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Photographer: Mario Tama/Getty Images North America
cojp

米中共存への道筋はなお不透明、貿易合意署名も戦端は開かれたばかり

  • テクノロジーや人権、中国の海洋進出などで多方面で角突き合わせる
  • 今後の交渉に先送りの国有企業の問題も中国側の譲歩困難-専門家

中国の習近平国家主席は、15日にホワイトハウスで行われた米中の第1段階貿易合意の署名式で読み上げられた書簡で、「相互の信頼と協力を強める」ための措置を講じるようトランプ大統領に呼び掛けた。

  しかし、これはたやすいことではない。貿易合意を除けば、テクノロジーや人権、南シナ海をはじめとする中国の海洋進出や台湾との関係などあらゆる問題で両国は角を突き合わせているからだ。ポンペオ国務長官は今週、米ハイテク企業の幹部らに対し、米国は「あなた方の創造力に富む技術力と精神の全てを欲している中国の挑戦に直面している」と語った。

  米中関係が再び険悪化すれば中国と習主席に多大な影響を及ぼす可能性がある。短期的には、両国関係の再度の緊張は既に変調を来している中国経済を悪化させる恐れがあるほか、中国経済の成長に不可欠な技術を獲得する計画は投資規制により阻まれかねない。習主席にとっては、対米関係をうまく保てないと見なされれば、2022年の中国共産党大会での3期目への支持が万全ではなくなる可能性がある。

  北京の調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者トレイ・マッカーバー氏は、米中関係は「中国にとって飛び抜けて重要な2国間関係であり、習主席は当初から自分が統括者だと明言していた」とし、「うまくできなければ国の指導者にふさわしくないとの批判を浴びるため、習主席には圧力がかかっている」と指摘した。

  トランプ氏が「米国第一」主義を掲げて選挙戦を展開し、17年に大統領に就任した数日前、習主席は世界経済フォーラム(WEF)での演説で「開放」と「経済自由化」を訴え、自らを自由貿易の擁護者と位置付けた。習主席はその後、50年までに中国を世界のリーダーにする行程表を示し、中国が「世界の舞台の中心に近づいている」と述べた。

  だが、トランプ大統領は中国のこうした計画の阻止を目指した。対中関税引き上げは中国の輸出主導型経済モデルを崩し、世界のサプライチェーンのシフトは加速した。大統領のこうした動きはまた、華為技術(ファーウェイ)など、米企業に重要部品をなお頼っている中国のテクノロジー企業のブラックリスト掲載にも道を開いた。

  習主席にとって第1段階合意は貿易戦争でこれ以上打撃を被るのを避ける助けになる。ただ習主席は他の中国高官らと同様、貿易合意に楽観的な見解を示したものの、合意文書の内容は両国経済の大きな隔たりを浮き彫りにした。農業、エネルギー分野の購入公約など合意の範囲は限定的であり、政府補助金や産業政策、国有企業などのより難しい問題は先送りされた。
 
  中国人民大学崇陽金融研究院の王鵬・副研究員は国有企業について、「中国の政治経済統治の有機的構成要素」であるため、この問題に関する譲歩は難しいだろうと指摘した。
  
  言い換えれば、中国の国有企業は習主席と共産党の権力維持の重要な手段ということだ。中国政府が経済成長と雇用の維持を図る上で、経済の一定分野を外国との競争に開放すれば、不安定化を招きかねない。そして習主席は権力を脅かすような脅威を過去のどの同国指導者よりも徹底的に制圧しようとしてきた。

  コンサルティング会社APCOワールドワイドの中国担当会長、ジェームズ・マクレガー氏は、「この貿易合意が緊張緩和につながるなら良いことだ」とした上で、「しかしこの合意により、2つの両立し得ない発展モデルが共存し協力する方法を見つける軌道に乗れるかどうかは時を経なければ分からないだろう」と指摘した。
  
原題:Xi’s Wider Fight With U.S. Only Just Beginning After Trade Deal(抜粋)

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