、邦銀と日銀との間に生じた溝を埋めるまでには至っていない。邦銀の多くが今なお日銀のマイナス金利政策に強く反発しているからだ。

  総枠75兆円の資金繰り支援策は銀行業界から歓迎されている。もっとも、複数の邦銀中枢幹部はブルームバーグのインタビューで、マイナス金利をさらに引き下げるべきではないのはもちろん、マイナス金利そのものをやめるべきだというのが引き続き銀行界の支配的な意見だと一様に語った。

     

銀行の悩みは尽きない

景気回復は緩やかなペースにとどまる見通し

出所:内閣府、ブルームバーグ

備考:実質GDP成長率(前期比年率)

   

  こうした発言は、経済危機の真っただ中においてさえ、日銀が追加緩和策として政策金利を使うことのハードルが極めて高いことを示唆している。世界の他の中銀もマイナス金利の深掘りや導入には消極的だ。

  6月15-16日に開催予定の日銀金融政策決定会合では、マイナス金利の深掘りは予想されていない。新型コロナへの対応として日銀はこれまでのところ、国債買い入れのめどを撤廃し、上場投資信託(ETF)の買い入れを拡充、無利子で資金供給する2つの制度を導入した。

エコノミストの大半は次回日銀会合で大きな動き予想せず

  景気と物価の押上げを目指す日銀のマイナス金利政策で、邦銀の利ざやは長期にわたって縮小しているため、マイナス金利はデメリットの方が大きいと考える邦銀と日銀の関係は冷却化した。

  全国銀行協会の三毛兼承会長(三菱UFJ銀行頭取)は4月の定例会見で、「金利低下やイールドカーブ全体がフラット化したことに伴い、運用も非常に難しくなっており、銀行のみならず金融機関全体の収益環境は確実に厳しくなっていると言えると思う」と語った。

  2016年3月期から19年3月期にかけて、全銀協に加盟する117行の国内の資金利益は6.4兆円から5.9兆円に減少。金融機関の収益性を示す純預貸利ざやは、TOPIX銀行指数を構成する銀行の平均で1.08%と、マイナス金利政策が導入された16年初めの1.23%から低下している。

支援を歓迎

  メガバンクの中枢幹部の1人は、流動性供給で市場の緊張を和らげた3月以降の日銀の対応、特にドル供給オペレーションを高く評価している。他のメガバンクの2人の幹部も同じ意見だ。

  ただ、この幹部は、そもそも日銀によるマイナス金利政策がここ数年間で邦銀の海外展開を加速させた面もあり、ドル供給オペはある意味、日銀としてはやるべきことをやっただけだと付け加えた。

  このメガバンク幹部3人のほか、地方銀行の幹部3人は、日銀はマイナス金利政策をやめるべきだと異口同音に指摘する。

  地銀にしてみれば、新型コロナの影響で景気が落ち込む中、ドル供給オペの拡充よりも企業の資金繰り支援プログラムの方が重要度が高い。

  ある地銀幹部は、今回のコロナ関連の貸し出しオペレーションに当たり、日銀は銀行側にもヒアリングを行い、実態に即したものにしてくれたと評価。特に貸し出しに相当する額の日銀当座預金にプラス0.1%を付利すると決めたことはとてもありがたいと語った。

    

マイナス金利が足かせ

邦銀の国内資金利益は減少傾向

出所:全国銀行協会

備考:国内の資金利益(3月期末ベース)

  日銀の黒田東彦総裁は5月、現時点でマイナス金利を深掘りする必要はないとの認識を示したものの、4-6月期の日本経済がこの60年余りで最大のマイナス成長に陥る見通しであることを踏まえると、向こう数カ月に日銀が追加措置を講じる必要に迫られる可能性は残っている。

  マイナス金利の深掘り対する銀行業界の根強い反発があるにもかかわらず、日銀はなお、利下げは一つの選択肢というスタンスを崩していない。

  日銀は超低金利政策の長期化に伴う副作用の拡大を留意している。ただ、それと同時に日銀は、政策金利をゼロ%かそれを上回る水準に引き上げても、結果として景気悪化や円高進行、株価下落を招きかねず、銀行の助けになるのかどうか確信が持てていないと、事情に詳しい複数の関係者が語った。

  ブル―ムバーグが6月に実施した調査によれば、エコノミストは1ドル=98円を超えて円高が進んだ場合に、日銀は利下げに動かざるを得なくなるとみている。海外でさらにマイナス金利政策が広がることが、日銀を追加利下げに踏み切らせる唯一の要因と予想する向きもあった。

  邦銀幹部らによれば、いずれにせよ日銀の資金繰り支援策によって邦銀の日銀に対する姿勢が変わることはない。

  別の地銀幹部はブルームバーグに、日銀のコロナ関連オペとマイナス金利政策は分けて考える必要があると述べた上で、コロナ関連の貸し出し支援策はありがたいが、だからといってマイナス金利政策の免罪符になるわけではないと語った。

原題:BOJ’s Help for Banks Doesn’t Thaw Resistance to Negative Rate(抜粋)

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