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スター・ウォーズを超えろ、日本のアニメが握る動画配信戦争の行く末

  • ネットフリックスは独自アニメでディズニー迎撃、ジブリは争奪戦に
  • 米ITやメディア大手続々参入、各陣営がキラーコンテンツ囲い込み

スター・ウォーズを超えろ-。「機動戦士ガンダム」や「超時空要塞マクロス」など新しいアニメ映画が次々と公開された1980年代、日本の若いクリエイターらはハリウッドの大作を超えるクオリティーの作品を目指していたという。

  それから30年、動画配信の普及で視聴者が全世界に拡大する中で両者の対決が現実のものになろうとしている。

  米ネットフリックスは多くのユーザーを取り込めるコンテンツとして日本のアニメに注目。制作会社と提携してオリジナル作品を継続的に供給できる体制を整えている。スター・ウォーズの権利を持つ米ウォルト・ディズニーが今月に動画配信への参入を計画するなど競争が激化する中、世界最大手のネットフリックスはアニメも有力な武器として迎え撃つ構えだ。

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ネットフリックスが独占配信するオリジナルアニメ「ULTRAMAN」

Source: Netflix

  同社でアニメと日本関連の作品を担当するジョン・ダーデリアン氏は都内での9月のインタビューで、「これまで世界のコンテンツ流通において米国が非常に強い地位を占めていたが、それが今変化していることは疑いようがない」と米国外の作品の重要性が増しているとの認識を示した。

  中でも日本は漫画やゲームを含むコンテンツ創出力で米国に次ぐ位置にあると思っているとし、今後も長期的スタンスで日本への投資を続けると言う。

  具体的にはSFから恋愛物、スポーツ、コメディーなど幅広いジャンルをそろえ、コアなアニメファン向けでなく視聴者の裾野を広げていきたいとした。その一環として著名な実写作品のアニメ化に注力するという。

  他社作品の権利取得も進める。動画配信に対応していなかったスタジオジブリと対話を持ち、日本でのライセンス権がまもなく得られるとの見方を示したが、発表できる内容はないとも話した。

成長鈍化

  4月に配信を始めた「ULTRAMAN」では神山健治・荒牧伸志両監督を起用した。両氏は「攻殻機動隊」やガンダムシリーズの制作にも携わり、「東のエデン」や「アップルシード」など数々の作品で監督を務めた著名クリエイターだ。  

  荒牧氏は、消費者は「テレビなんてもう見なくなっている」と動画配信向けの制作に抵抗はなかったと述べた。作品が「世界中にいくことでみる人も増えるし僕らのチャンスも増えていく」と期待を示した。

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4月に配信を始めたULTRAMANのワンシーン

Source: Netflix

  一方、世界で約1億5800人の有料会員に向けて配信事業を展開するネットフリックスは曲がり角に差し掛かっている。値上げなどで4ー6月期の米会員数が純減となり米国外でも成長が鈍化したことから株価は下落傾向が続いた。今年150億ドル(約1兆6200億円)を見込む作品への投資も重しとなっている。このほど発表した7-9月期決算では海外契約者の純増幅が市場の予想をやや上回り、株価は一時急反発した。

  そうした中、ディズニーは今月12日に米国で新しい動画配信サービス「ディズニー+」を開始、月額料金はネットフリックスの主力プランより数ドル安い月額6.99ドル(約760円)を予定している。米アップルも今月からさらに安い4.99ドル(日本では600円)でのサービスを始めた。

一歩リード

  動画配信サービスの人気はコンテンツの質と量が左右する。ディズニーはスター・ウォーズ以外でも多くの人気作品を抱えるマーベルなどを傘下に持ち、これらを他社に提供しないことで顧客を囲い込める。

  ハリウッド系でAT&T傘下のワーナーメディアも「HBO MAX」で来春参入予定。同社は10月、HBOがジブリのほぼ全作品の米国での配信権を獲得したと発表した。ジブリの広報担当者はネットフリックスなど他の動画配信業者について現時点で特にコメントはないと述べた。

日本のアニメの海外市場規模の推移

為替の追い風もあって近年は急激に成長

出典:ヒューマンメディア「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース」

  コンテンツ市場調査を行うヒューマンメディアの長谷川雅弘氏によると、ネットフリックスは多言語・多国籍の番組と巨額の資金を投じた「ハリウッド的」な大作の両方をそろえてユーザーの支持を集めたと指摘。コンテンツ獲得のための巨額投資が収益を圧迫する中、競争に勝ち抜くには今後も投資を維持できるかが課題と述べた。

  日本アニメの海外売り上げは2017年で1兆円弱と過去5年で4倍以上に拡大している。長谷川氏によるとその制作費は多くて10億円程度とハリウッドの大作に比べれば格安で、独自の制作体制を築いたネットフリックスは「一足先に動いている」と評価する。

  ただ、日本のアニメ業界も労働力不足の影響を受けており、安価で良質なコンテンツを作り続けられるかは不透明だ。

アベンジャーズ

  神山、荒牧両氏とも学生時代にスター・ウォーズを見て感銘を受け、「あれをアニメでやるんだ」との思いで仕事に取り組んだという。神山氏はハリウッド映画を「仮想敵というか頂点」として目標にしてきたと話す。

  ただ、神山氏は欧米向けに手を加えない日本アニメには限界があり、今のままで「アベンジャーズを抜くことはない」と断言する。配信でハリウッド作品と並べられたときに注目してもらうには「やはりハリウッドと同じだけの予算がいる」という。

  ネットフリックスは制作に介入せず、作りたいものを作れる点を評価する一方、制作費は通常より「若干いい」程度の印象という。アニメ業界は昔から「安い値段で情熱だけでなんとか持ち上げてきた」が、ハリウッドと互角に戦うにはやる気だけでは難しく「10倍ぐらい予算を出してもらえればなんとかなる」かもしれないと述べた。

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