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今年度補正予算、第2次安倍政権下で最大規模も-埋没する財政懸念

更新日時
  • 与党幹部らは10兆円以上の大型補正予算が必要と主張
  • 財政規模拡大は世論の支持得るための政治的な判断-野村証
安倍晋三首相

安倍晋三首相

Photographer: KAZUHIRO NOGI/AFP
安倍晋三首相
Photographer: KAZUHIRO NOGI/AFP

政府が経済対策に合わせて編成する2019年度補正予算は、与党が積極的な財政支出による景気刺激を求めていることを背景に、12年末発足の第2次安倍政権下で最大規模となる可能性がある。世界最大の公的債務残高を抱える日本の財政規律を懸念する声は、政治家の要求にかき消された格好だ。

  安倍晋三首相は8日の閣議で、経済対策の策定と補正予算の編成を関係閣僚に指示。予備費を含めた今年度予算、同補正予算に来年度予算を組み合わせた15カ月予算の考え方で策定する。

  自民、公明両党の幹部は20日、10兆円以上の大型補正予算を目指す考えで一致した。過去の10兆円を上回る補正予算は、世界的な金融危機や東日本大震災後などの危機後の対応として編成された。今回は台風災害からの復旧・復興に加えて、海外経済のリスクや消費増税、東京五輪後の景気下振れへの備えを主な狙いとしている。

  野村証券の美和卓チーフエコノミストは、「消費増税や台風などの災害を踏まえると、世論のサポートを得るために財政出動を大規模化させた方が好ましいという政治的な判断が働いている」とみる。ただ、政府が景気認識を「緩やかに回復」に維持する中、「経済対策を金融危機直後並みに持っていく点に矛盾がある」と述べた。

10兆円を超える補正予算、過去4回

金融危機後と東日本大震災後に編成

  政府は11月の月例経済報告で、「景気は輸出を中心に弱さが長引いているものの、緩やかに回復している」との判断を据え置いた。7-9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は4四半期連続で前期比プラスを維持。多くのエコノミストは消費増税や台風被害の影響で10-12月期のマイナス成長を予想するが、来年通年ではプラス成長への回帰を見込んでいる。

  SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、景気下振れリスクに備えて対策を打つことは、「後手後手になるよりはいいが、今の局面でそこまでの景気の落ちこみは確認されていない」と指摘。「景気が想定より落ち込まなかった場合に債務が膨らみ、いたずらに景気の振幅を作ることになる」とし、増税に伴う需要平準化策と同様に「政府の狙い通りいくのか分からない」とみる。

  国際通貨化基金(IMF)は25日、日本経済に関する審査(対日4条協議)終了後の声明で、「国内需要の緩やかな成長は外的環境の悪化によって損なわれつつあり、下振れリスクが増大してきている」とし、今年の日本の成長率予想を0.8%に引き下げた。その上で、10月の消費増税による財政引き締めで景気が腰折れしないよう、20年に消費増税対策を延長するなどの財政政策を短期的に実施するよう提言した。

  金融機関の収益悪化など低金利政策の長期化による副作用に直面する日本銀行も財政政策に期待を寄せる。黒田東彦総裁は5日の名古屋市での会見で、「仮に政府が必要に応じて財政政策をさらに活用するということになれば、財政・金融のポリシーミックスという形で、より一層、財政政策あるいは金融政策が単独で行われる場合よりも効果が高まる」との認識を示した。

欧州との違い

  同じくマイナス金利の副作用に苦慮する欧州諸国でも、金融と財政のポリシーミックスに期待する声が上がる。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は22日の講演で、金融政策の負担軽減を図るため、公共投資を増やすべきだと主張。困難な貿易環境や域内成長鈍化を乗り越えるには財政政策が鍵だと述べた。

  欧州経済を担当する日本総研の高野蒼太研究員は、「低金利が続いてこれ以上の金融緩和余地がかなり限られている点では日本とユーロ圏は非常に似ているが、財政政策はかなり違いが多い」と指摘する。欧州債務危機の経験から、債務残高対GDP比60%以下など厳しく財政ルールがあるため、「ラガルドECB総裁が財政政策の出番と言っているが、ルール的にそんなに簡単ではない」と言う。

  日本の債務残高対GDP比は236%とギリシャの184%を上回り、188カ国中で最高。金融緩和策で国債買い入れを続ける日銀の国債保有比率は5割に迫り、残存10年以下の国債利回りはマイナスで推移。この結果、政府は13年度以降の5年間だけで、消費増税2%分に当たる5兆円超の国債発行コストを抑制している。

日本の債務残高対GDP比、世界最大

188カ国中最大の236%、ギリシャの184%超え

出所:IMF "World Economic Outlook Database 

市場の信認

  麻生太郎財務相は、現在の低金利環境は「日本の国債、円というものに対するマーケットの信認が大前提」とし、それに甘えていると「ある日突然マーケットの信頼を失って金利が暴騰する」と警鐘を鳴らす。政府が経済再生・活性化策を進める際には、財政規律を維持し、市場の信認を得続けることが重要と指摘する。

  消費税10%への段階的引き上げの3党合意を決めた12年の旧民主党政権で副総理を務めた岡田克也衆院議員は、「財政健全化は気にせず、歳出も思い切ってやればいい、消費増税は10年必要ない、歳入を増やす必要はないとの雰囲気が政界で出ている」とし、「国家が衰退していく道を歩み始めてしまっているのではないか」との懸念を示した。

(第8段落以降を追加して更新しました)
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