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Photographer: Akio Kon/Bloomberg

「現代貨幣理論」支持者が日本政府に説く、財政赤字懸念は不要

  • 安倍政権は財政赤字削減の取り組みで10月に消費増税を予定
  • MMT理解すれば「日本の財政は危機ではないと分かる」ー自民議員
Japanese 10,000 yen banknotes are arranged for a photograph in Kawasaki, Kanagawa Prefecture, Japan, on Saturday, July 7, 2018.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

今最も話題の現代貨幣理論(MMT)は、自国通貨を持つ国の政府はデフォルト(債務不履行)リスク抜きに政府支出を拡大でき、それによって成長押し上げを追求できるという経済学説だ。物価急騰の恐れがあれば支出にブレーキがかかるが、日本ではデフレ阻止が最優先で2%の物価目標実現には程遠い。

  MMTは世界中で賛否両論を集める理論だが、実践の最善例として日本が挙がることはよくある。そして今、日本国内で論争が繰り広げられている。

  世界3位の経済大国である日本は財政赤字国であり、その国債を日本銀行はゼロ金利政策の下で購入している。財政政策と金融政策の境目は曖昧だが、MMT支持派は問題ないという。
  

Japan's bond yields have stayed low despite growing debt

  だが、日本の当局者は国内総生産(GDP)の2倍以上に上る政府債務への対応が急務だと考え、財政赤字削減を図っている。この計画の中心にあるのが、10月に予定する消費税率引き上げだ。安倍晋三政権や黒田東彦総裁率いる日本銀行にとって、増税が不要だという考えは受け入れられない。

  麻生太郎財務相は3日の国会で、MMTを支持する自民党議員の質問に対し、「そういった説を知らないわけではないが、理論というべきかどうかも分からない、一つの理屈だ」と発言。消費増税は社会保障体制の維持に必要で、さらに延期すれば「国債の格付けが下がるぐらいのことは覚悟しておいてもらわなければならない」と語った。

  緊縮か政府支出拡大かという議論は、日本以外にとっても重要だ。世界の中央銀行総裁や財務相らは今週、20カ国・地域(G20)の会議で日本に集まる。

  世界の金融当局の多くは、超低金利にもかかわらず成長と賃金を押し上げることができない、あるいは不平等を解消できないなどの批判にさらされ、標準的な政策ツールがその有用性を失ったのではないかとの疑念を呼んでいる。これは、抜本的な変化を求めるポピュリストの台頭にもつながっている。

  MMTの支持者らは、マネーとは何か、税とは何のためなのか、政府支出で何を達成できるのかなど、経済の根本的な前提について考え直すべき時だと論じる。

  そしてMMT派のエコノミストは、債券市場に不安の兆候が出ない限り、財政赤字と負債規模にとらわれる必要はないと主張。10年物日本国債の利回りは13年以降、1%未満で推移している。

Piling Up

BOJ is the largest holder of Japanese government bonds

Source: BOJ, Bloomberg

  支持者によれば、MMTはスイッチを入れたり切ったりするようなものではない。全ての選択肢を利用するかどうかにかかわらず、自国通貨をコントロールしている政府に当てはまる枠組みだという。そうした政府は財政均衡のために増税をする必要がないとし、経済が過熱した際の需要抑制策としての増税はあり得ると説く。

  昨年まで6年間、安倍首相のアドバイザーである内閣官房参与を務めた藤井聡京都大学教授は「MMTの考え方におかしなところはない」と述べる。同教授は、消費増税を凍結した上で、15兆円の補正予算を3、4年続けて初めてデフレ脱却がかなう可能性がある、と主張する。

  日本国債から資金が逃げ出さない理由として従来からある説明は、国債の90%前後が国内投資家に保有されているということだ。中国など外国の債権者が大量保有する米国債とは事情が違う。

  主流派のエコノミストは総じて、成長促進のための財政支出に肯定的だが、MMTには財政をコントロールできなくさせるリスクがあると指摘する。マサチューセッツ工科大学(MIT)のオリビエ・ブランシャール氏は、MMTが有効なのは金利がゼロの場合のみだと論じる。

  現時点で、日銀の弾薬は尽きつつあるように見える。これは、中銀が政府支出の助けなしに、何もないところからインフレを生み出すことはできないということを証明するものだ。

  黒田総裁は麻生財務相と同様、MMTに否定的だ。過激で不適切なほか、日本の政策とは全く関連性がないと4月に発言した。

  MMTの草分けで同理論についての教科書「マクロエコノミクス(原題)」の共同執筆者であるビル・ミッチェル氏は、「麻生財務相はMMTを好きなように否定できる」が、日本は事実上、「MMTの原理を確立し、異なる財政・金融政策姿勢の結果を検証する実験場だ」と話す。

  日本国内では、安倍首相の自由民主党に所属する安藤裕衆院議員が、財政赤字を容認するMMTに関する勉強会を主催した。5月15日の会合には約10人の議員らが参加。安藤氏はMMTを理解すれば、「日本の財政は危機ではなく、ある程度のインフレになるまでは政府支出の拡大を恐れるべきではない」ことが分かるだろうと語った。

原題:Japan Worries About Its Deficit as MMT Argues There’s No Need(抜粋)

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