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Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

窮余の策迫られるか、銀行が口座手数料の導入検討も-追加緩和なら

  • マイナス金利0.3%に深掘りすれば銀行業界で5000億円の減益要因に
  • 手数料の在り方など銀行のビジネスモデルを見直す契機にも
Pedestrians walk under a mist cooling system in the Otemachi business district in Tokyo, Japan, on Monday, July 29, 2019. The Japan Meteorological Agency declared an end to this year’s rainy season for the Kanto area — which includes Tokyo — on Monday, a month later than last year’s unusually short season.
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

日本銀行がマイナス金利を深掘りする追加緩和に踏み切った場合、銀行が窮余の策として口座維持手数料の導入検討に乗り出すとの見方が浮上している。利用者の反発が予想され、実現への道のりは厳しそうだが、専門家は手数料の在り方を含めた銀行のビジネスモデルを見直す契機にもなるとみている。

Images Of Japanese Banks Ahead Of Full-Year Results

銀行支店の看板

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  「今まではタブーだったが、一段の深掘りとなると少なくとも導入に向けた議論が始まるのでは」。JPモルガン証券の西原里江アナリストは、法人向け取引手数料の引き上げなどでは収益の落ち込みは補えず、「聖域」とされた個人預金口座への手数料徴収も検討せざるを得なくなるとの見方を示す。

  同氏は短期政策金利が現在のマイナス0.1%から同0.3%に引き下げられた場合、初年度では銀行全体で約5000億円の最終利益の減少をもたらすと試算する。仮に年間1000円の口座手数料を徴収すれば、2000億-3000億円の手数料収入の増加が見込めるという。

  口座手数料への注目が高まったのは日銀関係者の発言がきっかけ。三菱UFJ銀行出身の鈴木人司日銀審議委員は8月29日の講演で「貸出金利が一段と低下した場合、収益の下押し圧力に耐え切れなくなった金融機関が預金に手数料等を賦課し、預金金利を実質的にマイナス化させることも考えられる」と言及した。

膨大な口座数も課題

  欧米では一般的な口座手数料は日本では過去も含めて、ごくまれなケースを除き実施されていない。大手行や地方銀行の関係者は国内での導入は非常に難しいと口をそろえる。マイナス金利の深掘りという外部要因を理由としても、預金口座は無料で提供されることが当たり前と考えている利用者からの理解を得にくいためだ。

  この点について、17年11月に当時の日銀副総裁の中曽宏氏は講演で、預金口座などのサービスを無料とする国民の「ノルム」(社会通念)を指摘し、金融仲介サービスの適切な対価について、国民的な議論が必要な段階に来ていると問題提起した。

  また、無料で口座が開設、保有できることの結果、全国の金融機関の個人預金口座数が合計で約11億口座、国民1人当たりでは10口座にも上っていることを挙げ、金融サービスの非効率化にもつながっていると指摘した。

  これら膨大な口座数のうち、かなりのものが何年も使われていない不稼働口座となっているとみられ、銀行にとっては管理面で負担になっている。マネーロンダリング(資金洗浄)対策として厳格な口座管理が求められている点からも問題だ。口座手数料を導入した場合、1人当たりの口座数は大幅に減ると予想される。

  口座手数料の導入について、三井住友銀行の広報担当者は、導入の是非を含めて何ら方針を決めていないとコメントした。みずほ銀行の広報担当者は、様々なサービスについて常に研究しているが、現時点で決まった事実はないと述べた。三菱UFJ銀行の広報担当者はコメントを控えた。

  口座手数料をめぐる議論について、富士通総研の岡宏主席研究員は「単にマイナス金利の影響の転嫁という観点にとどまらず、銀行における顧客サービスの在り方を見直す契機になってほしい」と語る。例えば、銀行にとって負担となっている通帳の廃止と組み合わせ、通帳を作らなければ口座手数料はかからない、といった選択肢を提示することも一つの考え方ではないかとしている。

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