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米国が懸念する中国の軍事拠点化-カンボジアの大規模リゾート開発

  • 「突然、東南アジアの陸地が中国の軍事的防衛線となる可能性」も
  • ASEANの一致団結と重要性を脅かす可能性を米国は警戒

カンボジア沿海部での大規模リゾート開発を巡り、米国の軍事アナリストらが警鐘を鳴らしている。

  ダラサコルでは38億ドル(約4100億円)規模の投資により、カンボジアの海岸線を含め広大な開発が進む。99年間の契約を結んだ中国企業を中心に、国際空港や深度の大きな港湾、工業団地の建設が段階的に計画され、発電所や水処理プラント、医療施設を備えた大掛かりな高級リゾート地となる予定だ。

Holiday Resort or Multi-Billion Dollar Naval Base

「ダラサコル・シーショア・リゾート」の建設現場

Photographer: Brent Lewin/Bloomberg

  事情に詳しい関係者によれば、この大規模開発はカンボジアに軍事拠点を置く中国の計画の一部ではないかとの米国の懸念を招いている。この地域に中国が海軍基地を設ければ、東南アジアにおける中国の戦略拠点拡充を意味する。領有権を巡り各国が争い、海上交通の要衝ともなっている南シナ海の玄関口にもなる。

Strategic Resort

 

 

  カンボジアにおける中国の存在感にトランプ政権が懸念を示したのは、今回が初めてではない。ペンス米副大統領は昨年、カンボジアのフン・セン首相に書簡を送付。同国のリアム海軍基地を中国が利用するのをカンボジアが受け入れるのではないかと心配していると伝えた。カンボジア政府当局者はこうした見方を繰り返し否定している。

  米国がより深く憂慮しているのは、中国の習近平国家主席が肝いりで進める広域経済圏構想「一帯一路」の下で、スリランカパキスタンミャンマーなど各国で戦略的に重要な港湾などのインフラが整備され、これが中国人民解放軍の海外拠点に転じるのではないかということだ。中国は2年前、アフリカの小国ジブチに初の海外軍事基地を置いた。カンボジアは対内投資の4分の3を中国から得ており、中国にとってもカンボジアはパートナーとして東南アジアで最も信頼できる国になりつつある。

Hambantota Port and Gwadar Port

左:スリランカのハンバントタ港(2018年3月) 右:パキスタンのグワダル港(18年7月)

 

  米国務省の元職員で現在はシドニー大学の米国研究センターで上級研究員をしているチャールズ・エデル氏は「カンボジアに海軍基地があれば、中国の海軍は東南アジアの海域でより好ましい作戦環境を持つことになる」と分析。「突然、東南アジアの陸地が中国の軍事的防衛線となる可能性があるのだ。極めて大きな意味合いを持ち、政治的な影響が及ぶだろう」と指摘した。

Holiday Resort or Multi-Billion Dollar Naval Base

シアヌークビルのリアム海軍基地(19年7月8日)

Photographer: Brent Lewin/Bloomberg

  フン・セン首相は中国の軍事基地に関する報道を「フェイク(偽)であり、事実をねじ曲げている」と主張。ペンス副大統領への返信で、カンボジアは外国のあらゆる軍事的プレゼンスと「カンボジアを再び代理戦争に陥れる可能性のある対立状態」を拒否すると記した。ブルームバーグが書簡の写しを確認した。

Holiday Resort or Multi-Billion Dollar Naval Base

「ダラサコル・シーショア・リゾート」

 

  プノンペンにある米国大使館のエミリー・ジーバーグ報道官は電子メールで、「カンボジア国内に外国の軍事的プレゼンスを招く政府の措置が東南アジア諸国連合(ASEAN)の一致団結と重要性を脅かすことをわれわれは懸念している」とコメントした。

Holiday Resort or Multi-Billion Dollar Naval Base

ダラサコル国際空港の建設現場

Photographer: Brent Lewin/Bloomberg

  カンボジア政府のファイ・シファン報道官は中国の軍事基地に関する米国側の懸念をイラクが大量破壊兵器を保有しているとのかつての米国の主張になぞらえた上で、カンボジアにはダラサコルや国内の他の場所で中国の海軍施設を招く意図はないと述べた。

Holiday Resort or Multi-Billion Dollar Naval Base

シアヌークビルでは建設工事が続いている(19年7月8日)

Photographer: Brent Lewin/Bloomberg

  深い森に覆われた360平方キロメートルに及ぶボタムサコル国立公園の観光拠点となるダラサコルでリゾート開発を手掛けているのは、中国の天津ユニオン・デベロップメント・グループ(天津UDG)だ。この開発プロジェクトへの支持を中国共産党幹部から取り付けた同社は、カンボジアでの新たな大都市の建設を思い描く。

  天津UDGに対し数週間にわたり電話や電子メールで取材を試みたが、正式なコメントは得られていない。ただ、電話に出た女性は「カンボジア政府がこの問題について対応していると認識しており、軍事拠点構築との臆測は否定する。それ以上付け加えることはない」と話した。

原題:The U.S. Fears a Cambodia Resort May Become a Chinese Naval Base(抜粋)

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