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2億円超で幼い我が子救えるなら-遺伝子治療薬で家族が奔走

  • 遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」は世界で最も高価な医薬品
  • SMA患者は治療を受けなければ2歳になる前に死亡する

遺伝子治療は米医療システムの最も優れた点を引き出しつつ、欠点も浮き彫りにしている。

  米食品医薬品局(FDA)が脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬として承認した「ゾルゲンスマ」は、乳幼児にとって命取りとなり得る筋肉の希少疾患を1回の投与で治療するとされる(投与後も遺伝的要因は消えないが、死に至る症状は出ない)。FDAが5月24日に承認後、スイスの製薬会社ノバルティスは価格を210万ドル(約2億2400万円)に設定、世界で最も高価な治療薬になった。

  新たな治療薬は医師や医療システムが最適化できるまで常に時間がかかるものだが、今回のように非従来型の画期的治療薬ならなおさらだ。高価なゾルゲンスマの恩恵にあずかりたい患者側の切実な問題も状況を一段と複雑にする。米国のSMA新生児数は毎年400人程度だが、治療を受けなければ多くが2歳になる前に死亡する。

  ゾルゲンスマについては全ての大手保険会社が適用対象とする一方、その3分の1は2歳未満への使用を承認したFDAより厳しい基準を設けている。米最大手のユナイテッドヘルスケアなどは当初のポリシーを見直し、FDAの承認内容に沿って適用を変更したが、アンセム・ブルー・クロス・ブルー・シールドなどは6カ月未満の患者に制限している。

  同薬を開発したノバルティスの部門でプレジデントを務めるデーブ・レノン氏は「新薬の市場投入時に保険会社の理解を得ることはいつも課題だ」と指摘した。
 
  SMAの乳幼児が治療を受けて無事成長できるよう、奔走した家族の一例をここに紹介しよう。

  ポートフォリオマネジャーのラジディープ・パトギリ氏と同氏の妻は、2018年9月に英国で生まれトラと名付けた自分たちの娘があまり動かないことに、翌年1月までに気が付いた。インターネットで症状を検索すると、SMAに関する結果が数件出てきたため、同氏は娘を医療施設に連れていった。しかし、発達が遅れている可能性が高いと医師に指摘されるだけだった。

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パトギリ氏の家族(オハイオ州コロンバスで、8月17日撮影)

Photographer: Annick Sjobakken for Bloomberg Businessweek

  パトギリ氏は納得せずに調べ続け、ついに2カ月後、神経科医からSMAとの診断を得た。だが英国に承認薬はなかったため、ゾルゲンスマの治験に参加するため米国に家族で移住できないかと勤務先に相談。5週間後、同氏はニューヨークのオフィスに配属された。

  当局の承認が下りるまでの期間に無料で治験薬の投与を受けられるノバルティスのプログラムを通じ、ゾルゲンスマの治療を娘に受けさせようとしたパトギリ氏だったが、米市民でもなければグリーンカード保有者でもなかったため、この方法は閉ざされた。6月になり、ユナイテッドヘルスケアの保険プランでゾルゲンスマの適用を申請したものの、数日後に拒否される。当時、保険のカバー対象が6カ月未満の子供に限られていたからだ。

  しかし、ユナイテッドヘルスケアは拒否を通知した6月25日、適用を2歳までの子供に拡大していく新指針も公表していた。この新指針を先に目にしていたパトギリ氏はその後も同社から承認を得られないと、不服申し立ての手続きを続けながら、一連の経緯を米紙ワシントン・ポストなどのメディアに伝えた。各紙が記事を掲載してから1週間後、ようやく保険の承認が下りた。

Number of Gene and Cell Therapy Products in Development

Data: American Society of Gene and Cell Therapy

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:When a $2.1 Million Drug Could Cure Your Child’s Fatal Disease (1)(抜粋)

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