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ルノーの「浮気」に日産どう対応、排除の切り札残る-FCA破談

更新日時
  • ルノー・日産交渉は振り出しも、信頼関係は壊れた状態-アナリスト
  • 日産のルノー株買い増しでの支配脱却の秘策、FCA統合白紙で復活
Nissan Motor President Hiroto Saikawa Presents Full-year Earnings Figures
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
Nissan Motor President Hiroto Saikawa Presents Full-year Earnings Figures
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が仏ルノーに対する統合提案を撤回したことで、ルノーと日産自動車との交渉は振り出しに戻った。ただ、ルノーは日産以外の会社と「浮気」をした形で、両社がこれまでと同じような信頼関係を維持できるか疑問の声も出ている。

Nissan, Renault and Mitsubishi Motors Heads Hold News Conference as Ghosn Seeks to Regain Clout

今年3月、3社連合トップの記者会見に臨んだルノーのスナール会長と日産の西川社長(中央)

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  「ルノーが浮気をしたようなもの」。自動車調査会社カノラマの宮尾健アナリストは日産と20年以上にわたるアライアンス(企業連合)を組んできたルノーが突如としてFCAとの統合を模索したことについてこう表現する。ルノーには「日産を支配下に置くため2対1で戦った方がいいとの狙いがあったのではないか」とし、両社の「信頼関係は崩れた状態」にあるだろうと述べた。

  ルノー取締役会は5日、FCAから出されていた統合案を前日に引き続いて協議。一時は承認寸前となったが、結論は再度先送りした。これを受けてFCAは急遽(きゅうきょ)提案を撤回。FCAは発表資料で「フランスにおける政治的条件により、現在この統合を実現できる状況にないことが明らかになった」ことを理由に挙げた。

  1990年代後半に経営危機に陥っていた日産を巨額の出資で救済したルノーは、今でも日産株の43.4%を保有する筆頭株主だ。一方、日産もルノー株15%を保有しているが議決権はない。ただ、25%以上に買い増せばルノー保有の日産株の議決権をなくすことができる。

離婚の可能性は

  日本の会社法308条の規定を利用し、日産がルノー株を買い増してルノーの支配力を消滅させる手段は、昨年のカルロス・ゴーン前会長の逮捕以降、ルノーとの交渉における有力な武器と位置付けられていた。

  日産幹部はルノーが非公式に日産へ経営統合を要請していた5月上旬の取材に、ジャンドミニク・スナール会長らは厳しい態度で日産への要求を出してくるものの、日産側が強く反発するとあまり抵抗せず取り下げることが多いとし、ルノーは技術だけでなく財務面でも日産に依存しており、株の買い増しで関係を絶たれることは避けたいのだろうとの見方を示した。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の峯嶋廣太アナリストは5日の電話取材で、日産にとってルノー株の10%程度の買い増しは「キャッシュでもちろん買える」とそれほど難しいことではないと指摘。一方、FCAとルノーの統合が実現していれば日産の統合会社への株式保有比率は7.5%に低下し、保有先の企業価値も大幅に高まる見込みだった。峯嶋氏は「統合してしまえばかなり買うのは難しくなる」状況になっただろうと話した。

  西川社長は6日夜、都内で記者団に対してFCAによるルノーとの統合案撤回については「何とも言えない」とした上で、「アライアンスの間口を広げることには将来的にもオープン」と話した。また、ルノーと日産との統合交渉についても、「オープンに議論していくことに変わりはない」との認識を示した。

  カノラマの宮尾氏は、FCAの統合提案撤回はルノーにとってのプラスはまったくないが日産にとっては打つ手が増えて有利になったとみており、「昨日までと比べて日産の発言権が上がって意志を通しやすくなるのではないか」と話した。

  SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは6日の電話取材に、ルノーについて米国や中国の市場を持たないことなどから「誰が見ても単独では生き残れない」と評価。FCAと統合を協議したことで信頼をなくし、日産としては「もう離婚したいと思っているかもしれない」と述べた。

  遠藤氏は日産とルノーは新車開発などさまざまな業務を共同で手掛けており、当面は関係を絶つことは難しいとの見方を示した上で、ルノーが統合を強要するのであれば日産は三菱自動車と2社連合で事業展開することも「一つの手段」だと述べた。ルノーが経営統合の旗を降ろすならば「今まで通りやったほうがいい」とも話した。

日産とルノーを巡るこれまでの経緯

【18年11月19日】
東京地検が日産のゴーン会長(当時)を金融商品取引法違反容疑で逮捕。12月18日に日産がガバナンス強化へ改善特別委を設置決定
【19年1月20日】
仏政府がルノー・日産経営統合の意向との報道
【2月15日】 
ルノーのスナール会長が訪日、日産の西川社長らと面談
【3月12日】 
日産、ルノー、三菱自の3社が合議制でアライアンスの意志決定を行う「アライアンスオペレーティングボード」を設置。スナール会長は日産会長の座を求めず、日産の独立性を尊重するとコメント
【27日】
ガバナンス委が日産の指名委員会等設置会社への移行や会長職の廃止などを提言
【4月8日】
日産が臨時株主総会でルノーのスナール会長を取締役に選任
【22日】 
ルノーが日産に統合を再提案との報道
【5月14日】
日産は今期営業利益が前期比28%減と発表、配当も大幅カットに
【17日】
日産が西川社長の続投や社外取締役の強化を柱とした新経営体制を発表
【27日】
FCAがルノーに統合提案
【6月6日】
FCAがルノーへの統合提案撤回を決定
(8段落に西川社長のコメントを追加して更新します.)
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