, コンテンツにスキップする
Subscriber Only

「共産党が本性を現した」-コロナ危機のさなかに香港統制強めた中国

  • 9月の立法会議員選前後に「再び大規模な抗議が発生する可能性」
  • 昨年11月の区議会選で民主派圧勝-中国は今年、香港人事相次ぎ変更

香港立法会(議会)の郭栄鏗(デニス・クオック)議員が2人の子どもと観光名所のビクトリアピークでハイキングを楽しんでいた時だった。携帯電話で突然、中国国務院の香港マカオ事務弁公室が出した前代未聞の声明について尋ねられた。

  4月中旬に発表されたこの声明は、野党議員として議事進行阻止を試みた郭氏が就任宣誓に違反し、議員資格を剥奪(はくだつ)される可能性があると警告。香港で反政府派を黙らせるためなら、中国は北京から直接手を伸ばすことも辞さないと郭氏は認識した。

中国政府機関、香港立法会の審議進めるよう促す-いら立ち示唆

  ロンドン大学キングスカレッジで法律の学位を取得し、弁護士でもある郭氏(42)は「子どもとの1日が台無しになった」と話す。そして新型コロナウイルスの感染拡大で香港で抗議デモができなかった数カ月間に「根本的な何かが変わった」と思った。「共産党が本性を現した」と郭氏は言う。

HONG KONG-CHINA-POLITICS-UNREST-CRIME

香港立法会の郭栄鏗(デニス・クオック)議員(2019年)

撮影:ゲッティイメージズ経由のPhilip Fong / AFP

  中国は香港への介入をさらに劇的に強化。習近平政権は5月21日、香港での中国と共産党への激しい批判を犯罪と見なす国家安全法案の承認を22日開幕の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で図ると発表した。同法案の詳細は不明だが、2003年に撤回された同様の法案には刑罰に終身刑も含まれ、大規模な抗議行動を招いた。今回の法案が可決されれば、香港ではあらゆることが選挙なしで法制化され得るかもしれない。

中国、香港での国家安全の改善図る-台湾は懸念表明

  英国から中国への1997年の香港返還を定めた84年の中英共同宣言は、「一国二制度」方式での高度の自治を香港に50年間保障。香港の憲法に当たる基本法には国家安全法制定の選択肢が盛り込まれているものの、習主席より前の中国指導者は法の支配で守られているとの香港の評判を損ねることを懸念し、こうした強硬策は回避してきた。

  ポンペオ米国務長官は22日、「香港に対し一方的かつ恣意(しい)的に国家安全法を押し付ける」中国の提案を非難する声明を発表。「米国はこうした破滅的な提案を再考するよう中国に強く促す」と表明した。

Hong Kong Protests Against New China Security Law

街頭のスクリーンには全人代での李克強首相の演説が映されている(5月22日)

撮影:ポール・ヨン/ブルームバーグ

  米戦略国際問題研究所(CSIS)で「チャイナ・パワー・プロジェクト」を担当し、米政府に助言してきたボニー・グレイザー氏は「中国が香港で本気になった」とし、9月に行われる立法会議員選挙の前後に「再び大規模な抗議が発生する可能性がある」と分析する。

香港の活動家、抗議デモ呼び掛け-全人代の国家安全法案に反対

Hong Kong Chief Executive Carrie Lam Holds News Conference

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(中央、5月22日の記者会見で)

撮影:Justin Chin / Bloomberg

  香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は22日夜、香港が「表現の自由、抗議の自由、ジャーナリズムの自由が維持される非常に自由な社会」であり続けると説明し、国際社会を安心させようとした。中国外務省の駐香港特別行政区特派員公署は同日の声明で、香港の国家安全法が標的とするのは国家安全を危うくすると疑われる「ごく少数」の人物だけだと主張した。

国家安全法の早期制定に向けて中国と全面協力-香港行政長官

  中国共産党の第19期中央委員会第4回総会(4中総会)は昨年10月31日、香港を「厳しく」統治するとのコミュニケを発表して閉幕。これが香港介入強化へのシフトを示唆する最初の兆候だった。湖北省武漢で感染拡大が始まり、その後パンデミック(世界的大流行)と宣言された新型コロナウイルス感染症(COVID19)への対応に香港と世界が追われる中で、国務院は今年2月に香港マカオ事務弁公室主任を習主席の元側近、夏宝龍氏に代えた。

  中国政府の香港出先機関トップは1月に交代したばかりだった。中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(香港中連弁)の新たな主任に、習主席が主導した反腐敗運動の実行を担った駱恵寧氏が起用されていた。

中国国務院、香港マカオ事務弁公室のトップ交代-抗議活動が長期化

Media Tour Of The Legislative Council Following Protest Takeover

デモ中に落書きされた立法会の建物(2019年7月3日のメディアツアーで)

撮影:Justin Chin / Bloomberg

Alibaba Group Holding Ltd. Chairman And Billionaire Jack Ma Speaks At The India-China Business Cooperation Conference

国務院香港マカオ事務弁公室の夏宝龍主任

  北京で今月21日夜、全人代閉幕の28日までに香港の国家安全法を承認する計画を香港代表に説明したのが夏主任だ。立法会議員の郭氏は「香港の問題に全く精通しておらず、中国本土で手荒な地方統治をしてきた2人は、香港でも同じことができると考えている」とみており、「恐怖と畏怖、攻撃、批判、直接介入のための新戦略を行使したいのだ」と語る。

「一国二制度」守るふりすら放棄か-北京に同調する香港行政長官

「最後の選挙」となるのか

  香港で新型コロナの流行が収まり始めた4月、夏、駱両氏は審議の進まない立法会に目を向けた。議題を決める内務委員会の運営を止める戦術を用いていた郭氏を巡り国務院の弁公室が声明を発表し、その後、著名な民主派15人が一斉に逮捕された。

香港で民主派15人一斉逮捕、米国の非難に中国は反論

Prominent Pro-Democracy Activists Arrested Over Involvement in Hong Kong Protests Appear At Court

「民主の父」と呼ばれる李柱銘(マーティン・リー)元議員(中央)も逮捕された

撮影:ロイ・リュー/ブルームバーグ

  中国がこうした計画を進めていた間、香港市民は新型コロナのため大規模集会を禁じられていた。米国のトランプ政権が国内の感染急増への対応に連日多くの時間を割き、かつて香港の宗主国だった英国ではジョンソン首相が感染し一時入院した。

  香港の民主派は昨年11月の区議会(地方議会)議員選挙で圧勝し、452議席中85%の議席を獲得。だが今、香港政府に批判的な多くの人は、政府がここ数年繰り返し行ったように立候補不適格としたり当選無効としたりするために新たな法律が使われるのではないかと懸念している。

香港活動家の黄之鋒氏、11月の区議選に出馬できず-当局の判断で

  香港マカオ事務弁公室の声明で最大級の標的となっていることが示された郭氏は、今年「9月の選挙に焦点を絞り、人々に伝える必要がある」と述べる。「香港にとってこれが最後の選挙となるかもしれない。住民は本当に投票に出掛けなければならない」。

原題:How China Pounced on Hong Kong While Covid Overwhelmed the World(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE