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メンズコスメで男性も「顔」に投資、SNSや仕事にプラス

  • メンズコスメ市場は10年間で20%伸び約1200億円規模、今後も拡大へ
  • 男らしさ重んじる日本で市場が軌道に乗るのは4、5年先との見方も

男性も顔に投資する時代が到来したのだろうか。元投資銀行家のフランスのマクロン大統領は2017年の就任当初、メーキャップに1日当たり平均300ドル(約3万3000円)以上も費やしていたことが明らかになり話題となった。マクロン氏のように人前に立つことが多くなくても、男性の肌の悩みは女性と比べても少なくはない。

  にきびの痕やベタ付き、毛穴の広がり、乾燥など、年齢を重ねるごとに男性の肌の悩みも増える。また、女性と違って定期的にひげをそる必要があることから、肌はむしろ荒れやすい。

Pola Orbis Holdings Inc. Men's Make Up Store and Demonstration

FIVEISM × THREEのデモンストレーション

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  市場調査会社の富士経済の調べでは、男性の美に対する投資は、年間2兆7000億円を超えると見込まれる国内化粧品市場全体から見ると少ないものの、ヘアケアなども含めたメンズコスメ市場は18年までの10年間で約20%伸び、1200億円近くに達したと推計されている。このうち化粧水などのフェースケア市場は230億円を超え、今後も市場拡大が予想される。

  男性向け化粧品は続々と登場している。ポーラ・オルビスホールディングスは、メンズコスメラインを拡充。昨秋からカラーメーク用製品も取りそろえた総合ブランド「FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)」を立ち上げ、アイシャドーやリップなど約60種類の商品を発売した。現在では約80種類に増えている。

  ここまで男性向け商品を幅広くそろえたのは大手化粧品メーカーでは初の試みで、老舗百貨店で専用カウンターまで設けている。

  国内最大手の資生堂は今年3月、肌色を補正するBBクリームを男性向けに発売。この製品は1本で全ての肌色に対応するという。今後カラーメーク商品を投入するかどうかは、市場の動向を見てから判断すると広報担当の佐藤純氏は話す。

  ファイブイズムの発案者であるブランドプロデューサーの石橋寧氏は、20、30年前だったら発売は考えられなかったとし、日本人男性の美意識は確実に向上していると指摘。CLSA証券で化粧品業界の株式調査を担当するオリバー・マシュー氏はメンズメークについて、「需要は本物で、市場の変化も確かだ」との見方を示す。

彼女のお薦め

  コンサルティング企業で働くことが内定した大学生の中村洋太さん(22)は、東京・丸の内にあるTHREE製品の体験ショップを訪れた。きっかけは交際相手がこのブランドを「お薦め」してくれたからだ。仕事柄、顧客に会うことが多いためファンデーションの購入を検討している。

  「リップを付けるというとちょっと恥ずかしいけど、下地とファンデーションなら」と話す。特に肌の悩みはないものの、10年後、20年後も容姿を良く保ちたいそうだ。
 
  男性向けメーク製品が相次いで発売される背景には、インスタグラムなどの会員制交流サイト(SNS)の浸透がある。自撮りの動画や写真をネット上で共有することが増え、性別を問わず自分をよりきれいに、格好よく写したいという願望が強くなっている。

  特に1990年代中盤以降に生まれた「ジェネレーションZ」と呼ばれる世代を中心に中性的な見た目に憧れを抱く若者が増えていることや、アジアでは韓流スターをまねたいというニーズが、男性の化粧品需要を後押ししている。

Pola Orbis Holdings Inc. Men's Make Up Store and Demonstration

FIVEISM × THREEの「ネールアーマー」

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  メンズメークのインフルエンサー、こんどうようぢさんは、韓国風メーク方法の動画をユーチューブに投稿したところ、190万回以上も再生された。調査会社ミンテルのアナリスト、シャーロン・クワ氏は、特にアジアではK-POPなど「エンターテインメントの影響がこの市場をけん引している」と指摘する。

韓国がリード

  海外メーカーでは、フランスのシャネルが昨年9月からメンズメーク製品の販売を韓国で開始し、11月に日本市場へ投入した。男性のためのメーキャップラインを展開するのは、設立から約100年の歴史の中で初の試みだ。米トムフォードのメンズメーク製品も今春日本に上陸している。

  アジアでは、韓国市場がブランド数や製品の種類で他の市場を圧倒する。中国では、男性向け化粧品のオンライン購入が昨年、前年比で50%伸びたことがEコマースサイト運営のアリババ・グループと仏化粧品メーカーのロレアルの共同調査で明らかになった。調査対象の男性のうち6割超がスキンケア製品をオンラインで購入したことがあると答えた。

  これらの国と比べ、国内市場の開拓はこれからだ。関心が高まるごとにメンズメーク商品を発売し、ニーズを模索してきた資生堂は慎重姿勢を崩さない。1996年に眉毛を整える「ジェレイド アイブローデザインキット」を男性向けに発売したが、市場での定着には至らなかった。

メンツを重んじる日本

  メンズコスメの「BULK HOMME」ブランドを展開するバルクオム代表取締役の野口卓也氏は、男らしさやメンツを重んじる日本で、メンズメーク市場が軌道に乗るのは「少なくとも4、5年先」と予想する。

  ただ、メンズコスメ市場には女性向け市場とは異なる魅力がある。女性向けはブランドが多いが、男性向けは競合が圧倒的に少ない。購入者が一度気に入るとリピート率が高くなることも期待される。野口氏によると同社の製品は約2万人が継続使用しており、リピート買いは平均で6回以上に上る。

  メーク市場は、男性と女性が「一歩ずつ歩み寄ってできていく」と野口氏。メークしている男性を好奇の目で見ず、「社会が寛容にいろいろな人たちがきれいになっていくのを見守ってほしい」。

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