コンテンツにスキップする
Subscriber Only

日本経済がデフレ再燃の淵に、原油安・コロナで物価は下落転換も

  • 4月コアCPI、ゼロ%わずかに下回る見通し-ブルームバーグ試算
  • マイナス成長で需給ギャップが悪化、インフレ期待も下振れ

新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が危機に直面する中で、日本は原油価格の急落の影響により、再びデフレの淵に立たされている。ブルームバーグの試算によると、消費者物価の前年比上昇率は4月にも再びマイナスに転落する可能性がある。

  試算では、原油価格(WTI)が最近の1バレル=20ドル台前半、ドル・円相場が1ドル=108円程度で今後も推移すると仮定し、電力会社各社が公表している5月までの電気料金などを反映させた。その結果、2月に前年比0.6%上昇だった消費者物価(生鮮食品を除く、コアCPI)は4月にゼロ%をわずかに下回るマイナスに転じ、5月には同0.2%程度の下落となる見通しだ。

  新型コロナの財やサービスの価格への影響は試算に反映されていない。3月以降の世界的な感染拡大や政府による7日の7都府県を対象とした1カ月の緊急事態宣言発令に伴う需要の冷え込みを踏まえれば、消費者物価に一段の下押し圧力がかかるのは確実。また、原油価格変動の影響は半年程度のタイムラグを経て電気代などに反映されるため、エネルギー価格の下落が本格化するのは年後半以降と見込まれる。

迫るデフレ再燃のリスク

先行きエネルギー価格が物価の押し下げ圧力に

出所:総務省、全国消費者物価指数(CPI)

備考:試算値は原油価格、ドル・円相場、電力料金を基にブルームバーグが算出

  年初に1バレル=60ドル台だった原油価格は、主要産油国間の減産協議の決裂や新型コロナ感染拡大による世界的な需要の減退観測を背景に急落し、3月には約18年ぶりの安値となる19ドル台を付けた。石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は12日、日量970万バレルの減産で最終合意したが、20ドル台前半にとどまっており、今のところ原油価格の大幅てこ入れにはつながっていない。

OPECプラスの減産合意に関する記事はこちらをご覧ください

  アベノミクスの推進によるデフレからの脱却を掲げて2012年12月に発足した安倍晋三政権。16年には原油価格下落の影響でコアCPIのマイナスが続いたが、当時は経済成長率がプラスを維持していた。しかし、今回は昨年10-12月期から今年4-6月期まで3四半期連続のマイナス成長が確実視されている。

  ブルームバーグが17人のエコノミストを対象に今月8日に行った調査によると、4-6月期は前期比年率で2桁のマイナス成長が見込まれている。事業規模108兆円と過去最大の政府の経済対策を踏まえても、その後の景気回復は緩やかなものにとどまるとみられている。

エコノミスト調査に関する記事はこちらをご覧ください

  日本銀行元理事の早川英男氏は3日のインタビューで、新型コロナ感染拡大の影響で、安倍首相がアベノミクスの成果として強調してきた雇用や賃上げも「途絶える可能性がある」と指摘。日銀試算の需給ギャップも「あっという間にマイナスに突っ込んでいく」と予想し、日本経済の「デフレ再燃リスク」が高まっていると警鐘を鳴らした。

  日銀が物価を押し上げる要素として需給ギャップと共に重視するインフレ期待も、3月日銀短観における企業の物価見通しや、個人を対象とした生活意識に関するアンケート調査では、下振れが鮮明になっている。日銀では、日本のインフレ期待は実際の物価動向に影響を受けやすいと分析しており、物価低迷の長期化自体がデフレマインドの再燃につながる恐れがある。

  アベノミクスの第一の矢として日銀が黒田東彦総裁の下で大規模な量的・質的金融緩和を打ち出してから4月で7年が経過。安倍首相はこの間、「デフレではないという状況を作り出した」と胸を張るが、いまだデフレ脱却を宣言するには至っていない。21年9月の自民党総裁の任期が迫る中、デフレ脱却の道筋は一段と険しさを増している。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE