コンテンツにスキップする

トランプ大統領が直面する弾劾調査と今後の展開-QuickTake

From
トランプ大統領

トランプ大統領

Photographer: Sarah Silbiger/Bloomberg
トランプ大統領
Photographer: Sarah Silbiger/Bloomberg

トランプ米政権発足から最初の2年間、大統領弾劾の話は熱心な少数派に限られていた。弾劾の訴追権限は下院に専属するが、野党民主党が今年1月から下院で多数派となると、弾劾論議はもっと声高になった。2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を巡るモラー特別検察官の捜査は拍子抜けの結論となったが、論議が途絶えることはなかった。

  この間、大統領の職を解く試みを正当化するような「重大な罪または軽罪」をトランプ氏が犯したと示唆する用意は、民主党指導部にはなかった。だが、20年米大統領選の民主党候補指名獲得を目指すバイデン前副大統領が不正行為を働いたとする根拠のない主張を巡り、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に「調査」するよう不当に助けを求めたとの内部告発を受けて事態は一変した。

1.弾劾とは?

  米国憲法は、大統領と副大統領および「全ての文官」について、立法府が職を解く方法を定めている。全ての文官には判事や閣僚が含まれると解釈されている。

2.弾劾の根拠は?

Political Campaigns Ahead of Ukraine Election

ウクライナのゼレンスキー大統領

  米国憲法は「反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪」を挙げている。議会が年月をかけて定義してきたように、「重大な罪または軽罪」とは大統領としての越権ないし権力乱用、不当な目的または利得のための職務の乱用などを含む。

  下院は過去に60回余りの弾劾手続きを開始し、連邦判事15人、上院議員1人、閣僚1人、第17代のジョンソン(1868年)とクリントン(1998年)の2人の大統領が弾劾訴追となった。ジョンソン大統領は陸軍長官を解任したことで下院で訴追されたが、上院採決で1票の差で罷免を逃れた。

  クリントン大統領の場合、「司法妨害」が有罪50、「大陪審への偽証」が有罪45でいずれも3分の2に満たず無罪となった。1974年には、ウォーターゲート事件の隠蔽(いんぺい)を巡って下院での弾劾訴追と上院での有罪の見通しが明らかになった段階で、ニクソン大統領が事前に辞任した。

3.これからどうなる?

  ペロシ下院議長は、既にトランプ大統領を調べている司法、情報特別、外交、監視・政府改革、歳入、金融の計6つの委員会に対し、正式な弾劾手続きの傘下でそれぞれの調査を進めるよう指示した。ウクライナ問題は情報特別委が扱っている。最終的にどの委員会が1つないし2つ以上の訴因を列挙した弾劾状原案を下院本会議に提出することになるかは不明だ。それは通常なら司法委だが、ペロシ議長ら民主党指導部は手続きを監督する特別委員会を指名するか、委員会採決なしに直接、本会議採決に動く可能性もある。

4.どの程度かかるか?

  その判断は困難で、比較的新しい前例もほとんど直接比較の対象とはならない。ニクソン氏の場合、大統領に辞任を促した「司法妨害」「権力乱用」「議会侮辱」の3つの訴因について下院司法委が弾劾勧告を決めるまでに2カ月半を要した。ただ、それに先立つ1年間、上院ウォーターゲート特別委員会がニクソン氏とウォーターゲート事件を調査し、下準備をしていた。クリントン氏のケースでは、下院での2カ月にわたる審理を経て4つの訴因について採決が行われた。その後、上院での5週間の弾劾裁判の結果、無罪となった。だが、弾劾の訴追そのものはスター独立検察官が率いてきた以前の調査を基にしたものだ。

House Speaker Pelosi Announces Formal Trump Impeachment Investigation

弾劾調査開始を発表したペロシ下院議長(9月24日)

5.下院での展望は?

  下院本会議が単純過半数で可決した訴因について上院に決議が送られる。下院435議席中、民主党は235議席だ。弾劾調査を支持している民主党下院議員は少なくとも218人と報じられており、共和党の支持がゼロでも単純過半数を1つ上回る。ただし、実際に提案があった場合、何人が1つないし2つ以上の特定の訴因に賛成票を投じるかは不明だ。

6.上院の役割は?

  米国政治における異例な光景の1つとなるが、上院議員100人は弾劾裁判の陪審役となり、下院議員の一部は「弾劾マネジャー」として検察官役を務め、連邦最高裁首席判事が裁判長として指揮する。証人喚問や証拠提出が行われ、検察官役の下院議員である弾劾マネジャーと大統領の弁護人が最初と最終の弁論を行う。

  出席議員の3分の2以上が有罪との判断を示せば、大統領は罷免される。トランプ大統領の場合、与党共和党が上院で過半数を握ることを考慮すれば特に、ハードルは高いだろう。

7.上院共和党は弾劾裁判を拒むことはできるか?

  下院での訴因可決の場合、米国憲法では特に上院に弾劾裁判を行うよう指示する定めはないが、現行の上院規則は裁判が義務的であることが読み取れる。それによれば、下院が弾劾マネジャーを指名したとの通知があれば、上院事務総長は下院マネジャーを受け入れて裁判を始める用意があると下院側に「直ちに通知しなければならない」。マコネル共和党上院院内総務は裁判を阻止するため規則を変更しようとするかもしれないが、そうなれば大問題となるのは確実だろう。

8.トランプ大統領弾劾の場合どうなるか?

  ペンス副大統領が自動的に大統領に昇格する。ペンス氏が副大統領を指名し、その就任には上下両院の過半数による承認が必要となる。これは極めて仮定的要素が強いシナリオだが、その場合ペンス氏は20年と24年の2回、大統領選に出馬することができる。また、トランプ氏がいったん職を解かれたとしても、上院が別途行う採決(単純過半数)で不適格とされない限り、法律上は再出馬が可能だ。

関連記事

原題:All About Impeachment, Including What Happens Next: QuickTake(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE