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「私だから拒まれた」看護師の悲痛な思い-コロナ恐れる偏見の目

  • 岐阜の女性看護師、保育園で入室断わられる-非感染の証明要求も
  • 文科省は「不適切」とし、防止に努めるよう教育現場に通知
Auckland Marathon
Photographer: Sandra Mu/Getty Images AsiaPac
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Photographer: Sandra Mu/Getty Images AsiaPac

「私だから止められたと思った」-。岐阜県で看護師として働く女性は、保育園に2歳と4歳の子供を送った際、保育士から教室に入ることを拒まれた。新型コロナウイルスの院内感染が広がる中、最前線で働く医療従事者や家族に差別や偏見の目が向けられている。

  看護師が務める岐阜大学医学部附属病院では4月上旬、医師3人の新型コロナ感染が確認された。同大学病院の村上啓雄教授は、20人以上の職員が幼稚園や保育園から子供が感染していないことを証明する書類の提出を求められたと明かす。

  文部科学省は16日、こうした「差別や偏見につながる行為は不適切」だとし、防止に努めるよう教育現場に通知を出した。政府の専門家会議も今週、医療従事者が仕事を休んだり辞めたりすることにつながっているとして懸念を表明した。

Prime Minister Abe News Conference As Japan Expands State Of Emergency

政府の専門家会議

  岐阜大学病院の職員は最終的に、子供たちの登園を許されたが、病院では書類の準備が大きな負担となった。また小学校のPTAを名乗る保護者からは、職員の子供を登校させないよう指導してほしいとの声が寄せられたという。

医療の弱体化

  偏見や差別は、この病院だけにとどまらない問題だ。日本看護協会によると、国内の医療施設では54件の院内感染が発生し、感染者は783人(20日現在)に上っている。院内感染の広がりは、医療従事者への偏見を生む新たな火種となる。

  国内初の死亡例となった患者が一時入院していた相模原中央病院の小倉嘉雄事務長は、「職員全員が感染しているかのようなイメージを持たれた」と話す。感染者を特定しようとする市民からの問い合わせもあったとし、こうした状況は「患者さんにとってもデメリット」になると述べた。

  同病院では、看護師らが育児施設に子供を預けることを断わられ勤務できず、医療現場の人員確保に苦慮した。他の病院から非常勤医師派遣や患者の転院受け入れを拒まれたため、常勤医師への負担が大きくなった。

謝る文化

  諏訪赤十字病院の森光玲雄臨床心理士は、新型コロナウイルスを「過度に恐れる心」が偏見に結びついていると指摘する。ウイルスは目に見えないため、人は医療従事者やその家族を関連づけ「敵」として可視化し、遠ざけることで安心感を得る行動に出るという。

  森光氏は人に謝罪を求める日本特有の風潮も問題視する。社会的影響力の大きい芸能人やスポーツ選手が感染を謝罪するたびに「感染することが悪い」という誤った認識が広がってしまったと分析する。相模原中央病院の小倉氏は、世間では院内感染は「病院の責任」というイメージがあると話す。

  感染リスクを覚悟しながら社会に奉仕する医療従事者が、逆に社会からバッシングされている。森光氏は、人間には「守ろうとすればするほど、攻撃が強まるメカニズム」があるとし、攻撃が「本当に必要なこと」かどうかを人々が自問し、冷静に判断するよう促す。

誰にでもある感染リスク

  岐阜大学病院の村上氏は、新型コロナ感染のリスクは、病院も街中も変わらないと強調する。「正しく恐れて予防できる」とし、マスク着用と手洗いを徹底するとともに、懸命に働く医療関係者や家族を応援してほしいとあらためて呼び掛けた。

  岐阜の看護師は、患者からのねぎらいの言葉に救われながら今も現場に立つ。「コロナに負けないために手洗いうがいするんだ!」と明るく話す元気な子供の姿に支えられ、「前向きに考えよう」と自らを鼓舞している。

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