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再び頭脳流出の恐れ、「香港人」の移住先は豪英加か-台湾にも関心

  • 「2、3分ごとに問い合わせ」と不動産・移住コンサルティング会社
  • 中国への返還を控え推定30万人が1990-94年に香港を去った

香港で生まれ育ち、教育を受け、夫と出会ったフィリス・ラムさんは、子育ても香港でするつもりだった。だが今は、42年間住む香港を去るしかないと感じている。

  「香港の将来を信じることができない」ため、「幼い子ども2人たちのために計画」が必要だと話す。中国による統制強化で彼女のように考える「香港人」が増えている。

Lunchtime Protest in Central District as Hong Kong's Leader Asks Residents to Support National Security Law

抗議のため英植民地時代の香港の旗を振る(香港のIFCショッピングモールで、5月29日)

フォトグラファー:Lam Yik / Bloomberg

  中国の統治で自由が侵食されると長い間恐れてきた香港市民は先週、岐路に立たされた。英国から返還された香港に国家安全法を制定する方針を中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が採択したことで、香港に高度の自治を保障してきた「一国二制度」が骨抜きにされるとの懸念から海外移住に関する問い合わせがコンサルタントに殺到している。

  「2、3分ごとに問い合わせがある」と不動産・移住コンサルティング会社グローバル・ホームのゲーリー・レオン最高経営責任者(CEO)は語る。顧客からの質問はいつもの約20倍で、移住先として台湾と欧州について最も多く尋ねられるという。

  新型コロナウイルスとの闘いに伴う渡航制限が多くの国でまだ続いており、最終的にどれくらいの香港住民が移住するか見極めるには早過ぎるが、英国と米国、台湾は一部の香港市民について移住受け入れ要件の緩和を示唆しており、「エクソダス」とも呼ぶべき住民が大挙して香港を脱出する事態もあり得るとコンサルタントらはみている。

香港からの資本流出懸念が再燃、新たな政治的混乱で-米の対応に注目

  香港脱出が波のように広がれば、多国籍企業にとって香港の魅力は低下する公算が大きい。大中華圏およびそれ以外のアジアでの成長を図るため何百という企業が香港の人材に頼っている。香港の米国商業会議所は優秀な社員をつなぎ留めるのが一段と難しくなる恐れがあるとみている。

金融市場で香港攻防戦、支える本土資金と撤退うかがう外国人投資家

  昨年以降、香港を去ろうとする住民は増えた。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案は市民の激しい反発を招き撤回されたが、同法案に抗議するデモ参加者と警察の衝突が香港中心部のビジネス街で続いた。

Demonstrators Attend Global Anti Totalitarianism Rally In Hong Kong

機動隊の催涙ガスを避けるためデモ参加者が雨傘を広げる(香港の抗議活動、2019年)

写真家:Chan Long Hei / Bloomberg

  香港の詳しい移民統計はないものの、犯罪歴がないことを証明する優良住民証の申請が増加。この住民証は外国のビザ(査証)申請時に求められることが多く、2019年6月-20年4月の月間申請件数(平均)は2935件と、18年から50%増えた。

Applications Surge

Monthly average of applications for no criminal record proof rose since protests

Source: Hong Kong Police

  以前も香港は頭脳流出に見舞われた。中国への返還後に公民権と資本主義制度が破壊されると恐れた推定30万人が1990-94年に香港を去った。だが「香港の死」というそうした懸念は杞憂(きゆう)に終わり、むしろアジアの金融センターとして香港の地位は返還後の20年間でより一層確立された。

  国家安全法制について香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「ごく少数派による違法・犯罪行為ならびに活動だけが対象となり、圧倒的多数の市民の生命や財産、基本的な権利・自由は守られる」と政府のウェブサイトに掲載した住民向け書簡で主張している。

香港行政長官、国家安全法への理解と支持呼び掛け-市民宛てに書簡

Hong Kong Chief Executive Carrie Lam Holds News Conference

5月22日の記者会見で語る林鄭月娥行政長官

フォトグラファー:Justin Chin / Bloomberg

  公務員のジョリー・ローさんは香港にとどまるつもりだ。高齢の両親のそばに居続けたいと考えており、海外特有の問題も懸念している。ニューヨークで学び、北京で働いたこともあるローさんは移住先で「人種差別などの別の問題」を抱えるかもしれず、「香港に帰りたいと後悔したくはない。故郷を守るために最善を尽くすべきだ」と述べる。

  中原移民顧問(香港)はオーストラリアや英国、カナダなどへの移住に関心を持つ人々から1日当たり最大100件の問い合わせを受けており、台湾やマレーシア、ポルトガルなどの人気も高まっている。「国家安全法が確実に要因」と同社マネジングディレクターのデービッド・ホゥイ氏は語る。

Lunchtime Protest in Central District as Hong Kong's Leader Asks Residents to Support National Security Law

 英政府発行の海外市民(BNO)旅券を掲げるデモ参加者(5月29日)

フォトグラファー:Lam Yik / Bloomberg

  美術界で働く30歳のミンさんは「香港で検閲が一段と厳しくなると恐れている」と打ち明ける。公の場で触れるのが難しいテーマだとして名字を明かさないことを条件に「ここに未来は見えない。選択肢を探す時だ」とミンさんは話してくれた。

英政府、香港居住者に市民権獲得の道開く可能性-国家安全法巡り

  英政府発行の海外市民(BNO)旅券を持つラムさんと夫は、移住先をまだ決めていない。カナダを考えているが、英国ならベストだ。ラーブ英外相は5月28日、中国が香港国家安全法を制定する方針を撤回しない限り、BNO旅券を持つ香港居住者に市民権獲得への道を開く考えを示した。香港では300万人近くがBNO旅券の申請資格を有し、約30万人が同旅券を保有している。

  「いずれにしても子どもたちを海外に住ませることになる」とラムさんは言う。 「香港での今の環境が子どもたちにとって良いとは思えない」ためだ。

原題:Security Law Sends Hong Kong Residents Dashing for the Exit (1)(抜粋)

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