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FRB、新型コロナ危機克服後はインフレ高進リスクへの対応が課題も

  • 財務省との緊密な協力関係、中銀としての独立性に懸念生じる恐れ
  • 多額の財政赤字の下、必要とされる利上げを阻まれかねない事態も

新型コロナウイルス感染拡大に対応するため、米連邦準備制度とトランプ大統領指揮下の米財務省は以前には考えられなかったような同盟関係を結んだ。

  断ち切るのが難しいこの緊密な関係は長期的に、連邦準備制度の独立性についてあらためて懸念を生じさせることになりそうだ。

G-20 Finance Ministers and Central Bank Governors Meeting

パウエル議長(左)とムニューシン長官(2019年6月8日)

Photographer: Kim Kyung-Hoon/Pool via Bloomberg

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は今週、政策金利を事実上のゼロ%に据え置く方針を示すとともに、トランプ政権と議会に対し新型コロナ対策で財政面のさらなる対応を呼び掛けた。このような姿勢の結果、公衆衛生上の危機が終息した段階で、パウエル議長率いる連邦準備制度は政治的に困難な立場に置かれる恐れがある。

  危機対応で政府支出は既に急増している。先行き強く懸念されるのは、連邦準備制度の政策が連邦債務のコスト管理の必要性に左右され、景気判断上で本来必要とされるかもしれない利上げ実施が阻まれるような状況だ。

Big Spender

Fed has bought bonds at record pace since pandemic struck

Source: Federal Reserve

  ブッシュ(子)元政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務め、現在は米コロンビア大学経営大学院のグレン・ハバード教授は、「財務長官とFRBは仲良くやっていると報じられている。それは素晴らしいことだが、私にとってもっと関心があるのは制度的な側面であり、それにはやや心配している」と語った。

  この問題はエコノミストの間で、財政悪化で金融政策が制約される「フィスカル・ドミナンス(財政従属)」として知られる。極端な場合、政府が求める資金を全て中央銀行が提供する状況を意味する。過去の事例を見れば、これはインフレ高進、しかも多くの場合、急激な物価上昇を招くことになる。

  もちろん、現在のような景気悪化の局面でそうした懸念はない。エコノミストや投資家の大半は、デフレの方が大きな脅威である状況がしばらく続くと見込んでいる。公的債務の増大も含めて、デフレ的なダメージを最小限にとどめるための連邦準備制度と財務省による取り組みを大方が歓迎している。

  だが、金融市場のベテランには将来を憂える理由がある。JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフグローバルストラテジスト、デービッド・ケリー氏は24日、ブルームバーグラジオに対し、「今の状況を脱した後は、多額の債務を抱えて強い需要に直面することになる」と指摘。「インフレが高進し始めたら、それを制御する連邦準備制度の能力を人々は疑うようになるだろう」と話した。

  また、連邦債務残高は3月時点の17兆ドル(約1820兆円)余りから拡大する見通しであり、金利のわずかな上昇であっても政府財政に大きな負担となりかねない。

Treasury debt rises in battle against virus

  連邦準備制度は緊急融資プログラムで財務省と緊密に協力するほか、事実上のゼロ金利政策や債券購入に乗り出した。これらに加え、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入して、期間が長めの米国債利回りの上昇に歯止めをかけようとするかもしれない。

  2020会計年度(19年10月-20年9月)の財政赤字が過去最大の約3兆7000億ドルと予想される現状にあって、このような政策は財務省にとって借り入れコストを抑制するのに役立っている。

  また、米インフレ率が2%という連邦準備制度の目標を下回って推移していることから、パウエル議長ら当局者は物価圧力の多少の上昇は歓迎するだろう。それでも、慎重さを忘れてよいわけではない。  

  元FRB副議長で、現在は米プリンストン大学教授のアラン・ブラインダー氏は、「かなりの流動性があり、また創出されている。経済が正常に戻り始めるのにつれて連邦準備制度にとっての課題の1つは、流動性を妥当なペースでいかに引き揚げていくかだろう」と指摘した。

原題:Fed Faces Risky, Inflationary Divorce from Treasury Post Covid(抜粋)

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