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ソレイマニ司令官殺害でトランプ大統領の中東戦略は支離滅裂に

更新日時
  • イラン政府に対して抗議活動を続けていた国民も司令官殺害で団結
  • 「たった1つの決定によって、17年間の米国の努力の成果が台無し」

トランプ米大統領と補佐官らは週末を通じ、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害は将来の攻撃を防ぎ中東の安全を高めるのに役立つと主張し続けた。

  しかし実際には、米国の中東戦略はトランプ大統領の公約とは逆の方向に進んでいると見受けられる。米国の中東派兵は拡大しイランは対決姿勢を強め、域内の米同盟国の結束は決して強固とは言えない。

  さらに、5日にはイラク議会が米国のドローン攻撃は主権の侵害だとして米軍の撤退を求めた。トランプ大統領はイラクに米空軍基地を建設した費用の「払い戻し」を要求。一方でイランは2015年の核合意の一環だったウラン濃縮活動の制限を順守しないと表明した。

Iraqi parliament decides to expel US troops

イラク議会

  攻撃の経済的なコストも膨らんでいる。原油価格は1バレル=70ドルを超え、世界各地で株価が下落、金は6年ぶりの高値へと上昇した。

  ディフェンス・プライオリティーズのシニアフェローで米軍のイラク撤退を支持するダニエル・デービス退役陸軍中佐は、米国の行動が「既に不安定な状況をはるかに危険なものにしたことは間違いない」と語った。 「過去40年のイランを見てきたなら、同国がその種の圧力に決して屈しないことが分かる。結果は正反対だ」と述べた。

  ソレイマニ司令官殺害は、政府に対する抗議活動を続けていたイラン国民を団結させた様子だ。極めて大勢の人々が同司令官を悼んで街頭に繰り出した。

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ソレイマニ司令官を悼む群衆(1月6日テヘラン)

  ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのファワズ・ゲルゲス教授(国際関係)は「トランプ政権は、イランの策略にはまるという大きな誤算を犯した」とし、司令官殺害は 「イラクのほとんどの政治勢力を反米国で団結させ、イランのイラクでの立場を良くした」と分析した。

  過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いにも影響が出た。米主導の有志連合はイラクのISに対する作戦を中止し、最近攻撃を受けた基地の防御に集中する方針を明らかにした。

  トランプ大統領はまた、米議会への対応も迫られる。民主党議員らはソレイマニ司令官が米国に対する「差し迫った脅威」だったとの政権の主張に疑義を呈し、大統領が暗殺後の対応について戦略を持っているのかと問い掛ける。

  ペロシ下院議長(民主、カリフォルニア州)は、イランに関する軍事行動についてトランプ大統領の権限を制限する決議案を週内に採決する方針を議員らに伝えた。

  近い将来に米軍がイラクから撤退する可能性は低いものの、5日の同国議会採決はトランプ氏と米国の中東戦略に打撃だ。国際平和カーネギー基金のシニアフェロー、アーロン・デービッドミラー氏はトランプ氏の行動について、「長期的な思考が全くないこのような単一の戦術行動が米国にこれほど多くの戦略的悪影響の恐れをもたらしたことは滅多にない。たった1つの決定によって、17年間にわたる米国の努力の成果を台無しにした」と評した。  

原題:Soleimani Killing Leaves Trump’s Middle East Strategy in Tatters(抜粋)
Soleimani Killing Leaves Trump’s Mideast Strategy in Tatters (1)

(4段落目と最終3段落を追加します.)
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