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ワクチン頼みの東京五輪、専門家からは来年の開催を危惧する声も

更新日時
  • 4月末時点で世界では8つのワクチン候補が臨床試験段階-WHO
  • アスリートの間に不公平性が生まれるため中止すべき-米大学教授

来年7月に延期された東京五輪・パラリンピックの開催を巡り、医療の専門家の間には実現性を危ぶむ声が広がっている。200を超える国と地域が集まるイベントを実施するためには、新型コロナウイルスの感染拡大が国内だけでなく海外でも終息している必要があるためだ。

Olympics Logos as Japan Minister Says Tokyo Games Postponement 'Inconceivable'

お台場の五輪モニュメント(3月11日)

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  世界保健機関(WHO)の重症インフルエンザガイドライン委員を務める慶応大学医学部の菅谷憲夫客員教授はアフリカやブラジル、医療格差の大きい米国などで、来年も新型コロナが流行している可能性があると指摘する。「日本は練習できてアフリカの選手がほとんど練習できないのでは公平でない」とし、来年の開催は「難しいと思う」との認識を示した。

  延期された五輪の開幕は2021年7月23日を予定しているものの、政府も慎重姿勢を崩していない。安倍晋三首相は4月29日の参議院予算委員会で、五輪は「アスリートも観客も安心して参加できる完全な形」での開催を目指しており、新型コロナが「終息していない中においては、完全な形で実施することはできない」と述べた

  「完全な形」での開催に欠かせないのが新型コロナに対するワクチンの開発だ。日本医師会の横倉義武会長は日本外国特派員協会の28日の記者会見で「有効なワクチンが開発されないと、なかなかオリンピックを開催するのは難しいのではないか」との見解を示した。

ワクチン開発は開催の条件でない

  WHOによると、4月末時点で8つのワクチン候補が臨床試験段階にあるほか、94候補について臨床試験の前段階の研究が世界各地で進められている。感染症が専門の昭和大学医学部の二木芳人客員教授は、ワクチンの開発について「年内にも作れると思う」と話す。

  一方、開発より大きな課題は「世界中で打てるようにすること」で、「日本のような裕福な国でなく、アフリカでも東南アジアの貧しい国でも打てるようにするためには3年くらいかかる」と指摘した。新型コロナが季節性を持つウイルスであった場合には1シーズンの流行では終わらず、「とてもオリンピックどころではない」と強調した。

  共同通信の報道によると、橋本聖子五輪相は5月1日の閣議後会見で、「主催者である国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委がワクチン開発を大会開催の条件にした事実はない」と発言。その上で「まずは終息をさせるというのが大前提」だと述べたと伝えた。

  WHO事務局上級顧問を務める英国キングスカレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、世界で感染が沈静化する前の五輪開催は「かなりのチャレンジ」と指摘する。訪れた人に対して積極的にウイルス検査を行い陽性反応が出た人を隔離するという方法が考えられるが、それを実現できる可能性は限られるとみている。

  開催を中止すべきだとの声も上がり始めている。スポーツマネジメントが専門の米シラキュース大学のリック・バートン教授は、同大学発行のニュースレターで「IOCは21年の夏季オリンピックを中止することが賢明」との見解を表明した。

  「パンデミック(世界的大流行)が異なる時間軸で、異なる場所で集中発生することは、アスリートたちにとって不公平な競技の前提条件を作り出す」ことから、「オリンピックの理想に反する」と訴えた。  

  東京五輪・パラリンピック組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは、ブルームバーグの取材に対し、組織委として引き続きIOCやWHOと緊密に連携していくと電子メールで英語でコメント。新型コロナをめぐる状況に関しては、推測を元に議論はできないとした。

(第11段落に組織委のコメントを追加して更新します)
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