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チキンカツカレーで740円-壱番屋がカレーのふるさとに挑戦

更新日時
  • 中国の初出店で陣頭指揮した成功体験が生かせる―葛原社長
  • 三井物産と思惑合致、インドの経済成長追い風に10年で30店舗目指す

壱番屋はカレーチェーンCoCo壱番屋をカレーの本場インドに事業展開することを決めた。インドには、13億人がソウルフードとしてカレーを食べるというマーケット規模の魅力がある。同国での事業環境が整ってきたのが後押しした。​

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カレーハウスCoCo壱番屋・港区虎ノ門三丁目店

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  インドのコンサルティング会社テクノパックのリポートによると、2017年以降の5年間でインドの外食産業は年率10%のペースで成長する。チェーンストアなどがけん引する見通しだという。壱番屋は8年前から定期的にインド事情を探ってきた。出店しやすい商業施設が増えたのを確認し、出店に向けて動き出した。

  いちよし経済研究所の鮫島誠一郎アナリストによると、インドでは全人口約13億人のうち、2億人程度が日本人と同じ生活水準で暮らしている。インドの潜在的マーケットは日本並みの規模があるという。

  壱番屋は1000店舗を超えた国内よりも、海外市場を開拓し収益貢献度を拡大させる方針だ。海外拠点は8月に182店舗と10年5月の37店舗から着実に伸びた。2019年2月期の売上高502億円のうち海外関連は61億円と12.2%を占める。今期は69億円と13.5%に拡大する計画だ。

進出のきっかけは、インド出身の商社マン

  壱番屋はインド進出に際して、三井物産と手を組むと7月に発表した。消費者ビジネスの強化に注力する三井物産と、インド進出の機会を探っていた壱番屋の思惑が一致した。​三井物産のアジアを拠点とする現地子会社と合弁会社を設立し、インドで直営とフランチャイズで出店する。三井物産グループが6割、壱番屋が4割を出資し、デリーに事務所を構える。

  「ココイチカレーは和食だけれどスパイスがなじみのある味で、日本橋の店舗に週に2度は通った」。インド三井物産金属資源部のマネージャー、ロビン・スリバスタバ氏は日本に2年間研修生として滞在し、帰国後の研修レポートでココイチをインドに誘致してはどうかと書いた。スリバスタバ氏は消費者向け事業の担当ではなかったが、壱番屋との合弁会社設立を決めた経営判断の資料となった。

Ichibanya Co. President Mamoru Kuzuhara

葛原守・代表取締役社長

Source: Ichibanya Co.

  1号店は2020年の早い時期にデリーに直営店として出店。5年以内にデリーを中心に直営店を10店舗展開してノウハウを培い準備が整った後、その後5年でフランチャイズも含めさらに20店舗を開店する計画だ。

  壱番屋の葛原守・代表取締役社長はインドでの事業展開のノウハウのある三井物産と手を組むことについて「リスクが少なく、さまざまな調整ができる」と話す。

  18年12月にロンドン1号店をオープンした時「満席で店の外には列ができたが、そのうちの6、7割は現地のお客さんだった」とし、デリーでもインド人の顧客で大盛況となることを一番期待していると語る。

  葛原氏は海外展開で骨を折った経験がある。2004年に進出した中国で、上海1号店に向けて事業責任者として陣頭指揮した。当初は日本のカレーライスを知っている人はほとんどおらず浸透するまでに時間がかかった。

  現在は中国事業は8月時点で49店舗。海外店舗のうち3割近くを占めるまでの収益化に成功した。葛原氏はインドへの事業展開にも生かせるとみている。

インドで生かす日本の味

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CoCo壱番屋 「ベジタリアンカレー + やさい」

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  スリバスタバ氏は、インド人は食には保守的な部分もあり、ピザなど外国の飲食チェーンのメニューも7割が現地化されているという。同氏は「カレーならインド料理に近く試しやすいのではないか」と語る。葛原氏も同じスパイスを使った料理を主食とするインドは中国に比べ「出店しやすい」と考えている。

  インドで勝負となると気になるのはどのようにして現地で受け入れられるようメニューを合わせるかだ。ベジタリアンには海外店舗用に開発した動物性油脂の入っていないカレーソースを輸出して対応する。

  チキンカツなどのトッピング材料や日本米は現地で調達する。辛さは国内店舗と同じように10辛まで対応するが、葛原氏によると「案外2辛くらいがちょうど良いというインドの方が多い」ようだ。

インド戦略、客単価で1000円前後

  定番のチキンカツカレー価格の目安について、三井物産では490ルピー(約740円)とする案が出ている。葛原氏は「おいしいと思えるものを提供しようと思うと、ドリンクなどサイドオーダーを含めた客単価で1000円前後になってしまう」と話す。ターゲットは、新しいもの好きの30歳代。所得がある程度増え、高めの価格帯を受け入れてくれるとみる。

  15年前に上海1号店を出店した際の客単価は30元程度と当時のアルバイト時給相場の5倍。日本でいうと5000円くらいの感覚だったが、今は経済成長とともに中学生がお小遣いで食べられるくらいの単価になった。メニューの値上げよりも所得が増え、ココイチカレーは中国で一般大衆化した。ただインドでも値ごろ感が出るかは未知数だ。

  実績が出るのはこれからだ。インド出店が収益に反映されるのは21年2月期となる。いちよし経済研の鮫島氏は壱番屋の海外事業について、中国がやっと形になり全体で利益が出始めている段階だと指摘する。インドで成功している日本の外食チェーンがない中で、自社出店で1、2店舗出店した後にフランチャイズ展開する段階でどのように現地の顧客に合わせていけるかがポイントだと話す。

  24日の東京株式市場で壱番屋の株価は一時3.4%高の5220円に上がり、8月14日に付けた年初来高値5250円に近づいた。証券ジャパンの大谷正之調査情報部長は電話取材で、7月に発表したインド展開への期待先行で買われたところに、同国事業の採算性が見えて買い安心感が出てきたとの見方を示した。一方で、インド人の生活に日本のカレーがどれだけ浸透するかはまだ不透明だとも話した。

(株価と市場コメントを最後の段落に加えてアップデートします)
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