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Photographer: Toru Hanai/Bloomberg
cojp

リバーサルレートに再び脚光、マイナス金利拡大観測が後退との見方も

  • 2017年に黒田総裁が紹介、提唱者の論文更新版をウェブサイトで公表
  • 若田部副総裁「現状でそこに至っているという判断はしていない」

金利を下げ過ぎると金融機関の仲介機能を損ない、むしろ引き締め効果が強まる金利水準を指すリバーサルレート。日本銀行が先週、リバーサルレート理論の提唱者の論文をウェブサイトで公表したことが市場で話題になっており、利下げ期待の後退につながったとの見方が出ている。

  日銀が21日公表したのは、米プリンストン大学のマーカス・ブルナーマイヤー教授が5月に開かれた日銀金融研究所主催の国際会議で提出した英文の共著論文「リバーサルレート」。黒田東彦総裁は2017年11月のスイス・チューリッヒでの講演で、同教授の理論を紹介。異次元緩和の正常化観測が一時的に強まるきっかけとなった。今回の論文はその更新版だ。

プリンストン大学のブルナーマイヤー教授

プリンストン大学のブルナーマイヤー教授

Photographer: Christopher Goodney/Bloomberg

  野村証券の中島武信シニア金利ストラテジストは27日付リポートで、同論文が「日銀に対する利下げ期待を後退」させ、超長期金利のスティープ(金利曲線の傾斜化)や、前日の中期債買い入れオペの不調につながった可能性もあると指摘した。

26日の中期債の買い入れオペに関する記事はこちらをご覧ください

  黒田総裁は17年の講演で、リバーサルレートの議論が最近注目を浴びているとした上で、「金利を下げ過ぎると、預貸金利ざやの縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方」と説明した。

  日銀は16年1月にマイナス金利を導入。一段の利下げ観測から長期金利(10年物国債利回り)は7月にマイナス0.3%まで低下した。日銀は9月に金融調節対象をマネーの量から金利に変更。長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作を導入した。

  同時に行った総括的な検証で、金利水準、特に長期・超長期金利の過度な低下は「保険や年金などの運用利回りを低下させるほか、企業における退職給付債務の増加などにつながっている」と指摘。「将来における広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意する必要がある」とした。

若田部副総裁は懐疑的

  黒田総裁は先月の国際会議でのあいさつで、リバーサルレートについて「実証分析は増えてきてはいるが、現時点ではこれらのリスクの特性やその確率分布は必ずしも明らかになっていない」と述べ、一定の距離を置いている。

  地域金融機関の経営についても、5月の国会答弁で、利ざや縮小が地域金融機関の収益に影響与えていることを認識しており、「5-10年で地域金融機関に困難が生じる恐れ」があるものの、「現状では地域金融機関の信用仲介機能に影響出ていない」と述べた。

  ただ、日銀が19、20日に開催した金融政策決定会合では「銀行の収益悪化が進む中、貸出金利の水準は金融緩和の効果が反転し銀行貸し出しを減少に転じさせる『リバーサルレート』に近付きつつあると考えられる。一段と貸し出しのベースレートが低下した場合には、金融政策の効果を実体経済へ波及させる重要なチャンネルである銀行貸し出しが減少しかねない」との意見が出ている。

  一方、若田部昌澄副総裁は27日、青森市内での記者会見で、「仮にリバーサルレートみたいなことが理論的に考えられるとしても、現状でそこに至っているという判断は私としてはしていない」と指摘。「この論文だけをもって政策が変わるということは全然ない」と述べた。

  大和証券の山本賢治エコノミストは24日付リポートで、同論文は「追加緩和によるさらなる金利低下を正当化していない」と指摘。それでも1ドル=100円を割れるような円高になり、利下げせざるを得ないとしたら、長期金利より「短期金利のみの引き下げが好ましい」という。その際は「マイナス金利貸し出しといった策が併せて採用される可能性がある」ほか、銀行株の指数連動型上場投資信託(ETF)買い入れや金融機関の劣後債務買い入れなども「将来的なオプション」とみる。

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