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トヨタが止まる日、綱渡りの部品供給-新型ウイルスに震える日本企業

  • 封鎖続く武漢市の部品工場にトラックで乗りつけ、在庫買う取引先も
  • トヨタ、3月9日の週以降の生産は部品供給網含めて「慎重に精査」

湖北省武漢市にあるサスペンションメーカー、ヨロズの工場。コロナウイルスの影響のため休業中で閑散とした構内に乗り付けられたトラックに従業員が部品を積み込んでいく。行き先は省外にある顧客の自動車メーカーの完成車工場だ。

Geneva Car Show Canceled as Swiss Try to Contain Coronavirus

新型肺炎の感染拡大で開催中止となったジュネーブモーターショー会場でトヨタの展示を撤去する作業員(2月29日)

Photographer: Stefan Wermuth/Bloomberg

  ヨロズの志藤昭彦会長は27日の横浜市の本社でのインタビューで、武漢工場は取引がある自動車メーカーが多く、省外の既に稼働している工場向けになんとか部品を出してくれほしいとの要望があったと話した。そのため現地政府と交渉して許可を得た上でごく少数の物流担当者が出勤し、顧客が手配したトラックに在庫部品を納めたという。

  新型肺炎感染の中心とされ、今も封鎖が続くこの地に乗り込んでまで在庫部品を求める自動車メーカーの存在は、自動車業界のサプライチェーンが置かれている危機的な状況を示している。新型コロナウイルスの感染が収束の兆しを見せない中、日本経済の屋台骨となる自動車産業が、中国以外を含む全世界規模のサプライチェーン(部品供給網)寸断への備えを始めた。

  トヨタ自動車は24日までに中国の全工場の操業を再開したが、生産ペースは大幅に落としている。日本の工場については26日時点で3月2日から始まる週までは通常稼働を予定するが、翌週以降は「サプライチェーンを含め、状況を慎重に精査」しているとした。

  湖北省では日産自動車とホンダの完成車工場が春節(旧正月)休暇入りした1月下旬から稼働を休止した。地元政府の要請を踏まえ両工場とも再開時期を3月11日以降になるとみられるが、休業要請を延長すればそれ以降も工場は止まったままとなる。両社ともに国内工場での一時的な生産停止や減産に乗り出すなどの影響が出始めている。

  経済産業省は日本自動車工業会や日本自動車部品工業会と共同で新型ウイルスの影響に関する対策を検討する協議会を立ち上げた。防疫対策や物流、政府の施策などの情報を共有するほか、影響が長期化した場合には資金繰り対策などの支援策についても検討するという。

  自工会のウェブサイトによると、2017年の自動車製造業の製造品出荷額等は前年比5.1%増の60兆6999億円で全製造業の製造品出荷額等に占める自動車製造業の割合は19%を占めた。

二輪用部品も不足恐れ

  輸出額の約20%、関連産業も含めた雇用は国内の就業人口の8%超を占める。日本経済を支える大黒柱である自動車産業に不足の事態が起きないよう官民挙げた対策に乗り出した。

  自工会が27日に自民党に提出した要望では、中国生産に関して以下のような問題点が提起された。

操業
  • 省ごとの規制が都度変わるため、復旧・対策などの計画が立てにくい
  • 操業停止指示が解除されないことで、在庫の取り出しさえ困難な仕入れ先がある
  • 人の移動に関する製薬で現地会社の従業員が集まらず生産に支障
  • 中国出荷部品の遅延による国内外における生産への影響懸念
物流
  • 中国国内の陸路での輸送状況が不明
  • 物流網の混乱で一部部品の供給が非常にタイトになっており、部品納入見通しをベースに当面の操業可否を判断している状況
  • 完成部品や金型の移動に必要な物流や通関が停止
  • 空路での輸入で対応しているが便の確保に苦労

  経産省自動車課の河野太志課長は会見で「自動車産業が日本経済に占めるインパクト、ウエートは大きいのでここで何か大きな問題がおきないようにしっかりやっていくのはとても大事なことと理解している」と話した。

  トランスミッションなどを製造するエクセディでは武漢市を震源とする経済活動の停滞が自社の生産に与える影響について、二次や三次の下請けも含めて精査。その結果、東南アジアで生産している二輪用のクラッチ部品が懸念材料となっているという。

代替生産も難しい

  同社の豊原浩常務は28日のインタビューで、低コストが求められる二輪部品は中国から材料を調達している部品が多いとし、現在は在庫で対応しているものの、「3月末ぐらいまでまったく入ってこなかったら心配になる」と話した。

  豊原氏は新型肺炎の感染は中国ではやや落ち着きを取り戻したとみる一方、「この先、日本がどうなるのかとそっちの方が心配」と安倍晋三首相が全国の小中高校への休校を要請するなど社会的な影響が広がりつつある国内の状況に懸念を示す。今後も滞りなく生産を続けられるかは「現時点ではわからないというのが正直な答え」だと話した。

  自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは自動車各社は現在は在庫で対応しているが、中国の車需要も大幅に落ち込んでいるため世界規模の生産停滞にはいたっていないだけとの見方を示す。

  中国のみで生産される部品もあり、状況が改善されなければ在庫がなくなった時点で「車が作れなくなる」と指摘。代替生産にしても大型の鍛造品などは金型はあっても設備を作れないため難しいとし、生産が止まれば自動車メーカーの「業績はアウト」だと述べた。  

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