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新型コロナ感染、検査体制に懸念の声-能力不足で実態つかめず

  • 公的検査機関が受け入れ抑制の可能性、保険適用対象とする方向へ
  • 市民の不安に対処するため人々に検査の機会を与えるべきだ-専門家

新型コロナウイルス感染が世界的に拡大する中、日本が公表した感染者数は氷山の一角にすぎないのではないかとの懸念が強まっている。

  国内で確認された患者数は28日時点で約200人で、これには横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染者は含まれていない。しかし、韓国では感染者数が急速に増加し、2000人を超えた。同国政府が数万人規模の検査を実施しているからだ。

  こうした違いから、専門家や世論からは日本の検査体制に対する懸念の声が上がっている。

Covid-19 Cases Continue To Rise In Japan

渋谷のビルでマスクを着けて立つ男性

  東京都と埼玉県の二つのクリニックに勤務する医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、「クルーズ船であれほど流行しているのに街中で流行しないわけがない。潜在的な患者は多い」と指摘。

  自身のクリニックでは、インフルエンザ検査で陰性でも、発熱や咳(せき)などの症状が5-7日ほど続く患者が、「1月くらいから増えた」という。感染症は一般的に軽度の人が多く、「1人出たら100人単位で軽い人がいるはず」だと話す。 

  政府によれば、現在、国内で可能な検査件数は1日に約3800件。加藤勝信厚生労働相は26日の衆院予算委員会で、実際には18-23日の6日間に実施された検査は5700件にとどまっていたことを明らかにした。

  京都大学でウイルス感染症のモデル研究を行っている明里宏文教授は、政府の対応について「基本的には精一杯の対応ではないか」、「検査の手間、リスクとベネフィットを考慮すればやむを得ない」と電子メールでコメントした。

限られる検査件数

  国内で初めて医師を含む院内感染が確認された和歌山県では当初、仁坂吉伸知事の判断で、感染が起きた湯浅町の総合病院で接触歴のある全ての医療従事者と患者に検査を実施したが、現在は、検査機関では「検査できる数が限られるため、その中で実施していくのは難しい部分がある」と和歌山県福祉保健部健康局健康推進課の花光宏樹医療技師が明らかにした。

  同県では、症状に感染の疑いがある人でも「複数の医師が異なる診断をすれば、検査をしない場合がある」という。  

  また、東京都の保健所では1日に計120件の新型コロナウイルス検査能力があるが、それでも基準に当てはまる全員の検査に「対応していないところもあると聞く」と、都内の保健所を統括する東京都福祉保健局がブルームバーグの電話取材で明らかにした。東京都は27日までに27人の感染者を確認した。

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安倍晋三首相

  国民民主党の原口一博・国会対策委員長は、安倍晋三政権は国内感染の拡大について「五輪を控えているので、極小化しようとしている」との見方を示す。民間でのウイルス検査が広がらず、国立感染症研究所や保健所といった公的機関が検査の拡大を阻む「関所」となっているのが現状であり、「日本だけが世界の標準から大幅に遅れているし、ずれている」と政府の対応を批判した。

  加藤厚労相は、公的検査機関が恐らく能力不足を懸念して受け入れを抑制しているのではないかとした上で、民間の検査機関を活用できるよう、保険適用対象にする方向で調整する考えを示している。

設備や人員に制約

  政府の専門家会議は24日、「設備や人員の制約のため、全ての人にPCR検査をすることはできない」とし、急激な感染拡大に備えて限られた資源を「重症化するおそれがある患者の検査に集中させる必要がある」との見解を示した。

  PCR検査では、患者の鼻や喉の粘膜をこすって検体を採取し、ウイルスの遺伝子情報があるかどうか、採取された微量の遺伝子を増幅させて確認する。新型コロナウイルスの感染確認で最も信ぴょう性が高いとされている。

  上医師によると、新型コロナウイルスの検査を求める患者は大勢いるが、保健所に問い合わせても、「基準を満たさない」として断られている状況だ。上医師は、ウイルス検査は難しくはないものの、国立感染症研究所や地方衛生研究所は「大量の検査をさばくノウハウがない」との見方を示す。

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ダイヤモンド・プリンセス号

  また、感染者の受け入れ施設にも課題がある。同専門家会議は、首都圏を中心とした医療機関の多くの感染症病床は、ダイヤモンド・プリンセス号の感染者がすでに利用していると指摘。感染を心配する人々が医療機関に殺到すると混乱が起き、病院などが感染を急速に拡大させる場所になりかねないと警告している。

  元東京大学大学院医学系研究科教授で公衆衛生政策に詳しい英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授は、科学的には患者の特定に優先度があるが、「いまは、市民の不安に対処する必要がある。そのためには人々に検査を受ける機会を与えるべきだ」と電子メールでコメントした。

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