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「ベルリン」か「クリミア」か-香港民主派はトランプ政権に期待

  • 香港統制強化と「戦狼外交」で中ロの違いなくなる-マサンエス氏
  • 黎智英氏は香港とクリミアの危機は全く違うと認識
習近平国家主席

習近平国家主席

PHOTOGRAPHER: KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES
習近平国家主席
PHOTOGRAPHER: KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

民主活動家として知られる香港メディア界の大物、黎智英(ジミー・ライ)氏は、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が香港の「国家安全法」を制定する方針を採択した直後、香港が米ソ冷戦時代のベルリンのようになってしまったとツイートした。だが恐らく正確ではない。引き合いに出すなら、ロシアによる2014年のクリミア併合がより適切かもしれない。

  クリミア危機はウクライナの政治的混乱とクリミアにも近いソチでの冬季五輪のタイミングを計るかのように起きたが、習近平政権もまた新型コロナウイルス感染症(COVID19)のパンデミック(世界的大流行)で香港の民主派が十分に活動できず、香港完全統治の目標に北京側が一歩近づいても大規模な抗議活動を招くリスクが低下する機会を捉えた。

  ポルトガル政府で欧州問題を担当し中国に関する著書もあるブルーノ・マサンエス氏は、「少なくとも欧州では、中国はこれまでロシアよりも責任があり予測可能な国と見なされていた」が、今年の新型コロナ感染拡大以後、習政権が香港統治を巡る欧米の不満を無視すると決め、高圧的な態度で臨む「戦狼(せんろう)外交」を推し進めたことで、中ロの違いはなくなりつつあると指摘。香港国家安全法は「中国にとってある種のクリミア『モーメント』」だと話す。

  香港紙の蘋果日報(アップル・デーリー)を所有するメディアコングロマリット、ネクスト・デジタルのエグゼクティブディレクターである黎氏は電話インタビューで、米国はこうした中国の変化を認識し、旧ソ連による1948年のベルリン封鎖に対抗すると決断したように、香港自治の侵害に対峙(たいじ)してほしいと語った。当時のトルーマン米大統領は西ベルリンへの大規模な物資空輸で欧州でのソ連の勢力拡大をけん制し、越えてはならない一線「レッドライン」を明確に示した。

  黎氏によれば、米ソ冷戦のように米中の「新冷戦」は相反する価値観の闘いだ。リベラルな香港市民はこの闘争において当然、米国側であり、共通の価値観を中国本土に広める拠点を提供し、本土の人々に共産党体制に対して立ち上がるよう説得することすらできるかもしれないと黎氏は主張。逆に、米国に断固として対抗する十分な意思がないと中国が見なせば、共産党は「台湾を攻撃するためこの機会を利用」し、「アジアにおける米国の覇権に完全な疑問符が付くだろう」と述べた。

  ロシア科学アカデミー極東研究所のバシリー・カシン上級研究員は、クリミア危機との類似性には疑問を呈する。クリミア危機が第2次世界大戦後初の欧州での領土併合を阻止できなかったという米国の力量不足を示唆する一方で、中国による香港統制強化は米国にとって総体的には有利に働き、香港国家安全法は「台湾などで反中世論の形成に利用することが可能」だという。昨年の香港デモで抗議参加者と警察が衝突する様子が映像で報じられると、台湾で反中意識が高まり、一時は再選が難しいとみられていた独立志向の強い蔡英文総統の支持率が上昇、今年1月の総統選勝利につながった。

  香港とクリミアの危機は実際には全く違うと認識している黎氏は希望を捨てていない。国内総生産(GDP)が現在のドルベースで米国の1割にも満たないロシアは、米国の政権や国民にとってたいして重要ではない。クリミア併合時にプーチン大統領を止めるためになすべきことを断行するには当時のオバマ米大統領は「紳士的過ぎた」と黎氏はみている。

  だが中国は今や米国「最大の敵」であり、尺度によっては経済規模でもすでに米国を上回っているか、すぐに追い抜く。それに現職の大統領が「中国ウイルス」と呼ぶCOVID19で生命や仕事を失ったことに米国民は怒りを感じている。トランプ大統領では「恐らく違ってくる」と考える黎氏は、「トランプ氏も強硬だ」と語った。


原題:In Hong Kong, Xi Jinping Takes a Page From Vladimir Putin’s Playbook (2)(抜粋)

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」に掲載)
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