Photographer: Mario Tama/Getty Images
世界経済は金融危機以来の低成長へ、貿易戦争で景気冷える-OECD
William Horobin-
「世界の見通しはますます脆弱(ぜいじゃく)かつ不透明になった」
-
財政および構造的政策による支援が緩和的金融政策の効果高める
激化する貿易紛争が世界経済を冷やし、成長は金融危機さなかの時期以来の低水準に向かっている。経済協力開発機構(OECD)が見通しを示した。各国政府が長期的ダメージを防ぐために十分な措置を取っていないとも主張した。
OECDは4カ月前に示した経済予測をほぼ全面的に下方修正した。保護主義的政策が信頼感と投資に及ぼす悪影響が大きくなっていることと、金融市場でのリスクが膨らみ続けていることを指摘し、今年の世界成長率をわずか2.9%と予想した。
Mass Downgrades
The OECD lowered its growth forecasts for most major economies
Source: Organisation for Economic Cooperation and Development
OECDは報告で「世界の見通しはますます脆弱(ぜいじゃく)かつ不透明になった」とし、 「貿易対立のエスカレートが信頼感と投資にますます大きな悪影響を及ぼしている」と見解を示した。
米中貿易戦争から最も打撃を受けたのは製造業で、サービス業はこれまでのところ異例の底堅さを見せている。OECDは製造業の「弱さが長引けば」、労働市場と家計所得、支出に影響が出ると警告した。
貿易戦争に加え、OECDは中国の急激な減速と英国の欧州連合(EU)離脱をリスク要因に挙げ、合意なき離脱は英国をリセッション(景気後退)入りさせる恐れがあるほか、欧州の成長も大きく下押しするだろうと分析した。
2019年予想 | 2020年予想 | |
世界 | 2.9%(3.2%) | 3%(3.4%) |
ユーロ圏 | 1.1%(1.2%) | 1%(1.4%) |
日本 | 1%(0.7%) | 0.6%(0.6%) |
英国 | 1%(1.2%) | 0.9%(1%) |
米国 | 2.4%(2.8%) | 2%(2.3%) |
( )内は前回予測
「貿易をゆがめる関税と補助金の増加を止めるための当事者全ての努力が急務だ」とOECDは論じた。「先進国は極めて緩和的な金融政策を維持すべきだが、財政および構造的政策による支援が同時に強化されれば、緩和的金融政策の効果を高めることができる」と指摘した。
特にユーロ圏について、金融政策のみに頼り続けるよりも財政および構造的政策を併用することが効果的だと強調した。
原題:Global Economy Seen Slipping Toward Weakest Growth in a Decade(抜粋)