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米商務省の相殺関税巡る提案、財務省と衝突の異例事態招く恐れ

  • 通貨安誘導と判断された国に相殺関税を課すと商務省が先月提案
  • 「意見を異にする正当な理由」あれば、財務省分析の無視も可能

トランプ米大統領は、自身が仕掛ける貿易戦争の次の戦場に5兆1000億ドル(約553兆円)規模の外国為替市場を巻き込もうとしている。そして、商務省がそのために先に打ち出した提案は、財務省との衝突という異例の事態につながる恐れがある。

  商務省の提案は、通貨安誘導していると判断された国からの輸入品に相殺関税を課す内容。事情に詳しい関係者4人によれば、財務省当局者の間ではこの提案に警戒感が広がっている。市場の混乱を招くほか、通貨政策を政治問題化させかねないことが主な懸念材料という。

France's President Macron And President Trump at 75th Anniversary of D-Day Landings Ceremony

トランプ大統領

Photographer: Geert Vanden Wijngaert/Bloomberg

  さらに関係者の話では、当初の計画案には経済についての誤った前提が盛り込まれていると一部の当局者が難色を示し、問題へのアプローチの在り方もあまりにも繊細さを欠くと受け止められた。貿易相手国が為替操作をしているかどうかを監視するのは財務省の仕事の一部だ。

  国際通貨基金(IMF)のエコノミストを務めた経歴を持つ米コーネル大学のエスワール・プラサド教授(通商政策)は、「多額の対米貿易黒字を抱える国々との貿易戦争で、通貨を巡る対立が次の前線になるとトランプ政権は明確に示した形だ」と指摘した。

  商務省の提案はドルの新たな相場変動要因となり、米国の通商政策の混迷の度がさらに増す恐れがある。歴代の大統領や政権は、米国債に対する海外からの需要を支えることなどを狙い、強いドルが米国の国益にかなうと唱えてきた。だが、通貨安誘導に従事していると判断された貿易相手国に圧力をかけることになれば、ドル安につながる可能性がある。

弱いドル政策

  プラサド氏は「他国通貨の対ドル下落を容認しない姿勢によって、米国は暗黙のうちに弱いドル政策に移行しつつある」との見方を示した。

  モルガン・スタンレーのアナリストは6日の顧客向けリポートで、今週末に福岡市で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議を受けて、「ドルが早期の売り圧力にさらされる可能性」に言及した。

  商務省は連邦公報に掲載された提案で、「不公正な補助を受けた輸入品により打撃を受けた」米国の労働者や農家、企業を「救済する」のがその目的だとし、この種の相殺関税が他国との貿易を阻むとは想定していないと説明した。

  しかし、元財務省当局者も現役の当局者もこの主張には懐疑的だ。元同省当局者のマーク・ソーベル氏は、有害な通貨慣行に米国が対策を講じることに価値はあるとしつつも、関税賦課といったやり方は「世界の貿易や資本フローを混乱させて通貨戦争を招き、国際通貨・金融システムを損なう恐れがあり、他国が報復すれば事態は一層悪化する」と警告した。

  財務省の担当者に商務省との対立点についてコメントを求めたが返答は得られていない。商務省の報道官はコメントを控えた。

  商務省の提案は標的とする国を特定していない。自国を競争上有利にするような通貨安誘導を行っていると判断される国からの輸入品に対する相殺関税の賦課を米企業が要請できるようにするもので、米政府も調査を開始することができると、5月23日の提出文書に記されている。

  規制が実施されることになれば、商務省国際貿易局の執行・法令順守部門が担当することになると、報道官は語った。

分析枠組み

  提案によると、相殺関税を賦課するかどうかの判断は財務省が策定する分析枠組みに基づく。同省高官は、G20出席のためのムニューシン財務長官の訪日を控えた記者ブリーフィングで、提案に関する一般の意見公募期間が今月27日に終了後、この枠組みのための基準を決めると話した。

President Trump Visits United Kingdom

ムニューシン財務長官

Photographer: Luke MacGregor/Bloomberg

  匿名で語った同高官の説明では、財務省は枠組みを公表し、半期に一度の為替報告書との一貫性を保つことを目指す方針。しかし、商務省の提案は、「意見を異にする正当な理由」があれば、同省が関税賦課の決定において財務省の分析を無視することもできるとしている。

  ワシントンの法律事務所ジェイコブソン・バートン・ケリーで国際通商法務を扱うダグ・ジェイコブソン弁護士は、米国の2つの省庁が公然と対立するのは「極めて異例」であり、政権は「居心地の悪い」状態に置かれるリスクがあると解説した。

  一方、為替トレーダーらは、政府によるいかなる形の市場への介入であっても不安を抱くとし、それが世界で最も大きくかつ重要な国の場合、特にそうだと話す。為替戦略を手掛けるテンパスのジョン・ドイル氏は「ツイートではなく、金融政策と経済データのファンダメンタルズに基づいて通貨取引が行われる方がずっと望ましい」と述べた。

原題:Trump’s Currency War Plan Puts Treasury and Commerce at Odds(抜粋)

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