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Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本が米国の自動車追加関税を恐れる7つの理由ーチャートで読み解く

  • 追加関税は日本GDPを0.5-1%押し下げる可能性ー野村総研
  • 自動車業界は輸出、生産、雇用、設備投資と幅広く製造業をけん引
Honda Motor Co. sport utility vehicles (SUV), front, and Toyota Motor Corp. vehicles bound for shipment, back, bound for shipment sit at a port in Yokohama, Japan, on Monday, Feb. 18, 2019. Japan is sticking to its view that the U.S. won’t apply higher tariffs on imports of Japanese cars and auto parts so long as negotiations toward a trade deal continue, according to Tokyo’s lead negotiator with Washington. Negotiations over a trade deal announced last September by Trump and Abe have yet to start, partly due to ongoing talks between Washington and Beijing.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

茂木敏充経済財政・再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が精力的に進めている日米貿易協定交渉では、自動車と農産品が最大の焦点だ。特に自動車分野はトランプ米大統領が自国産業保護のため25%の追加関税を検討しており、発動されれば日本経済は相当の打撃を受けかねない。その理由を7つのチャートで解説する。

対米最大の輸出産業

  日本にとって米国は中国と並ぶ輸出相手国であると同時に、自動車については最大の輸出先。2018年度の対米輸出額は15兆円を上回り、このうち自動車・同部品は約3分の1を占めた。

最大の輸出産業、輸送用機器

製造出荷のメインプレーヤー

  国内製造業の出荷額に占める自動車の割合は18.2%と、1970年代の1桁台から徐々にシェアが伸びている。一方、70-80年代に勃発した日米自動車摩擦を和らげるため、日系メーカーは相次ぎ米国での現地生産化を進め、2000年代後半には日本車の海外生産は国内生産を上回った。   

製造業のけん引役

   

米国での投資

  日系自動車メーカーによる米国向けの累計投資額は510億ドルに上り、米国内に24の製造工場、45の研究開発拠点、39の物流センターを持つ。2018年には日本から米国への輸出台数(約175万台)の2倍超となる370万台を生産し、直接雇用は9万3599人、関連産業も含めると161万5460人の雇用を生み出している。

日系自動車メーカーの米国投資額

累計510億ドル、24工場、45研究拠点

出典:日本自動車工業会 JAMA IN AMERICA 2019-2020 (単位:億ドル)

就業人口の1割弱

  全就業人口に占める自動車関連就業人口は8.3%に相当する539万人に上る。このうち自動車本体や部品の製造工程に携わるのは16%程度で、半分は自動車を利用した運送業やレンタカーなど関連サービスが占める。これ以外にも、資材の製造工程や、ガソリンスタンド、販売店、整備工場で働く人などすそ野は広い。

自動車関連の就業人口

将来への投資

  電動化や自動運転など「CASE」と呼ばれる技術革新で事業環境の変化が著しい自動車業界は、将来に備えた設備投資にも積極的だ。製造業の設備投資の5分の1を占め、日本経済をけん引する役割を果たしている。

将来への投資にも積極的

製造業の設備投資に占める自動車の割合は21.2%

出典:日本自動車工業会(2017年度の計画値)

GDP寄与で製造業最大

  輸出、生産、雇用、設備投資いずれも製造業のけん引役となってきた自動車業界は国内総生産(GDP)の面で日本経済に貢献。産業別の名目GDPを見ると、製造業で最大の稼ぎ頭は自動車を含む輸送用機械で16%に上る。1台当たり約3万点の部品を組み立てる自動車の動向は、鉄鋼や化学などの素材から、プラスチック製品、電気機器などの半製品、完成品の販売や整備、走行燃料を取り扱う業界まで幅広く影響する。

製造業最大のGDPは輸送用機械

出典:内閣府・経済活動別国内総生産(名目、2017年)

トヨタ自動車が首位

  2002年以降、国内上場企業の時価総額トップはトヨタ自動車。7月1日時点の時価総額は22.4兆円と、ソフトバンクグループの約2倍となっている。自動車・同部品への追加関税賦課により自動車業界が不振に陥るようなら、日本の株式市場全体への影響も免れない。

国内上場企業の時価総額トップ5社

          
  4月に始まった日米貿易交渉で両国は、自動車と農産品分野での早期合意を目指しているものの、議論は平行線をたどっている。

  野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、欧州連合(EU)の試算では、関税が25%に引き上げられると、自動車・同部品の輸出額が半減する可能性があり、日本の場合も同様だと指摘。その場合、17年度の実績に基づくと、名目GDPが0.5%相当押し下げられ、波及効果も含めれば1%に近づく可能性もあるとの見方を示し、「日本経済には相応の打撃となることを覚悟しなければならない」と予想する。           

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