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知名度上昇の「令和おじさん」、期待は一時的と自己分析-菅官房長官

  • 安倍政権の要、「内閣をまとめていく立場」-訪米で活動の幅広げる
  • 農産物輸出拡大に意欲、「改革のやりようがいっぱいある」

新元号「令和」の発表役として社会で知名度を上げた菅義偉官房長官が、政権内でも一段と存在感を増している。5月の訪米ではトランプ政権高官と相次いで会談するなど外交舞台でも活動の幅を拡大。世論調査でも次期首相候補の1人として人気を集めつつある。本人は今の人気は一過性のものとして、安倍晋三首相を支える姿勢を徹頭徹尾崩さない。

  官房長官としてこれまでに、外国人観光客の誘致拡大や携帯電話料金の値下げなどを主導。同長官を突き動かしているのは「国民から見て当たり前でないことが結構ある」という問題意識だ。官公庁の「縦割り」が障害となっているため、「政治が方向性を出さないとなかなか進まない」。

Japan Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga Interview

朝の散歩が日課の菅義偉官房長官

Photographer: Keith Bedford/Bloomberg

  令和の時代に入って、特に力を入れている政策の一つが農林水産物の輸出拡大だ。4日開かれた関係閣僚会議では、吉川貴盛農水相らを前に「行政上の対応の遅れによって大きな可能性があるわが国の農産品の輸出が滞る事態は、早急に解消しなければならない」と檄(げき)を飛ばした。

  政府は農産品輸出額を19年までに1兆円に増やす目標を掲げているが、菅氏は輸出に際して各国の衛生基準に合わせた審査に遅れがあることなどを問題視。4月に自ら主導して関係閣僚会議を立ち上げ、今月には農水省に各国との交渉から輸出審査までを一元化する組織を新設する方針を決めた。

  先月のインタビューでは、1兆円達成後の目標額はまだ示していないが、「高い目標を掲げてやっていきたい」と指摘。「今まで遅れていた分、改革のやりようがいっぱいある」と意欲を示した。

Japan Announces The Name of New Imperial Era

新元号「令和」を発表する菅官房長官

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

異色の存在

  秋田県出身の70歳。上京後にいったん段ボール工場に就職するが、その後、法政大学に進学。アルバイトなどで学費を稼ぎながら卒業した。衆議院議員秘書、横浜市議を経て、96年衆院選で初当選。総務相などを歴任し、12年の第2次安倍内閣発足時から6年以上にわたって官房長官を務め、在任期間は歴代最長となった。

  官邸に近い議員宿舎に暮らし、官房長官就任後は、横浜市の自宅では一度も「寝ていない」。朝食前にスーツ姿で散歩するのが日課。危機管理担当として、いつでも官邸に駆けつけられる心構えの表れだ。

  元経産官僚で慶応大学大学院の岸博幸教授は、今の自民党議員は政治家の2世、3世や官僚出身者が多いと指摘した上で、菅氏について「全然違う異色の存在」だと話す。小泉純一郎政権で総務相秘書官を務めた岸氏は、当時総務副大臣だった菅氏の印象について「改革に非常に熱心で、それを諦めずに粘り強くやる」と評する。

  岸教授は、改革に取り組む菅氏の姿勢は今も変わっておらず、「利権を守りたい」と考える省庁にとっては「怖い」存在であり、それが「政権の重しになっている」とも語った。

  ただ、政権が長期化するにつれ、森友学園問題を巡る財務省の文書改ざんなどの不祥事は、強い権限を持った官邸への「忖度(そんたく)」が背景にあると野党側から追及を受けることもある。安倍政権は2014年に縦割りの弊害を排除するため、内閣人事局を設置。各省幹部人事を官邸で一元的に管理することになった。菅氏は3月6日の衆院内閣委員会で、内閣人事局によって「戦略的な人事配置ができている」と指摘。「官邸へのそんたくといった指摘は当たらない」とも述べた。

新元号

  4月1日に新元号を発表してからは、ネット上で「令和おじさん」と呼ばれるなど知名度が格段に向上。朝日新聞社が18、19両日に実施した世論調査で、安倍首相の次の自民党総裁にふさわしい人をたずねたところ、菅氏は小泉進次郎衆院議員、石破茂元幹事長に続く3位に浮上し、岸田文雄政調会長や河野太郎外相を上回った。

  昭和天皇が崩御した30年前の1989年、「平成」を発表した当時の小渕恵三官房長官は9年後の98年、首相にまで上り詰めた。菅氏は「やはり新元号を発表してから、色んな方に関心を持ってもらったということだろうか」と知名度上昇を実感しているが、次期首相への意欲を聞いても、期待は「一時的なものですよ」とかわしてみせる。

Japan Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga Interview

インタビューに応じる菅官房長官

Photographer: Keith Bedford/Bloomberg

外交

  5月の訪米ではペンス副大統領やポンぺオ国務長官、シャナハン国防長官代行と相次いで会談した。拉致問題担当相を兼務するとはいえ、危機管理を担当する官房長官の海外出張は異例のことだ。シャナハン氏は4日、安倍首相との会談の冒頭、「首相の下で強力なチームが仕事をしている」と述べた上で、真っ先に菅官房長官の名前を挙げた。

  訪米時に菅氏は、安倍首相が前提条件なしでの日朝首脳会談を目指す方針を米側に伝えた。拉致問題について米側は、「こちらから言わなくても、日本の立場・気持ちは分かる」という程、「ある意味で浸透していた」と指摘。それが「非常に有り難かったし力強い」との感触を得たという。

   安倍首相の第1次内閣からの通算在職日数は初代首相の伊藤博文を抜き、歴代3位となった。菅氏は官房長官としての自身の役割について、「首相が国民の皆さんに約束した政治・政策を前進できるよう、内閣全体をまとめて進めていくのが私の基本的な立場だ」と断言。今後も「当たり前のことを一つ一つ、またスピード感を持ってやっていこうと思う」。強い意志のこもった言葉だが、語り口はいつものように静かだった。

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