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【コラム】アップルMacチップ内製化、インテルに重層的打撃

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Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

ついにそれが実現する。米アップルはコンピューター「Mac(マック)」にインテル製半導体ではなく独自プロセッサーを搭載しようとしている。ブルームバーグ・ニュースは9日、アップルが年内の切り替えを今月中にも発表する準備を進めていると報じた。

アップル、自社設計Mac用チップへの移行を今月にも発表へ-関係者  

  新しいMacには「iPhone(アイフォーン)」に搭載されているのと同じ、アームによる設計を基にした自社開発の半導体が搭載されることになる。ブルームバーグのマーク・ガーマン記者によると、パフォーマンスと電力効率が優れていることを理由に、アップルはMacの全ラインアップを自社製プロセッサーに切り替える計画だ。

Macs Have Room to Grow

2020 U.S. PC unit share for first quarter

Source: Gartner

  この動きはインテルの半導体ビジネスに複数の悪影響を与えるだろう。最も明白なのは、アップルのPC製品に対する唯一の半導体サプライヤーとしての収益を失うという直接的な影響だ。ガートナーの最新調査によれば、Macは現在、販売台数ベースで米国のPC市場の12%を占めている。

  またアップルは今後、台湾積体電路製造(TSMC)の一段と優れた半導体製造技術を活用できるようにもなる。半導体ファウンドリー(受託生産)大手のTSMCはアップルの半導体も製造している。ここ数年、TSMCはより小型でより高度な半導体を製造する能力でインテルの先を行っている。

  一見したところ、インテルの財務上の打撃は限定的となりそうだ。しかし、より大きな頭痛の種になりそうな副次的効果がある。まず、もしアップルがより高性能かつ電力効率に優れた半導体を製造できれば(スマートフォン市場では既に証明されたことだが)、アームの半導体技術をベースにしたMacはその差別化要因を背景にPC市場でシェアを拡大できるかもしれない。さらにアップルの動きは、インテルにとって最重要なサーバー向け半導体事業に深刻な脅威をもたらす可能性がある。

  現在、インテルはクラウドコンピューティング業者などにサーバー向け半導体を販売する高収益のデータセンター事業で圧倒的優位に立っている。この分野でのインテルの売上高は2019年に235億ドル(約2兆5300億円)に上り、営業利益は102億ドルとなった。IDCによると、昨年の売り上げベースでインテルは世界のサーバー向け半導体市場で93%のシェアを有していた。米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のシェアは5%だ。

  インテルはこれまで長期にわたり、サーバー分野で強い市場ポジションを維持できていた。しかし、アームの技術をベースにしたMacの登場はそれを一変させるかもしれない。

  リナックスの生みの親リーナス・トーバルズ氏は、アームの半導体がサーバー分野で勢いを得るのに苦労している主な理由として、アームの技術をベースにしたPCがどれもクリティカルマス(普及率が跳ね上がる分岐点)に達していない点を指摘してきた。開発者がサーバー向けプログラムをローカルマシン上で繰り返しテストできることが重要だという。Macがアームの技術をベースにした半導体に移行すれば、開発者はアームをベースにした多くのローカルマシンを手に入れることになり、新進の半導体基盤技術に活況なエコシステムが提供されることになる。

  確かに、アップルの動きが市場に影響を与えるまでには時間がかかるだろう。インテルは現在、新型コロナウイルスの感染拡大によるインターネット利用増加に伴うクラウドコンピューティング需要の急増と、在宅勤務用コンピューター需要の増加という追い風を受けている。また各アプリケーションは、アームの技術をベースにしたアップルの半導体でうまく動作するよう最適化しなくてはならない。

  しかし、今後数年でインテルの主要事業はアップルの動きに脅かされるようになる。このステップは重要であり、半導体業界の転換点となる可能性が大きい。

(テ・キム氏はブルームバーグ・オピニオンのテクノロジー担当コラムニストです。株式アナリストとしてのキャリアを経て、かつてはバロンズでテクノロジーを担当していました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Apple’s Mac Chip Switch Is Double Trouble for Intel: Tae Kim (抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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