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ラストベルト化におびえる「現代タウン」-韓国一豊かだった蔚山

  • 世界的な造船業界の激変のみならず財閥の構造的問題も影響
  • 蔚山から現代側が「研究開発を担う人材と利益を持ち出す」との指摘

造船世界一の現代重工業で溶接工として15年間にわたり働いたパク・ジンオクさんは2016年に早期退職に応じた。それ以降、3万5000人ほどが同じように同社を辞めるか仕事を失った。

  現代重工の造船所がある蔚山はかつて、9年連続で1人当たりの所得が韓国一となるなど豊かな都市だったが、劇的な凋落(ちょうらく)に見舞われている。世界的な造船業界の激変のみならず、韓国を世界有数の工業国に押し上げた「チェボル」と呼ばれる財閥の構造的な問題も浮き彫りとなっている。

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蔚山にある現代重工の造船所

撮影:ソン・ジュン/ブルームバーグ

  蔚山でのインタビューで、パクさん(46)は「定年まで数年しかなく、高い給料をもらっていた人には特に大きなプレッシャーがあった」と語った。

  釜山にも近い蔚山は「現代(ヒュンダイ)タウン」として知られる。巨大な造船所のみならず、世界最大の自動車組立工場や世界的規模の製油所もある。現代グループを創業した故・鄭周永氏が1970年代に始めた4キロメートルに及ぶ造船ドックは、競合する欧米の造船会社を葬り去った。

  そして今、韓国が直面するのは、中国からの同じ脅威だ。ブルームバーグ・インテリジェンスによれば、世界造船市場における中国のシェアは2021年までに52%に達する。08年は24%だった。一方、08年に38%のシェアを誇った韓国は21年までに22%に低下する見通し。中国はまた中国船舶重工集団と中国船舶工業集団の合併を計画しており、現代重工をはるかにしのぐ巨大造船会社を誕生させようとしている。

Rise of China’s State-Run Shipyards

  多くの業界で成長が鈍化している韓国では、チェボルによる産業モデルの有効性に疑問を抱く国民が増えている。

  現代重工は今年3月、韓国の大宇造船海洋との提携で合意し、世界1、2位の造船会社を新たなソウルの持ち株会社の下に置くことを決めたが、債務に苦しむ現代重工の造船事業が置き去りにされるとの懸念から、蔚山では抗議行動が続々と起きている。5月には市長が公の場で剃髪し抗議した。

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「現代タウン」と呼ばれる蔚山

写真家:ソン・ジュン/ブルームバーグ

  蔚山大学のキム・ヨンミン教授(生産工学)によれば、蔚山から現代側が「研究開発を担う人材と利益を持ち出す」ことになる。蔚山の産業が衰退し「ラストベルト(さびついた工業地帯)化する高い可能性がある」と同教授は語った。

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現代重工が製造した船舶用プロぺラ

写真家:ソン・ジュン/ブルームバーグ
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現代重工の造船所近くにある市場

撮影: SeongJoon Cho/Bloomberg

原題:Backlash Against Billionaires After Fall of Korea’s Richest City(抜粋)

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