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Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

多角化批判かわすソニー、事業の相乗効果強調-「理想工場」生む技術

  • 「理想工場建設」は創業者が宣言、テクノロジーは事業貫く力と社長
  • 物言う株主への「裏の回答」、事業分離拒否の意思とSBI証
Pedestrians walk past an entrance to the Sony Corp. office in Tokyo, Japan, on Wednesday, Sept. 18, 2019. Sony plans to hold on to its semiconductor and financial services operations, rebuffing a series of proposals from American activist investor Dan Loeb.
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

半導体や映画、金融といったさまざまな事業を抱えるソニー。経営陣は、創業者から受け継ぐ技術力が生み出す事業間の相乗効果を強調し始めた。アナリストは、多様な事業を抱えることが収益や株価の下押し要因となるコングロマリット・ディスカウントに陥っているとの批判をかわすためとみている。

  「テクノロジーは多様な事業を貫き、力を与えるもの」。吉田憲一郎社長兼最高経営責任者(CEO)は18日に行ったテクノロジー・デーでの会見で述べた。同様の規模で、技術中心に紹介するイベントを行うのは初めて。

Sony Corp. CEO Kenichiro Yoshida Speaks at the Company's Technology Day

テクノロジー・デーで登壇したソニー・吉田憲一郎社長(18日)

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ソニーは前日、アクティビスト(物言う株主)のダニエル・ローブ氏が率いる米ヘッジファンド、サード・ポイントの半導体部門分離要求に対し、拒否する姿勢を表明。株主向けの書簡でも、「今やエンタテイメント事業はテクノロジーと直接結びついている」と強調していた。

  SBI証券の和泉美治シニアアナリストは電話取材で、ソニーが改めてテクノロジーを重視する姿勢を示したことを「サードポイントに対する裏の回答」と分析。人工知能(AI)技術がエンターテインメントや金融にも波及するものだと示すことで「One Sony(ワンソニー)としての取り組みで成果を出していくという意思表示だった」と指摘した。

  吉田社長は会見で、3次元コンピューターグラフィックスを瞬時に再現するレイトレーシング技術は映画に加え、次世代プレイステーション(PS)でも活用可能だと述べた。外科用内視鏡や手術用顕微鏡にも画像センサーや映像の撮影、伝送の技術が応用されていると説明した。

ソニーの研究開発費の推移

20年3月期は5000億円の予想

出所:ブルームバーグ

  今期(2020年3月期)の研究開発費は5000億円となり、リーマン・ショックが起きた09年3月期の水準を上回る見込み。今期の営業利益見通しのうち、映像・音響機器や半導体から上げるのは3割にとどまり、ゲームや金融、音楽、映画も重要な収益源となる。

  創業者の一人である井深大氏は1946年1月、前身の「東京通信工業」の設立趣意書で「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を目指した。それから70年あまりが経過し、吉田社長は今回の技術紹介イベントの冒頭、ソニーの存在意義について「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」と強調した。

  野村証券の岡崎優アナリストは電話取材で、インターネットやスマートフォンの普及により、「テクノロジーとエンタテインメントの2つの業界が融合に向かっている」と指摘。「2つを併せ持つソニーがユニークな事業ポートフォリオをどう生かしていくのか」に注目すると話した。

Sony Computer Science Laboratories Inc. Researcher Ken Endo

CSL研究員の遠藤謙氏

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  テクノロジー・デーでは、1988年に設立されたソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)も紹介された。東京とパリに35人のリサーチャーを抱える少数精鋭で、研究テーマは「世のため、人のため」になるものという以外に制約はない。研究員の遠藤謙氏はロボット義足の研究を続けており、現在は四肢欠損で生まれた「五体不満足」の著者、乙武洋匡さんがロボット義足で二足歩行することを支援している。

  自身もAI研究の第一人者である北野宏明所長はブルームバーグの取材に、「世の中がこうなるに違いないとか、こういうものを作りたいとか、どの技術もソニーのビジネスのために作ったわけではない」と話す。ただ結果的に製品や生産技術に応用された例は多く、犬型ロボット「アイボ」やPSの基本ソフト(OS)、工場の歩留まり管理などにCSL発の技術が生かされているという。

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