コンテンツにスキップする

プライバシー規制緩い中国、融資審査のAI活用で世界的リーダーに

  • 借り入れ申請はスマートフォンを数回「タップ」するだけ
  • 中国本土の「社会信用システム」、銀行の情報源の1つ

馬雲(ジャック・マー)氏のオンライン銀行が、中小企業向け融資の静かな革命を主導している。アジア一の経済大国である中国が何十年にもわたり抱えていた与信のボトルネック解消を狙う。

Key Speakers at Viva Technology Conference

ジャック・マー氏

 

  アリババ・グループ・ホールディング共同創業者の馬氏が4年前に設立した網商銀行(MYバンク=マイバンク)はリアルタイムの決済データと3000余りの変数を分析するリスク管理システムを用い、1600万社近い小規模企業に2兆元(約31兆5900億円)を貸し出している。

  借り入れ申請はスマートフォンを数回「タップ」するだけ。承認されればほぼ即時に資金を受け取ることができる。このプロセス全体に要する時間は3分で、人間の銀行員は全く関与していない。デフォルト(債務不履行)率はこれまでのところ1%前後だ。

  中国を世界最大の電子決済市場へと変えた金融テクノロジーが今挑むのは、中小企業が銀行と取引するやり方の改革だ。マイバンクをはじめとし、決済システムやソーシャルメディアからの新しいデータを利用する同業各社は、小規模な借り手とのやり取りのスキルを磨きつつある。中小企業は本土経済で成長の大きな部分をけん引するが、中国の銀行業界では国有企業が重視され、小規模な借り手はこれまで門前払いされていた。

  13兆ドル(約1415兆円)規模の中国経済は今年4-6月(第2四半期)、少なくとも1992年以来の低成長となった。国有でない企業は大半が小規模だ。これらの企業は成長の約6割と労働者雇用の8割を担うが、シャドーバンキング(影の銀行)に対する政府の取り締まりが2年余り続く中で過度に圧迫されている。

Let There Be Loans

Jack Ma's MYbank is extending credit to once-untouchable small businesses

Souce: Company reports

  アーンスト・アンド・ヤングの銀行・資本市場担当グローバルアシュアランスリーダー、キース・ポグソン氏(香港在勤)は「中小企業が本当は経済のボイラー室だ」と述べた上で、「かつては難しくリスクが高過ぎると銀行側が見なしていたセグメントだったが、今は独自モデルを運用することで、リスクがどの程度か割り出している」と説明した。

  コンサルティング会社オリバー・ワイマンの大中華圏金融サービス共同責任者クリフ・ション氏は、融資を提供するためのビッグデータ・人工知能(AI)テクノロジー活用で中国が急速に世界のリーダーとなりつつあると分析。

  中国にとって最大級の利点は、他の多くの国々と比べプライバシーについて緩いアプローチを採用することができることだ。中国の「法的枠組みと規制環境の下では、プライバシーをそれほど気に掛けることはなく、膨大なデータを生み出し、前代未聞の実験が可能だ」と同氏は語った。

  中国全土にわたり良い行いをした人に報い不正を罰する仕組みの「社会信用システム」は論争を呼んでいるが、このシステムが銀行の情報源の1つとなっている。マイバンクの金暁竜社長は最近のインタビューで、借りた傘を返さず社会信用システムのスコアを落とした小企業のオーナーは、融資を受けるのが難しくなる可能性を1つのシナリオとして挙げた。

業務コスト

  金社長によれば、マイバンクの融資承認率は伝統的な銀行の4倍で、これは情報を増やした結果だという。旧来型の銀行は小企業ローン申請の8割を拒否し、審査プロセスに30日以上を必要とするのが一般的だ。浙江省杭州を本拠とするマイバンクのローン1件当たりの業務コストは約3元。一般的な銀行では2000元だ。

  昨年6億7000万元を稼いだマイバンクだけが、中小企業向け融資を増やす上でテクノロジーを活用しているわけではない。テンセント・ホールディングス(騰訊)と中国平安保険(集団)の傘下企業も同じようなサービスを提供しており、国有の中国建設銀行もこの分野における存在感を劇的に高めようと取り組んでいる。

  事情に詳しい関係者は29日、マイバンクが資本を倍以上の100億元に増やし、貸し出し拡大を可能にするため、約60億元の資金調達を検討していることを明らかにした。

原題:Jack Ma’s $290 Billion Loan Machine Is Changing Chinese Banking(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE