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第一三共が抗がん剤で米国市場を開拓、どん底から再建し株価上昇

  • 株価は年初から約9割上昇-新薬開発や提携が後押し
  • 他のADCで提携パートナーを探すことも視野-同社CEO

第一三共は、英製薬大手アストラゼネカとの抗がん剤分野での提携を踏まえ、今後は研究が最も進んでいる米国で「メジャーなプレーヤーになる」ことを目指している。中山譲治会長がブルームバーグのインタビューで明らかにした。  

  第一三共は3月にアストラゼネカと抗がん剤「トラスツズマブ・デルクステカン(開発名はDS-8201)」の開発・販売で提携すると発表。提携を通じて米国で販売経験を積み、現地医療機関との関係構築を狙っている。同剤は乳がんや胃がん、大腸がんなどを対象とする。

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第一三共・中山会長

  「がんに強い会社」になることを目標として掲げる同社の株価は、有望な新薬開発が材料となり年初から約9割上昇。国内製薬4位だった時価総額は武田薬品工業に次ぐ2位まで順位を上げた。

  DS-8201を巡る提携では複数企業から打診があったものの、アストラゼネカが開発・販売費用や利益を折半し、第一三共が米国を含む複数の国で売上高を計上するという条件を受け入れたことから提携に至ったと説明した。アストラゼネカは中国やオーストラリアなどでの売上高を計上する。
 
  提携発表から数時間後、同社は中山氏が最高経営責任者(CEO)職のバトンを真鍋淳氏に渡すことも明らかにした。中山氏主導の提携が結実したことを踏まえた人事の発表だった。

右肩上がりの株価

  大和証券の橋口和明アナリストは、DS-8201の年間の売上高は2030年3月期に8500億円に達すると予想する。年間で10億ドル(約1060億円)以上を売り上げれば「ブロックバスター」と呼ばれる医薬業界で、DS-8201は日本発のブロックバスターの有力候補だ。

どん底からのスタート

  ここまでの道のりは平たんではなかった。10年に中山氏がCEOに就任する2年前、同社は約4900億円を費やしてインドの後発医薬品メーカー、ランバクシー・ラボラトリーズ買収。その直後に不祥事が発生し、第一三共の株価は第一製薬と三共が05年に統合して以来の安値水準となっていた。

  就任後の最大の使命はランバクシーの再建。買収は第一三共の海外事業を強化し後発薬事業は第2の成長の柱となるはずだったが、米食品医薬品局(FDA)の調査でデータの捏造(ねつぞう)などが発覚し、インド4工場のうち2工場が米国への製品の輸出を禁じられた。

  立て直しに向けて日本から人員を送り込んだものの、14年1月にはFDAがランバクシーの工場に立ち入り検査を実施する事態に発展。追加の禁輸措置も受けることとなり、流れはランバクシー売却の方向に切り替わった。

  中山氏は、「従業員数も桁違いに多かった上、言語の問題もあった」こともあり、不祥事の中身を完全には把握できていなかったと振り返る。買収に名乗りを上げたサン・ファーマシューティカル・インダストリーズとは約2カ月で素早く契約をまとめ、約3700億円での売却という苦渋の決断を下した。

がんに強い会社へ

  15年5月には同社の重点分野を新薬に回帰させることを決定した。後発薬の分野では買収なくして世界の強豪と肩を並べることは不可能。新薬の研究開発にも投資が必要なため、会社の体力的に買収と研究開発の二つの投資を同時に進めるのは「まず無理」と考えたためだ。社内人材は新薬開発に強く、がんの分野では新薬投入に積極的なこともあり、がんの新薬に集中する方針を固めた。

  16年3月に新たな方針を盛り込んだ中期経営計画を作り上げて発表するも、市場の反応はいまひとつだった。第一三共はがん領域での実績がほぼなく、投資家に本気度が伝わらなかったためだ。

  ちょうどその頃、同社内では「抗体薬物複合体(ADC)」の技術が開花していた。ADCは、抗体と化学療法剤(薬剤)を「リンカー」と呼ばれる部分を介して結合したもの。抗体の力でADCを特定のがん細胞に付着させてから薬剤をがん細胞内に分離することで、正常な細胞にほとんど影響を与えずにがん細胞を狙い撃ちできるのが特徴。

  中山氏は「良かったのはADCというリソースが社内にあったこと」と振り返り、ADC技術の確立は「神様がうまくこのタイミングにしてくれた」と述べた。同氏はDS-8201を含めたADCの技術を活用した製品開発に資金を集中させ、どん底からの復活を狙った。この技術が高く評価され提携することとなったアストラゼネカからは最大69億ドルを受け取る。

  第一三共では現在、最も開発が進展しているDS-8201のほか6つのADCプロジェクトが進行中。真鍋CEOは7月に行った別のインタビューで、非小細胞肺がんなどを対象とする「U3ー1402」など他のADCについても良い提携先が現れれば手を組むことも「オプションとして魅力的」と見解を示した。

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