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【コラム】孫正義氏も投資せぬ日本、ユニコーン増やせるか

孫正義氏

孫正義氏

Photographer: Billy H.C. Kwok/Bloomberg
孫正義氏
Photographer: Billy H.C. Kwok/Bloomberg

ソフトバンクグループのビジョン・ファンドは、世界中の急成長企業(ユニコーン)75社に約1000億ドル(約10兆8000億円)を投資してきた。だが、その中に日本企業は1社もない。

  選択肢が少ないためかもしれない。CBインサイツによると、米国には非上場で評価額が10億ドル超のユニコーンが179社、中国には93社、インドに18社あるが、日本には2社しか残っていない。「ウォークマン」やロボットで先駆者的な日本がなぜ、価値あるスタートアップ企業を生み出せないのだろうか。説明は幾分複雑になるかもしれないが、日本にイノベーターの卵が少ない根本の原因を突き止めるのに役立つだろう。

  東京証券取引所の新興企業向け市場マザーズの上場基準は非常に緩い。米ナスダック上場には125万株以上の流通株式数が必要だが、マザーズは2000。創業から間もない企業には上場して株式市場で資金を集めることが容易にできることを意味するが、企業の規模が小さいと、調達額も小さくなるという問題がある。

  上場時に企業規模は大きければ大きいほど、機関投資家から集まる資金が大きくなり一段と成長する公算は大きくなる。結果、マザーズ指数を構成する283銘柄のうち96%の時価総額は10億ドル未満。ナスダックではこの割合は3分の1前後だ。

  過去2年間に上場した日本のユニコーンはわずか2社。フリーマーケットアプリのメルカリは昨年6月に新規株式公開(IPO)したが、株価はそれ以降4%下落。法人向け名刺管理サービスのSansanは先月の上場後、33%高となっている。残るユニコーン2社は人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークスと仮想通貨取引所運営のリキッド・グループだ。

Card Game

Sansan raised around $307 million in Japan's biggest IPO this year

  魅力的な選択肢がなければ、孫正義氏のような投資家はベンチャーキャピタル資金を国外に投じる。そして国内のスタートアップ企業には規模は小さくとも早めに上場しようというインセンティブが働きやすくなり、悪循環が続く。

  日本のイノベーションには文化的な問題もある。大卒の若者は不安定な職業より、トヨタ自動車など大企業に就職しようとする。また、シリコンバレーと異なり、日本の新興企業の創業者は資金要請の態度が控えめだ。  

  日本で起業が停滞してしまったわけではない。ベンチャー資金の調達は昨年、35億ドルと過去最高に達した。しかし、1000億ドルをそれぞれ超える米国や中国と比べれば、微々たるものだ。

Mother's Day

IPO volumes on Japan's Mothers index surged last year, thanks to Mercari's float

Source: Bloomberg

  ただ、新興企業に対する態度は変わりつつある。グロービス・キャピタル・パートナーズの代表、堀義人氏は先週、都内でのフォーラムでスタートアップ企業に対するイメージが変わり、就職する学生が増えていると指摘。アジア・プライベート・エクイティー・レビューによれば、創業間もないテクノロジー企業に回る資金は今年これまでに17億ドルと、昨年全体の16億ドル強を上回った。

Start Me Up

Venture capital and private-equity investing in Japanese early-stage tech firms reached $1.7 billion this year, narrowing the gap with non-tech targets

Source: Asia Private Equity Review

Note: Tech targets include firms such as Mercari and Sansan.

  だが、メルカリやSansanを支援した堀氏でさえ、大規模なベンチャーキャピタル投資を支えるほど資金は十分ではないと指摘する。  

  日本の真の投資チャンスは現在、プライベート・エクイティー(PE)にある。事業再建を望む成熟企業は多く、高齢化しつつある創業者は身売りを模索しているからだ。昨年、ベイン・キャピタル率いるグループは東芝のメモリー事業を180億ドルで取得し、今週にはKKRがKOKUSAI ELECTRICを米アプライド・マテリアルズに約2500億円で売却した。KKRはKOKUSAIの前身である日立国際電気を株式公開買い付け(TOB)によって2017年にほぼ同額で買収している。ゆうちょ銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もPE投資を増やしている。

  それでも安倍晋三政権は2023年までにユニコーンを20社育てることを目指している。この目標達成は厳しいだろう。

(ニシャ・ゴパラン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、企業の合併・買収や銀行業を担当しています。以前はウォールストリート・ジャーナルとダウ・ジョーンズでエディターや記者として働いていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:If Masa Won’t Invest in Japan, Why Should You?: Nisha Gopalan(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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