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銀行像占う「リトマス試験紙」に、家計簿アプリとのデータ連携で温度差

  • オープンAPI巡り地銀の大半がフィンテックとの契約締結に至らず
  • 欧州では先行、効果見極めてからの取り組みでは周回遅れに-専門家

銀行が持つ口座データを家計簿アプリなどとどのように連携させるのか。銀行間の取り組みに温度差が生じている。データ活用の基盤を作ることは銀行の新規ビジネスの創出を左右することから、取り組み姿勢は各行の将来像を占う「リトマス試験紙」の役割を果たすとの見方が出ている。

  現行の家計簿アプリでは、利用者が口座暗証番号などを提供し、アプリ運営会社が利用者に代わって銀行システムにアクセスするためセキュリティー上の問題が指摘されていた。このため、金融庁は銀行がシステムへの接続仕様を公開(オープンAPI)し、安全にデータ連携ができるよう5月末までにフィンテック企業と契約を結ぶことを求めている。

Money Forward App. As Fintech Revolution Leaves Struggling Japanese Banks Behind

マネーフォワードの家計簿アプリ

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  しかし、金融庁の調査によるとオープンAPIの導入を表明した銀行130行のうち、昨年9月末時点でメガバンクやネット銀行などの7行が5業者以上と契約する一方、地方銀行など半数以上に当たる73行は1業者とも契約していない。

  システムコストについて一定の負担を求めたい銀行側と、ビジネス構築途上にあり銀行システム利用の手数料を抑えたい外部事業者側で折り合いがついていないのが大きな理由だ。

  アドバイザリー会社セレントの柳川英一郎シニアアナリストは、オープンAPIがデータ開放の議論にとどまっており、「消費者の金融行動から得られる情報をどうお金に変えるかのデザインができていない」ためだと指摘する。

  データ連携による情報の蓄積や分析は新たなビジネスモデル創出にもつながる。SBI証券によると上場地銀79行のうち、2019年3月期に本業が赤字だったのは40行と約半数。危機感を持ち先進的な取り組みを模索するのか、変化を避けて従来業務に専念するのか。取り組み動向は各行の将来像を可視化すると柳川氏は述べた。

連携効果なければ負担にも

  オープンAPIは欧州で先行して始まった。15年に競争の公平性確保を狙い「決済サービス指令」が採択され、フィンテック企業との接続「オープンバンキング」が義務付けられた。外部事業者に不正取引がない限り、銀行は接続を求める企業を拒むことはできない。一方、日本のオープンAPIは努力義務にとどまり、個別企業間の契約に委ねられている。

  家計簿アプリを提供するマネーツリーの宮上大造・最高営業責任者は、フィンテック側に負担を強いるのは新規参入の阻害要因にもなり、オープンバンキングの理念に沿わないと主張。「フィンテックは銀行の競争相手ではなく、競争に勝つために協業する側」と説明を重ね、昨年9月末時点で23行だった契約締結先を80行に拡大することを目指している。

  フィンテック企業の経営が厳しいのも現状だ。家計簿アプリを手掛けるマネーフォワードは17年の上場以来、連結売上高は毎年5割増だが、先行投資負担から純損益は赤字が続く。

  神田潤一執行役員は「今はコストが先行的にかかる投資フェーズ」とした上で、顧客属性の分析は資産運用や学資ローン提案など営業戦略に結び付けられるとして各行に将来の事業につながると提案している。スマホによる銀行口座からの入出金は、過疎化が進み支店の維持が難しい地銀でのニーズが高いと述べた。 

  一方、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士は、情報流出懸念などリスク管理の面からも銀行は慎重になると指摘する。情報流出の責任を負わないと契約に明記したとしても、「法的根拠とは別に、顧客は銀行に責任を求める」ことが想定されるためだ。

  全国銀行協会の高島誠会長(三井住友銀行頭取)は、銀行が連携による効用が大きいと判断すれば少額の手数料でかまわないとの判断もあるが、「ベネフィットが見えないケースでは一定程度の手数料がなければ、システムの初期投資費用どころか保守費用すら賄えないこともあり得る」と語る。

  多くの課題を抱えたまま、契約締結期限は4カ月後に迫った。野村総合研究所の大澤英季コンサルタントは、「オープンAPIは基本的にすべての銀行が参加してつながることで、効果が最大限発揮される」と指摘。「効果を見極めてからの取り組みでは周回遅れになってしまう」と警鐘を鳴らす。

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