8月の全国消費者物価0.5%上昇、伸び縮小-エネルギーが下落転換
占部絵美
更新日時
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エネルギーは0.3%低下-17年1月以来のマイナス
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物価の基調は依然加速感に乏しい状況-バークレイズ証の前田氏
総務省が20日発表した8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.5%上昇と前月の伸びを下回った。市場予想と同じだった。エネルギーが2017年1月以来の下落に転じたことなどが全体を押し下げた。
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エコノミストの見方
バークレイズ証券の前田和馬エコノミスト:
- 8月の下落要因は2つ。エネルギーは電気代、ガス代中心に過去の原油価格下落が反映された。宿泊料の部分はお盆休みの日並びの一時的な影響
- 家庭用耐久財は8月もプラス幅拡大、消費増税前の駆け込み需要の影響がプラスに寄与している
- 物価の基調は依然として加速感に乏しい状況。緩やかな所得上昇は押し上げ要因だが、0%半ばから1%が今の安定的な水準
- 10月以降の物価は、消費増税や教育無償化でノイズが多く評価しづらくなる。便乗値上げや実質値下げの動きがどのように左右してくるのかが今後の焦点
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミスト:
- コアCPIは鈍化が続いているが、日本銀行が重視しているといわれるコアコアCPIは0.6%上昇と変わらない。日銀としてはこちらの指標を強調することで物価のモメンタムは上向きと言いたいと思う
- 先行きに関しては、消費増税後に企業は消費者への影響を考えて増税以上の値上げはしにくい思う。さらに幼児教育無償化などの影響で物価に下方圧力がかかる
- 日銀がよりどころとするモメンタムは上向きというところの論拠が年度後半くらいから崩れていくので、次回の展望リポートでも物価の見通しが引き下げられると思う。実際の物価や景気のデータに押される形で追加金融緩和を検討せざるを得ない状況に追い込まれている
詳細
- コアCPIの伸び率低下は電気代と都市ガス代、食料の上昇幅縮小、宿泊代の下落が寄与-総務省担当者
- 交通・通信の下落は、大手携帯会社による6月の値下げが影響-総務省
- 総合CPIの伸び率低下は生鮮食品の価格低下が影響。生鮮野菜はトマト、キュウリ、キャベツが去年に比べて安い-総務省
- 中東情勢悪化による物価への影響は、様子を見ないと今後どうなるのか判断できない-総務省
- 価格の動きを見て駆け込みかどうかの判断は難しい。家庭用耐久財の上昇は、新製品の価格が物価に反映されている-総務省
背景
- エネルギーや生鮮食品、通信料の値下がりにより、物価の基調は引き続き弱い
- 日本銀行は19日の金融政策決定会合後に公表した声明文で、物価の勢いが「損なわれる恐れについて、より注意が必要な情勢になりつつある」と警戒感を表明。次回会合で経済・物価動向を改めて点検する方針を示した
- 日銀の片岡剛士審議委員は4日の講演で、経済・物価情勢について、下振れリスクが増す中で「物価目標と実際の物価上昇率に相応の距離がある」との認識を示した上で、「先制的に政策対応することが重要」と語った
(詳細を追加し、エコノミストコメントを差し替えて更新しました)
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