コンテンツにスキップする
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

マイナス金利深掘りなら日銀は長期債を売却すべきだ-須田元審議委員

  • 短期債購入と同額の長期債を売却すればマネタリーベース変わらない
  • 現在の緩和の枠組みと別枠で長期債を売れば市場の理解得られやすい
The Bank of Japan (BOJ) headquarters stand in Tokyo, Japan, on Tuesday, July 16, 2019. The BOJ would offer support for a government spending package likely to be unveiled in October when a national sales tax is increased, according to a former central bank official.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

元日本銀行審議委員の須田美矢子氏は、日銀がマイナス金利の深掘りに踏み切るのであれば、短期国債の買い入れと同額の長期国債を売却し、長期金利の過度の低下を防ぐべきだと言う。

  須田氏は16日のインタビューで、短期買いと長期売りのセットを提案する理由について、短期政策金利を引き下げると、長期金利が一段と低下する可能性があり、生命保険会社や年金の運用に悪影響が及ぶためだと指摘。日銀が長期金利の低下を止める自信がないのであれば、副作用が大きいマイナス金利の深掘りは「絶対すべきではない」と語った。

Miyako Suda

須田美矢子氏

  日銀は過度の金利低下を抑制するため国債買い入れを減らしている。8月から9月にかけて長期金利や超長期金利が大きく下げた際は、黒田東彦総裁が懸念を示した。須田氏は、国債買い入れを減らしたり口先介入をしても、生保や年金の国債需要の強さや物価上昇期待の低さから、長期金利低下を防ぐ「効果は一時的だ」と指摘する。 

  日銀の統計によると、短期国債の市中発行残高は90兆円規模に上る。そのうち日銀が買い入れている額は1割弱で、市場の短期金利の低下を促すだけの買い余地はある。一方、長期国債に関して日銀は発行残高の4割に相当する500兆円近くを保有しており、技術的には売却することが可能だ。

国債買い入れを減額しても金利の低下抑制は限定的

  

  市場では、日銀が長期金利の低下を防ぐ上で、公約のマネタリーベース(通貨供給量)拡大が足かせになるとの見方も強いが、短期国債購入と同額の長期国債売却を行えば供給量は変わらないため、公約違反にはならないと言う。金融引き締めとの疑念を招くため長期債売却は難しいとの指摘に対しては、現在の金融緩和の枠組みと別枠にすれば実施は可能で、円高を警戒する市場関係者の理解も得られやすいと語る。

  日銀は2010年10月、日銀券ルールと呼ばれる国債買い入れを制限する規定を回避するため、資産買い入れ等基金を設立して国債を買い入れる枠組みを作った経緯がある。須田氏は、日銀が前回とは反対に国債を売るための枠組みを作ることもできると指摘する。

苦境に陥る生保

  金融庁の試算によると、20年金利が0.051%に低下すると、超長期債投資が中心の生保41社のソルベンシー比率(ESR)は100%に低下する。生保の支払い余力が経済条件でどう変化するかを示すESRが、「100%を割ると自己資本不足でリスクを取れなくなる」、と須田氏は指摘する。新発20年物国債の利回りは9月初めに0.015%にまで低下していた。

  日銀がマイナス金利政策を導入した16年以降、生保の運用難は一段と深刻化しており、一部の貯蓄型商品の販売停止を余儀なくされている。須田氏は、公的な社会保障制度に不安がある中、民間が国民の安全安心を補完しているだけに、長期金利の低下が続けば既存の商品の販売停止などを通じ「国民のマインド悪化につながりかねない」と懸念する。

  須田氏は日銀審議委員を01年から11年まで2期10年務め、現在はキヤノングローバル戦略研究所の特別顧問。14年からは明治安田生命の社外取締役も務める。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE