トランプ氏、ウクライナ電話会談の記録公表が裏目に-弾劾調査に弾み
Justin Sink-
会談記録は弾劾調査の根拠になるのは明白と一部民主党議員は指摘
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日本時間26日午後10時に米国家情報長官代行が下院公聴会に出席
トランプ米大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領との7月の電話会談の記録を公表し、下院民主党主導の弾劾調査開始のきっかけになった疑惑を晴らそうとした。その疑惑とは、軍事支援と引き換えにバイデン前米副大統領の調査を行うようゼレンスキー氏に圧力をかけたというものだ。
トランプ大統領にとって、以前うまくいったこの手法も今回は裏目に出た。5ページにわたる会談記録に明確な見返りの提示こそなかったものの、外交政策に商取引のようなアプローチで臨むやり方や、外国に政治的支援を求めるのをいとわない姿勢があからさまになったため、トランプ大統領の批判者には追い風となり、大統領の意に反して弾劾調査に弾みをつける結果となった。

NYで会談したトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領(9月25日)
トランプ大統領はどんな窮地からもうまく言い逃れることができると信じてやまない。しかし今回は、会談記録にあった自身の弁舌が民主党に明白な攻撃材料を与えることになった。
ウクライナは米国の支援に大きく依存しているが、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、民主党大統領候補の指名争いでトップを走っていたバイデン氏の評判を落とすのを助けるよう繰り返し要請していた。
記録によれば、トランプ大統領は「バイデン氏の息子については多くのうわさがある。バイデン氏が訴追を阻止したというもので、それを知りたがっている人は多い。そこで米司法長官とあなたが協力できるなら何であれ素晴らしい」と発言した。
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対ウクライナ軍事支援とバイデン氏調査の要請をはっきりと関連付けてはいないが、トランプ大統領の発言は弾劾に値する権限乱用であり、弾劾調査の根拠になるのは明白だと一部の民主党議員は指摘。一方、トランプ大統領はこうした批判は「冗談」であり、「素晴らしい電話会談」に対する「空騒ぎ」にすぎないとはねつけた。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は25日夜、ゼレンスキー氏が大統領に当選して間もない4月にもトランプ大統領は電話会談を行い、汚職調査に関連して自分の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニ氏と話すようゼレンスキー氏に促していたと報じた。
「マフィアの話法」
下院ではマグワイア国家情報長官代行が米東部時間26日午前9時(日本時間同午後10時)に情報特別委員会の公聴会に出席し、トランプ大統領の外国首脳との会談での発言を問題視した米情報機関当局者の内部告発について証言する。
これまでトランプ大統領の擁護に回っていた共和党は、大統領とどのくらいの距離を置くべきか決断を迫られることになる。
トランプ大統領は25日の記者会見で、この匿名の内部告発者の情報について、二次情報に基づいたものだと述べ、信頼性に疑念を示した。ただ、「いわゆる内部告発者の透明性は全面的に支持する」と付け加えた。
ホワイトハウスはこの内部告発者が民主党議員と議会で直接話すのを認める方針を示唆した。ホワイトハウスはまた、マグワイア氏の公聴会に先立ち、内部告発書を議員に非公開の形で送付した。
このほかトランプ大統領は、ゼレンスキー氏との別の電話会談や、ペンス副大統領とゼレンスキー氏が関わった電話会談などを詳述したメモを公表する用意があると語った。
トランプ大統領が調査に協力する姿勢を示したことや、メディアは「腐敗」しており民主党と共謀していると述べたことから判断すると、大統領は会談記録公表で望んだ効果を得られなかったと見受けられる。
下院情報特別委のシフ委員長は公表された会談記録について、想定していたよりもずっとひどい内容で「ショックを受けた」と述べるとともに、「マフィアのボスがどのように話すか」を想起させるものだと論評した。
原題:Trump’s Attempt to Talk His Way Out of Impeachment Backfires(抜粋)