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トラック1台で創業し富豪に、中国展開に意欲ー丸和運輸社長

更新日時
  • 9月に付けた直近高値で計算すると純資産は1000億円を超える
  • 約2000台の車両は22年3月までに1万台超に、海外人材も積極採用

約半世紀前、トラック1台で物流業界に飛び込んだ和佐見勝氏(74)は、「桃太郎便」で知られる丸和運輸機関を率い、電子商取引(EC)市場の急成長を追い風に、世界の富豪の仲間入りを果たした。今後も合併・買収(M&A)を積極的に検討するほか、中国を中心とした海外展開に意欲を示す。

  ブルームバーグデータによれば、和佐見社長による丸和運輸株の保有割合は、自身の資産管理会社の保有分も含めると株式全体の約6割を占める。9月25日に付けた直近高値の2810円で計算すると純資産は1000億円を超える。

Maruwa Unyu Kikan Co. Founder Masaru Wasami Interview

和佐見勝氏

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  和佐見氏はインタビューで、物流業界で加速するM&Aについて、「積極的に検討したい」と語った。丸和運輸は昨年3月にコープデリ生活協同組合連合会の商品個配事業を譲り受け、子会社で運営している。

  海外展開も推進し、本格的に中国での低温食品物流事業展開を始める計画だ。26年前に初めて訪中し参入の機会を探っていたが、同国での経済発展が進み、高価格でも安全性の高いチルド製品を好む国民が増えてきたのが決め手。生鮮食品や医薬品の生産・輸送・消費を低温で保つ「コールドチェーン」は、中国が国家として推進している。

  11月には北京市を訪れ、大手スーパーマーケット運営会社の代表と面会予定で、手を組むことになれば、物流全体の管理を請け負い、拠点を増やしていきたい考えだ。中国では、100%出資の形で子会社を設立するか、現地企業と業務提携または資本提携をするかなど多様な展開形態を模索している。今後は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国も含め展開していきたいと述べた。

人材を囲い込み

  丸和運輸が物流業界で存在感を増したのは、ヤマトホールディングスが17年にアマゾンの即日配送から撤退した後、デリバリープロバイダーの1社となったことがきっかけだった。現在、即日配送のデリバリープロバイダーの中で、丸和運輸のシェアは首位。今後は需要が堅調な関東圏に質の高いサービスを提供することに注力する方針だ。配送能力を急激に拡大するのではなく、常時アマゾン側と配達個数の調整を行うことでサービスの品質を保つ戦略だ。

  人手不足が深刻化する物流業界で5年先を見据えたとき、「人と車を集められる会社が業界のトップを走って行くだろう」と和佐見氏は考える。同社が委託契約しているEC配達を担う個人事業主に業界最高水準である720万円がベースラインの売り上げ保証やインセンティブを付与することで人材を囲い込む戦略だ。

  現在、同社には約2000台の車両が登録されているが、22年3月までに1万台以上に増やす計画。アジア地域の人材も積極的に採用し、将来は社員の2割がグローバル人材となるよう採用改革も行う。

EC関連事業が売り上げけん引へ

  和佐見氏は埼玉県の農家に生まれ、結核を患った母を助けようと12歳の時から青果市場で働き始めた。19歳で千葉県に青果店を構えた後、上京。24歳の時、知り合いの連帯保証人となったことで多額の負債を抱え店を失ってしまう。失意の中、始めたのが運送業だった。

Ex-Truck Driver Masaru Wasami Becomes a Billionaire With Some Help From Amazon

インタビューに答える和佐見社長(10月2日・都内)

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  あるとき、工場に缶製品を届けた際、みぞれが降っていたので一つ一つ缶を拭きながら納品した。その姿が評価され、追加注文を受けた。「荷物を大事にすれば仕事につながる。仕事の報酬は仕事と思い無我夢中で働いた」。それが和佐見氏の原点だ。

  現在は、顧客の物流全体を請け負い管理するサードパーティー・ロジスティクス(3PL)を手掛け、顧客の販売戦略構築や物流の効率化に一役買っている。青果店を経営していたころの知識を生かした食品物流や取り扱いの難しい医薬品物流に強く、生協やマツモトキヨシホールディングス(HD)などから委託を受けている。

  2019年3月期の売上高で見ると食品物流が約43%、ECを含む常温物流が34%、医薬品物流が23%を占めたが、5月に発表した中期経営計画によると、22年3月期にはそれぞれの割合が約35%、48%、17%とEC関連事業が売り上げをけん引する業態に変化する見通しだ。

  東海東京調査センターの金井健司アナリストは、中長期的にはECサイトの成長に伴いデリバリープロバイダーの需要は増えていくとみる。一方でアジア展開にはリスクもある。高付加価値物流の需要があるとは限らないからだ。金井氏は、中国や東南アジアでの低温食品物流市場では日本企業や現地企業との競争が激化しており、採算を保てるか懐疑的にみていると話した。

(最終段落にアナリストの見方を追加します)
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