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米中「新冷戦」の最前線で衝突リスクも-南シナ海で両国の行動活発化

  • 緊張が高まれば誤算が意図せぬ結果を招く可能性もある
  • 厳しさ増す新冷戦に一段と巻き込まれつつあると東南アジアは認識

貿易から新型コロナウイルス感染症(COVID19)、香港に至る全てにおいて対立している米国と中国が、物理的に衝突するリスクが高まっている。そして南シナ海ほど両国の軍艦や戦闘機が互いに頻繁に接近する場所は他にどこにもない。

  軍事紛争は米中双方に恐らく壊滅的打撃を与えるため、どちらも実際に望んでいる兆しはない。だが緊張が高まれば誤算が意図せぬ結果を招くことはあり得る。

  中国とフィリピン、ベトナム、マレーシアが領有権を主張する海域を含む南シナ海で、米海軍は1-4月に「航行の自由作戦」(FONOPS) を4回実施した。今年は昨年1年間の8回を上回るペースだ。同じ時期、新型コロナの最悪期を脱した中国の海軍は海南島の港から艦船を出航させ、 南シナ海で演習を再開した。

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米空母「ロナルド・レーガン」、シンガポールに向かい南太平洋上を航行(2019年)

撮影: Catherine Lai/AFP via Getty Images

  南洋理工大学S・ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のコリン・コー・スウィー・リーン上級研究員は「事前に練られた計画で米中間の軍事衝突が発生する可能性は極めて低いが、両国の軍事活動の頻度と激しさが同じ海域で共に増している」と指摘。「この海域における対立国同士の存在の相互作用が、不注意による、あるいは偶発的な武力行使につながる計算ミスや誤った判断を招く可能性がある。潜在的突発性をはらみ、エスカレートするかもしれず、軽視できないリスクだ」と語った。

  米海軍は最近、マレーシア沖の作戦に2回、軍艦を派遣。マレーシアと中国がいずれも権益を主張するエネルギー鉱区を探査するマレーシア政府が契約した掘削船の近くで複数の中国船舶が航行、けん制しているとされる海域だ。米海軍第7艦隊のビル・マーズ司令官は5月半ば、「同盟国とパートナーの経済権益の合法的な追求を支援」するための行動だとする声明を発表した。

  中国外務省はこの時、中国の調査船は「中国の管轄下にある海域で通常の活動をしていた」とし、状況は「基本的に安定」していると説明。中国の王毅外相は24日、中国と東南アジア諸国との間に不和の種をまこうと「域外の国が力を誇示」していると主張。王外相はこの日、「米国の一部政治勢力は中米関係を人質に取り、『新冷戦』の瀬戸際へと向かわせようとしている」とし、「危険であり、世界の平和を脅かす動きだ」とも述べた。

  マレーシア政府の考え方に詳しい安全保障の専門家によれば、同政府当局者は米国の存在は問題をエスカレートさせているだけだと米国側に懸念を示した。マレーシア外務省の報道官はコメントを控えている。米戦略国際問題研究所(CSIS)で「チャイナ・パワー・プロジェクト」のディレクターを務めるボニー・グレイザー氏は、米国が「シグナルを送っていたのは明らかだ」と話した。

  米空軍は4月29日、南シナ海で作戦を実施するため戦略爆撃機「Bー1Bランサー」をサウスダコタ州から発進させた。往復30時間余りかけての爆撃機派遣だった。ずっと続けてきたグアムでの爆撃機の継続的な配備を終えるとも報じられた米空軍だが、電子メールでの声明で、国外のより広範な地点から爆撃機を発進できるようにするアプローチに「移行」し、「作戦の予測を不可能」にするものだとコメントした。

BAHRAIN-AIRSHOW

米空軍の戦略爆撃機「Bー1Bランサー」

撮影:Getty Images経由のAFP

  グレイザー氏は「艦内で新型コロナの集団感染が起きた米空母セオドア・ルーズベルトがグアムでの任務を外れているという事実を踏まえると、米軍の作戦増強は、米国には準備ができていないと中国側に考えさせたり誤算させたりしないようにするものだ」と分析。その上で、「中国の活動拡大への対応」との見方も示した。

Vietnam Prime Minister Nguyen Xuan Phuc Interview

ベトナムのフック首相

撮影: Maika Elan/Bloomberg

  ベトナムは南シナ海で5月1日から8月16日まで休漁期間を設けるとの中国の発表を「一方的な決定」だとして拒否。ベトナムのフック首相は5月20日、南シナ海の状況は「一段と複雑」になりつつあると国会で述べた。フィリピンのロクシン外相は、領有権を争う海域を管轄するため中国が行政区を新たに設けたことに外交ルートを通じ抗議したことを明らかにした。

  ナレースワン大学ASEAN(東南アジア諸国連合)共同体研究センター(タイ)のポール・チェンバース特別顧問は「厳しさを増す新冷戦に一段と巻き込まれつつあることを東南アジアは認識している。その氷山の一角が南シナ海だ」と語った。

原題:U.S.-China Confrontation Risk Is Highest in the South China Sea(抜粋)

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