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米利下げ、それほど確かなのか-スロック氏とハッチウス氏が疑問視

  • 先物市場は年末までに利下げが行われる可能性を98%織り込む
  • ドイツ銀とゴールドマンのチーフエコノミストから異論の声

ウォール街の主要金融機関2社のチーフエコノミストは、米金融当局が景気拡大を持続させるため、近いうちに利下げに踏み切るとの見方に疑問を投げ掛けている。早期利下げを見込むトレーダーは先走りしているのではないかというわけだ。

  ドイツ銀行のチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏率いるチームは「米金融当局が何をするかについて、市場はほとんど常に間違える」と題した次のチャートを作成した。

Bad Predictions

  赤い線は主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の過去の軌道、点線はFF金利について先物市場におけるトレーダーの予想がどうだったかを示す。2001-04年を見ると、トレーダーが上昇を見込んでいたのに、実際のFF金利は低下。04-07年は横ばい推移の見通しに対して実際は上がり、上昇が予想されていた09-16年は横ばい推移といった形で、いつも予測は外れだったというものだ。

  青い線は先物市場における直近の見通しを反映している。それによれば、FF金利の誘導目標レンジの上限は現行の2.5%から、21年までに1.5%に引き下げられると見込まれている。10日時点では、今年末までに何らかの利下げがある可能性を98.1%織り込んでいた。スロック氏はチャートに青字で「今回は市場が正しいとなぜ言えるだろうか?」と皮肉を書き込んだ。

  ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ジャン・ハッチウス氏は10日、「パニックに陥る時ではない」とするリポートをまとめた。ハッチウス氏は、5月の米国の非農業部門雇用者数の伸びが前月比7万5000人にとどまるなどし、失望すべき内容だったのは確かであり、「先月の米中通商交渉の物別れを受けて、関税絡みの不確実性が大幅に高まったり、生産の伸びが鈍化したりした」のも事実だと認める。

  ハッチウス氏は一方で、中西部の洪水が5月の雇用統計の数字の重しになった点や、雇用の伸びの3カ月および6カ月のトレンドは力強さを増しているといった前向きな側面に言及。失業率は3.6%と超低水準のままであり、企業や消費者の調査もポジティブだ。米国とメキシコが不法移民流入問題で合意に達したことで、主要な不確実性の1つも取り除かれた。

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4日に講演したパウエル議長

Photographer: Taylor Glascock/Bloomberg

  連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が4日、金融当局として「拡大持続のため適切に行動する」と語ったのを受けてトレーダーは興奮した。だがハッチウス氏は、短期的な市場の動揺についてのパウエル議長の発言がそれほどハト派的ではなかったと論じる。「通商政策を巡る懸念が急激に高まった局面で、議長が長期的な問題にもっぱら重点を置けば、講演内容は一部の市場参加者にとって、実態を把握していないと響いたかもしれない」と話した。

  18、19両日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、状況はもっとはっきりする。その後、20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するトランプ大統領は中国の習近平国家主席との会談を実現させたい意向だ。

  ハッチウス氏は「このような情勢では、選択肢を確保しておくことが正しいやり方だ」と主張する。FOMC参加者が会合後に公表する最新の経済予測について同氏は、見通しが幾分下方修正され、数人の参加者は利下げ見通しを示唆するかもしれないが、19年の金利予測の中央値は据え置かれ、「利下げが間近であるとパウエル議長が示唆することはない」だろうとみる。

  ハッチウス氏の予想が正しければ、利下げシナリオを丸呑(の)みした先物トレーダーの多くは、今後1週間ほどで誤ったポジションを解消しようと苦戦を強いられることになるだろう。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Don’t Be So Sure the Fed Is Cutting Rates, Say Slok and Hatzius(抜粋)

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