コンテンツにスキップする

米国発のドキュメンタリー映画、中国で議論白熱-複雑な心情の吐露も

  • ネットフリックスは中国で視聴できないが、多くがこの映画を鑑賞
  • 中国国営メディアも批評に加わり、自国の主張を展開

米ネットフリックスの「アメリカン・ファクトリー」は、オハイオ州にある中国企業の所有となった工場を巡るドキュメンタリー映画だ。ネットフリックスは中国で視聴できないにもかかわらず、多くの中国人が2時間近いこの映画を鑑賞済みで、2大経済大国の関係を巡り議論が沸騰している。

  「美国工廠」との中国語タイトルも付けられたこの映画はソーシャルメディア上で幅広く語られているほか、影響力のあるブロガーや国営メディアもコメントや批評を発信。グローバル化や文化の違い、自動化、労働者の権利などで意見が交わされている。

  ネットフリックスの広報担当者によれば、中国で同社の番組を視聴する合法的な手段はない。ただ多くの中国人は、ストリーミングサイトやバーチャルプライベートネットワークを使ってこの映画を見ている。

relates to 米国発のドキュメンタリー映画、中国で議論白熱-複雑な心情の吐露も

オハイオ州デートン郊外にある福耀玻璃の工場で働く中国人と米国人の従業員

ソース: ネットフリックス

  アメリカン・ファクトリーの製作にはオバマ前大統領夫妻が設立したプロダクションも参加。ゼネラル・モーターズ(GM)が閉鎖したデートン郊外の工場が買い取られ、今は中国の福耀玻璃工業集団が運営する。米中貿易戦争に終わりの兆しが見られない中、同工場を舞台とする映画への中国人の反応は内省や保身が入り混じり、問題の複雑さが見て取れる。

relates to 米国発のドキュメンタリー映画、中国で議論白熱-複雑な心情の吐露も

休日に釣りを楽しむ従業員

ソース: ネットフリックス

  映画は楽観的なトーンで始まるが、労働文化に関する米中の違い、特に労働組合を巡る対立がすぐに工場全体を巻き込んでいく。最終的に労組の取り組みは失敗し、中国人マネジャーが労働者を機械に置き換え始める。

  この映画が描く米国人従業員と中国人マネジャーとの衝突は米中が好むビジネスモデルの違いに根差している可能性があるとブロガー名、劉潤さんが微信(ウィーチャット)に投稿すると、閲覧数は4万を超えた。

  中国ではどの企業にもいわゆる労働者の組合はあるが、こうした組織は給料や手当の交渉には直接関与せず、チーム作りの活動や祝日の贈り物配りなどの計画が中心作業となる。福耀の場合、会長の義理の兄弟が労組を運営し、この人物は労組と会社を「共に回転する2つの歯車」と表現する。

relates to 米国発のドキュメンタリー映画、中国で議論白熱-複雑な心情の吐露も

福耀玻璃の米部門で米国の文化について研修を受ける中国人労働者

ソース: ネットフリックス

  中国国営メディアはこの映画を長引く米中貿易戦争の文脈で取り上げ、米国は雇用創出で中国を必要とし、経済的なデカップリング(分離)は不可能との中国側主張の裏付けとして利用している。

  中国中央テレビ局(CCTV)は同局のソーシャルメディアプラットフォーム上に2016年の米大統領選でオハイオ州がトランプ大統領の勝利に極めて重要な役割を果たし、トランプ氏が同州での雇用拡大をかつて約束していたとする記事を掲載。「だがGMは今年に入り、この州でまた別の大工場を閉鎖した」とした上で、「さらに皮肉なことに、貿易摩擦が中国の対米投資急減につながり、福耀のような『美国工廠』をこの地域の数少ない重要な生命線の1つにしている」と論じた。

  国営の新華社通信はこの映画が米中両国民の相互理解を助ける「前向きな役割」を果たしていると評価する論説を配信。米中の協力とコミュニケーションに照準を定めた映画は「時宜を得て現実的で有意義だ」と指摘した。

  だが、そう割り切れる視聴者ばかりではない。70万回以上再生されたウェブサイトで鑑賞したチャン・ミンさん(33)は「とても複雑な気持ちだ。中国人労働者の勤勉さとまとまりを評価したい一方で、権利と保護の拡充を求める米国人労働者に共感も覚える」とコメント。「こうした問題の答えは見えない」とし、「多分、最終的には誰もがオートメーションに取って代わられるのだろう」と話した。

relates to 米国発のドキュメンタリー映画、中国で議論白熱-複雑な心情の吐露も

福耀玻璃の年次夕食会でパフォーマンスする従業員(中国福建省福清)

ソース: ネットフリックス

原題:Tale of Chinese Factory in America Prompts Online Buzz Back Home(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE