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Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

【コラム】私がレポ市場を心配する理由-コチャラコタ

The Marriner S. Eccles Federal Reserve building stands in Washington, D.C.
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

米短期金融市場が最近混乱した際、短期金利には一時、連邦準備制度の制御が及ばなくなったが、これは米金融当局の長期的な目標達成能力を弱めるものではない。とはいえ、金融システムの中で何かがおかしいことを示すシグナルではある。

  事態を理解するため、大銀行が1行しかない単純モデルを想定しよう。この銀行は、資産を金融当局に預け超過準備について利息を稼ぐこともできるし、リスクを取って証券に投資したり融資することでより高いリターンを得ることもできる。しかし、「リスク調整後」リターンは全ての資産について同じで、これは金融当局が超過準備の付利(IOER)という形で事実上決定する。

  モデルを少し現実に近づけてみると、銀行には超過準備の少ない「タイトな」銀行と、その逆に潤沢な準備資金を持つ「フラッシュな」銀行の2種類がある。後者はフェデラルファンド(FF)金利市場で準備資金をタイトな銀行に貸し付けることができる。これが金融政策の焦点だ。この貸し付けが自由に起こる限り、全ての資産のリスク調整後リターンはやはり同じだ。

  最近はしかし、この自由な貸し付けの環境が崩れた。法人税の支払い期日に大規模な米国債入札の決済が重なったおかげで、準備資金が突然枯渇。この結果、同じであるべき金利が市場で乖離(かいり)した。参加者が米国債などの証券を担保に資金を貸し借りするレポ市場で金利が5%を超え、FF金利実効レートは当局が誘導目標とする2-2.25%のレンジを上回った。

  より重大な問題は、2008年の金融危機以降の規制改革が銀行に一定の流動資産保有や総資産に対する株主資本の比率であるレバレッジレシオの最低要件などを義務付けた結果、フラッシュな銀行の貸し付けとタイトな銀行の借り入れが制限されたことだ。

  このような制限は金融市場の環境と複雑に絡み合う。例えば、欧州の銀行はレバレッジレシオを各四半期の最終日に報告しなければならず、その内容を良く見せるために期日に向けてレポ市場での活動を縮小させる。この結果、超過準備が潤沢であるようにみえるにもかかわらず、銀行の調達コストが政策金利を上回る場合がある。

  これは必ずしも米金融政策にとって問題でない。当局はさまざまな市場に資金を注入し、金利を適正水準に戻すことができるからだ。ニューヨーク連銀がレポ市場でやっているのはまさにこれで、いわゆる常設レポファシリティーを設定して修正措置を恒久化することも可能だ。これによって、当局は必要に応じて毎日でも資金を供給しFF金利を適正なレンジにとどめることができる。

  より分かりにくいのは、短期金融市場が将来の衝撃にどう反応するかだ。過去2週間の経験が示すように、シンプルな1銀行モデルはもはや機能しない。準備資金はフラッシュな銀行に囲い込まれ、実際は1兆3000億ドルある準備資金が13億ドルしかないかのように市場は動く。規制の設計が、金融システムの最も基本的な機能の一部を混乱させた。監督当局はその影響について、安心しているべきではない。

(ナラヤナ・コチャラコタ氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストで、2009-15年に米ミネアポリス連銀総裁を務めた。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Why I’m Worried About the Repo Market: Narayana Kocherlakota(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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