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対日貿易合意も良いが米のTPP参加の方が大きな利益もたらす-社説

トランプ米大統領は、今回に限って言えば、米国民に利益となる貿易協定に署名しようとしているのかもしれない。これまでのやり方から脱却すれば、もっとずっと良い内容の貿易協定を取りまとめることができる。

  トランプ大統領は16日、米国と日本が暫定的な貿易合意をまとめたと発表した。日本は、米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)の参加国と同水準までの関税率引き下げを米国産牛肉や豚肉などに認めると報じられている。米国はその見返りに、一部の日本産農産物と工業製品に対する関税率を引き下げる。日米はデジタル貿易に関する新ルールにも署名する。

  トランプ大統領がこの合意を取りまとめたい理由を理解するのは容易だ。既に中国との貿易戦争で打撃を受けた米国の農家は、TPP参加国であるカナダやオーストラリアなどの国々に対し、日本での市場シェアを続々と失ってきた。そして大統領は、米国の中部地域で有権者に胸を張って示すことができるような何か具体的な勝利を必要としている。大統領は早くも、日本が合意の一環として「何億ドル」もの米国産トウモロコシを購入する予定だと豪語した。いつものようにそれほど膨大ではないのが実態だが。

  安倍晋三首相には、日本車への自動車関税賦課というトランプ大統領の脅しを食い止めることと、為替政策について拘束力のある約束を一切回避するのが主な目標となってきた。その達成には、融和的な態度が最善の方策だと安倍首相が信じているのは明らかであり、トランプ大統領は実際に、当面は関税措置を手控える意向を表明している。だが、もっと拘束力のある約束を安倍首相が勝ち取ることができた兆候はまだない。

  トランプ大統領の場合、世界貿易を促進するよりも混乱させてきたことを踏まえれば、今回のように範囲の狭い合意であっても歓迎に値する。それは米国にとってアジアで最も重要な同盟国との間の緊張を和らげ、駐留米軍の将来や中国の台頭といった他の一連の問題での協力強化につながる。世界的な景気減速の局面にあって、日米間の貿易拡大にもなる。デジタル貿易に関するルールは、経済にとって重要度が高まる分野での基準設定にも役立つ。

  しかし、この暫定合意では不十分なことは心に留める価値がある。世界貿易機関(WTO)の規則に違反する可能性があり、米国市場への参入拡大のないまま米農家と競争しなければならなくなる他のTPP参加国の怒りを買うのは確実だろう。最も重要なのは、自動車関税賦課の脅威を取り除かないことによって、計画や投資を妨げる不確実性を残すことだ。一段と広範囲な合意についての交渉の話は、単なるお話にすぎないのはほぼ確かだ。

  これはせっかくの機会が浪費された形だ。経済的に見れば、米国はTPPに参加してメンバーを増やすよう推し進めればもっと大きな利益を得る。そうすれば、知的財産やデジタル貿易、環境、労働者の権利についての高い基準を強化するとともに、重要なこととして、中国に対して真の圧力をかけて競争のために同国の基準を引き上げるよう促すことになる。スローガンよりもっと具体的なものによって、アジア諸国を米国にさらに緊密に結び付けることにもなる。

  残念なことに、トランプ大統領は就任後3日にしてこうした可能性を排除してしまった。日本との間で取りまとめたわずかな利益を大きく上回るような、本当に斬新な貿易合意を大統領が望むのであれば、こうした誤りを正す時間はまだある。

原題:Trump and Japan Are Aiming for an OK Trade Deal: Editorial(抜粋)

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