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初夏の伊豆で試す新型スープラの魅力-往年の名スポーツのDNA健在

  • トヨタとBMWコラボ、直6ターボやロングノーズなどの伝統残る
  • 乗り味は欧州のロードスター想起、しっかりと走りを楽しむクルマか
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Source: Toyota

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自動車メーカー同士の協業は時として良い成果を生むこともある。トヨタ自動車の新型「スープラ」もその一例だ。独BMWの「Z4」とプラットフォームやパワートレインなどを共有。両社の大胆なコラボは現時点では成功しているように見える。

  同じ日本と欧州の自動車メーカー間の組み合わせでも20年にわたって協業関係を続けながらカルロス・ゴーン前会長の逮捕以降、対立を深めているようにもみえる日産自動車と仏ルノーとは大違いだ。2社を巡る連日の激しい報道合戦にうんざりしていたこともあり、私は6月上旬のよく晴れた日、新幹線に飛び乗って伊豆で開かれたスープラの試乗会に参加してその乗り味を楽しんだ。

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17年ぶりに復活した「スープラ」

Source: Toyota

  スープラはトヨタのフラッグシップスポーツカーで長らく生産されていなかったが今年17年ぶりに復活し、日本でも発売された。新型では3グレードを用意。いずれもFR(前置きエンジン・後輪駆動)でツインスクロールターボエンジンを搭載する。最上級モデルの「RZ」はスープラの伝統を継承する直列6気筒の3リッターエンジンで最高出力340馬力。0ー100キロ(時速)の加速は4.3秒となっている。2リッターモデルもあり価格は490万円(消費税込み)から。

  ロングノーズ・ショートデッキのスタイルは歴代スープラの外観を特徴づけてきた。新型ではボディー造形はより複雑化しているものの、たとえエンブレムがなくともトヨタのスープラとわかるデザインとなっている。トヨタのエンジニアらがボンネットが大きく、車室はおまけ程度と言いたいぐらいの広さしかないBMWの「Z」シリーズにスープラとの親和性を見いだしたのも不思議ではない。

  実際にドライブを始めると、そのきびきびとしたレスポンスの軽い走りは私が以前運転したことがある3代目スープラを思い起こさせた。車両重量は1410-1520キログラムながら、立ち上がりは弾むような加速でコーナーもしっかりと曲がる。

  操作性も抜群で自分が思った通りのコースを走らせることができる。その点では日産の「GT-R」を上回っており、BMWの「Z3」に近いとの印象を持った。

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新型「スープラ」の内観

Source: Toyota

  実際のところ、スピードを追求するというよりしっかりとした走りを楽しむのに適したエンジンと車体のサイズという意味において新型スープラに最も近い競合車種はポルシェの「ケイマン」ではなかろうか。BMWのお家芸である50対50の前後重量配分のおかげで曲がりくねった峠道でも車外に放り出されるような不安に襲われることはなかった。

4気筒も好印象

  8速スポーツオートマチックトランスミッション(AT)のギアチェンジはなめらかだ。スポーツモードというものは多くの車では高回転までエンジンの回転を多少引っ張る程度でほとんど効果を感じられないことが多いが、スープラにおいては排気音やステアリングの感覚にいたるまで車のキャラクターが激変する。

  ただ、ドリフト走行を楽しみたい向きには残念なことにマニュアル車の設定はない。6気筒には及ばないものの廉価な4気筒モデルも思いのほか力強かった。市街地のノーマルモードでの走行ではその違いはほとんどわからないのではないだろうか。

  低重心で最低地上高が低くドアも小さめに感じられるため旧モデルと比べても車室への出入りはやや窮屈に感じられる。そうした点からみれば今回のスープラのルーツはむしろ欧州のロードスター(オープンカー)に求められると思えてくる。思い切って後部座席を省略し、2シーターとしたのもそのあらわれと言えるだろう。

  外観デザインは複雑な曲線で織りなされているが、レクサスを特徴づけるスピンドルグリルのような押しつけがましい自己主張はない。フロントとリアのランプの造形は歴代モデルの意匠を受け継いでおり、先鋭的な車ながら全体としてははっきりとトヨタ車だと判別することができる。

Japan Launch of The Toyota Motor GR Supra

シルバーの「スープラ」

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  多くのドライバーはスープラの内装から日本の自動車メーカー特有の実用主義を感じ取れることだろう。不要な装飾はなくスイッチ類の一部はプリウスに使われているのと同じ部品のようにも見える。8.8インチの液晶ディスプレーやエアコンなどの操作器類は望ましい位置にあるが、普通すぎてやや新鮮味に欠けるかもしれない。シートは快適性を重視している。

困難の連続

  スープラは熱狂的なファンが多いにも関わらず2002年以降生産されていなかった。それだけに、新型を他社と共同開発することはトヨタにとって大きな賭けだった。

  今回のプロジェクトは困難の連続だった、と新型スープラのデザイン企画を担当した渡辺義人デザイン部主幹は話す。例えば、BMW製の直6エンジンは同社が採用するキドニーグリルで大量の空気を取り込むことを前提に設計されたものであり、トヨタの車でエンジンの冷却をどうするかということについても考えなければならなかったという。

  生粋のトヨタ信者やこだわりが強いスープラファンはこの車が欧州の工場で生産されることで拒絶反応を起こす可能性もあったが、今のところその心配はないようだ。トヨタは新型スープラの全世界での生産や販売台数の計画を開示していないが、欧州に割り当てられた900台に関しては既に事前予約の段階で完売したと発表している。

  初期段階で購入を決めたドライバーはスープラの歴史や出自を気にしていないようだ。われわれもこの車のクルマとしての出来のよさを素直に楽しめばいいのかもしれない。

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