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【コラム】米利下げ、一度切りで終わる公算-ダドリー前NY連銀総裁

米金融政策当局は極めて重要な方向へとかじを切る局面にある。政策金利を引き下げるとすれば、10数年ぶりとなる。弱々しい景気を浮揚するための新たな刺激政策の一歩を踏み出すと多くが期待しているが、果たしてそうだろうか。

  今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の後は、近く追加利下げが実現することはないだろうと私は考えている。今週0.5ポイントの利下げを予想する人もいるが、私は賛同しかねる。FOMC内にそのようなコンセンサスはないし、最新のデータによれば経済は勢いを増しているからだ。それに執拗(しつよう)に大幅な利下げを要求するトランプ大統領の圧力に屈したとの印象を与えれば、米金融政策当局の独立性が損なわれかねない。0.25ポイントの利下げですら、大きなリスクを伴う。後世に判断ミスと断じられはしないだろうか。

  FOMCが重視しているのは、景気が減速しインフレが目標を下回り続けるリスクだ。インフレ期待が悪化すれば、景気を刺激するFOMCの能力が損なわれる。それに金利はすでに、この景気サイクルで典型的な水準を大きく下回っている。この状況でリセッションと闘うための政策余地を維持するにはどうするのが最善か、という課題が立ちはだかる。ゼロ金利から逃れられない日本の轍(てつ)を踏まないためには、なるべく早期に思い切った行動を取る必要があるというのが当局者の考えだ。パウエル議長の言葉を借りれば、1オンスの予防薬は1ポンドの治療薬に値する。

  とは言え、もう一つのリスクを忘れてはならない。すでにトレンドを上回るペースで成長して債券と株式が恐らく持続不能な高値圏に押し上げられている局面で、景気に不必要な刺激を与えるリスクだ。FOMCが貿易政策や国外経済の成長減速といった不確実性がもたらす下向きの脅威に注目する余り、最終的に政策が過剰になってしまうことは起こり得る。経済が勢いを維持しインフレが加速すれば、今度は金融引き締めを余儀なくされる。その場合、FOMCが自ら醸成した金融バブルを突然のショックによって破裂させ、手痛いリセッションを招く可能性が高くなる。

  注意しなくてはならないのはこのリスクの方だ。ここ数週間の米経済では、予想より強い雇用の伸びと小売売上高、国内総生産(GDP)成長率が示された。6月にはコアインフレも若干加速し、インフレ期待も上向いたことが市場動向や消費者調査で明らかになった。

  つまり利下げの論拠は、6月FOMCの時よりも弱まっている。だからといって今週の利下げが誤りだという意味ではない。しかし今後1年ほどかけて複数回の利下げがあると期待するならば、不都合なサプライズを覚悟しておいた方が良いかもしれない。なぜならFOMCの今後の行動は、一部の市場が考えている以上に最新の経済データに左右されるからだ。今週のFOMCで利下げがあるとしても、「一度切り」で終わる可能性は十分にある。

原題:The Fed Might Not Cut Interest Rates More Than Once: Bill Dudley(抜粋)

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