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基幹産業の農業を守れ、規制緩和で地域商社化推進へ-鹿児島銀行

  • 牛の担保融資など畜産分野で培ってきた生産者支援のノウハウを活用
  • 地銀は地域の価値高める投資ビジネス的なものが重要に-みずほ総研

昨年末の環太平洋連携協定(TPP)発効に続く日米貿易交渉の原則合意により、牛肉など外国産農産物の関税引き下げが今後加速する。全国有数の農業県のトップ金融機関である鹿児島銀行は基幹産業を支えるため、主に畜産分野で培ってきた生産者支援のノウハウを生かして、今年度中の規制緩和を機に地域商社化の推進に取り組む方針だ。

  鹿銀は1997年から農業金融に着手し、2003年に農畜産業と食品加工業を中心に観光業、飲食業など関連産業まで含めた商流に携わる産業群の活性化を支援する「アグリクラスター構想」を掲げた。牛を担保とした動産担保融資(ABL)の管理システム「アグリプロ」を10年に開発し、畜産ABLの先駆者として知られる。翌年からは専門家を育成するため、畜産業者への行員派遣も始めた。

Cattle Shed

福永畜産の牛舎

Photographer: Masahiro Hidaka/Bloomberg

  牛の肥育農家は生後10カ月の子牛を購入し、20カ月育てて出荷するため、運転資金が膨らむ傾向がある。鹿銀のアグリプロは、家畜改良センターのデータと照合し牛一頭ずつの肥育状況やコストなどの情報をモニタリングすることで、頭数を正確に把握して現在価値や融資可能額などを割り出し、急な借り入れにも迅速に対応できる。アグリ関連融資は3月末で972億円でABLが3分の1を占める。

  同じ九州フィナンシャルグループの肥後銀行(本店熊本市)も16年からアグリプロを導入。鹿銀は現在、牛の繁殖が盛んな石垣島など沖縄県八重山地方にもABLのノウハウを持ち込もうとしている。後継者不足で全国的に牛の繁殖農家が減少して子牛の価格が高騰する中、繁殖が畜産業の経営の鍵を握るからだ。

  畜産業者への派遣の第1号である山元秀介自然部調査役(40)は沖縄でのABL展開について、「うちの手法を入れることで安定した経営や規模拡大ができれば、大きく言うと日本の畜産業に寄与するし、既存の顧客にも恩恵がある」と意気込む。

養殖魚の個体認証

  一方、上司の諏訪田敏郎自然部部長(56)が取り組むのは「アグリプロ」のアクア版だ。鹿児島はブリ養殖生産量が日本一。鹿銀が農林漁業金融公庫(現日本政策金融公庫)の協力を得て行った融資を元手に09年に創業したグローバル・オーシャン・ワークスは、2年間育てたブリを切り身にして真空パックで米国などに輸出する。

  徹底した品質管理で国際認証(ASC)を取得した同社は、水中カメラと人工知能(AI)による個体認証技術の導入を検討中。諏訪田氏は「尾数を把握できるようになればABLが可能」と語る。県内の養殖業者が減少する中、担保価値の評価がシステム化できれば、他の金融機関を巻き込んで養殖業の規模拡大にも貢献できると期待する。

  鹿銀は生産者の所得向上につながる生産・加工・流通販売の6次産業化を目指している。その代表例は自社ブランド「さつま福永牛」が全国の食肉牛コンテストで13年に日本一、昨年は2位となった福永畜産。14年に設立した食肉加工販売の「さつま福永牧場」は鹿銀主体の6次産業化ファンドの出資第1号。また、12年設立の「牛道」が鹿児島市内に4店舗、東京に1店舗、焼き肉店などを展開する。

地域商社

  銀行による企業の議決権保有は原則5%までに制限されている。鹿銀は地域活性化事業を行う企業に対するファンドを通じた出資のほか、農業法人への出資も行い、人材派遣などで生産者を支援することで、地域商社的な機能を果たしてきた。

  松山澄寛頭取(64)は、農林水産業が鹿児島の「基幹産業であることは間違いない」とした上で、地域商社事業は「地域を一番お手伝いできる分野だ」と推進に意欲を示す。

  その追い風となるのが、金融庁が8月28日公表の今年度金融行政方針で示した地域金融機関に対する5%ルールの緩和だ。地域経済活性化支援機構の関与がない地域活性化事業会社でも、投資専門子会社を通じて40%未満までの議決権保有が可能となる。地域商社に関しても、銀行業高度化等会社を通じて100%まで出資できるようになり、銀行は経営への関与を高められる。

  みずほ総合研究所の高田創副理事長は、鹿銀の取り組みを地域商社的なビジネスの好例だと評価する。超低金利下で預貸業が低迷する今、地銀は「地域の物産販売だけでなく生産から流通・販売まで一貫したマーケティングを主体的に行い、地域全体の価値を高める投資ビジネス的なものが重要になる」とみる。

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