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「金太郎あめ集団」から脱却へ-創業100年で初の女性役員が描く多様性

  • コマツの取締役に就任した浦野氏、「女性の活躍は競争力の源泉」
  • 女性幹部育成へ30代中心に定期研修、ステップアップ可能な体制に

「男性管理職を見てなりたい姿ではないと思うなら、自ら管理職になってリーダーシップを発揮してほしい。そうしないといつまでたっても世の中は変わらない」。コマツで初の女性取締役となった浦野邦子常務は若手女性社員にそう呼び掛ける。

  コマツは、建設機械市場で米キャタピラーに次ぐ世界2位のシェアを持ち、2021年に創業100年を迎える。人事や生産、物流などの部門でキャリアを積み、全体のうち12%にとどまる女性社員のロールモデルとなった浦野常務(63)は、後に続く女性リーダー層の育成に注力するが、道のりは遠い。

Komatsu Senior Executive Officer Kuniko Urano Interview

コマツ・浦野常務

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  コマツの女性管理職比率は7.2%。21年までに10%へ引き上げる計画だが、3割弱という国際水準を大きく下回る。日本全体では12%で、男女格差が残る国内の状況を反映していると同時に、同社の業種や顧客が機械、建設・鉱業と女性がなじみづらく労働者の数自体が少ないことが背景にある。

  浦野氏が入社したのは1979年。当時は一般企業に入社した女性は高学歴でもコピー取りやお茶くみなどの仕事をすることが多かった。浦野氏は人事部に配属され教育関連の仕事に携わったが、他部門の同期の女性は単純な事務作業に追われていた。

緩やかな進捗

コマツの女性管理職比率の推移 

出所:コマツ

注:20年、21年の数字は会社計画 

  欧州輸出事業や生産、物流企画、広報と多岐にわたる分野を経験。一つの試練に直面したのは2000年前後に大阪工場で勤務していた時だった。コマツは創業以来初の赤字に転落、構造改革を断行していたため、大阪工場も閉鎖の危機にさらされた。在庫管理の見直しや、船積み費の削減など、同工場の改革を主導、現場の社員と共にできることは何でもした。

  女性であることでつらい経験をしたことはあまりなかったと振り返る。良いアイデアが出されれば、性別に関係なく採用される企業文化があるという。課せられた仕事を一生懸命やっていくことで、やりがいや成長感も味わえた。11年に女性初の執行役員に、18年6月に取締役に就任した。

国際潮流から遅れ

  「配属先や上司にも恵まれた」と話す一方、「自分よりも優秀な女性はたくさんいたにもかかわらず、能力が生かされずに会社を去った人も山のようにいる」とも明かす。今でも子育て中のため孤立したり、男性優位の考えが残る営業などの職場で苦労したりしている女性が多くいるという。

  浦野常務は、トップの認識でもあるとした上で、「女性の頑張りが会社にとって競争力の源泉になる」と述べ、女性の活躍は会社全体で推進していくと強調した。

  女性の活躍は世界共通の課題であり、欧米では一部で女性の役員登用を義務化するなど男女格差是正への取り組みが活発化している。日本でも安倍晋三政権が13年に成長戦略の中核として女性の活躍を推進する方針を打ち出したが、成果は乏しく、国際潮流から周回遅れとなっている。世界経済フォーラムが17日に発表した男女平等指数では日本は153カ国中121位に後退、過去最低の順位となった。

Komatsu Senior Executive Officer Kuniko Urano Interview

インタビューに答える浦野氏

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  コマツでは、女性幹部を育成するため、30代を中心に定期的に研修を行い、長期的な視点に立ってキャリアについて議論する一方、子育てと仕事の両立に悩む社員に助言する場を設けている。また、定期的な配置転換や研修、責任のある仕事の割り当てなど、女性の能力に応じて適切な仕事を与えることでステップアップできるような体制をとっている。

  浦野氏は女性管理職を増やしていくことについて「上昇のカーブは遅々としているかもしれないが、どこかで飽和したり、下げたりするということはない」と述べ、継続して取り組んでいくことを明言した。

  また、今後の課題の一つは、男女問わず、多様で柔軟な働き方が必要な従業員が重要な職務を担うことができるようになることだ。コマツでは男性であってもフルタイムで会社勤めをする配偶者を持つ社員が執行役員以上の役職に就任した例はない。

「道は開ける」

  画一化された考えや価値観に偏りがちな男性だけの「金太郎あめ集団」は戦後の経済成長に大きく貢献したが、時代の変化とともに多様性に富んだ組織に変えていく必要がある。

  ゴールドマン・サックス証券の副会長で、1999年に初めて女性の活躍による経済活性化を指摘した「ウーマノミクス」の提唱者であるキャシー・松井氏は16日、都内で講演し、ダイバーシティー経営について「意思決定の過程で、変わった考えやバックグラウンドを持った人たちの意見が織り込まれると、よりイノベーションや新しいアイデアを創造することにつながる」と述べた。

  浦野氏は、男性に比べて女性は自信が持てず管理職への登用を断ることも多いが、悩まずに挑戦すべきだと女性社員にアドバイスしている。「明確な意思と覚悟があれば道は開ける」。

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