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出版の自由、香港で風前のともしび-天安門事件の「負の遺産」

  • 「路上デモに参加すれば、共産党が参加者を撮影」と鮑璞氏
  • 中国本土からやって来る若い人たちがまだ鮑氏の本を買ってくれる

香港に対する中国の支配力がどれほど強化されているのかを知るには、1989年の「天安門事件」に関する本の出版に挑戦してみればいい。

  香港にわずかに残る独立系出版社の1社である新世紀出版社の鮑璞氏(53)は最新著書の印刷を業者に断られ、家主からは敬遠され、大半の書店も受け入れてはくれなかった。「最後の秘密:6・4弾圧からの最終文書」とでも訳すべき89年6月4日に北京の天安門広場で起きた民主化運動に対する武力行使についての新著の出版になんとかこぎ着けたが、その過程の詳細を明かすことはできない。

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鮑璞氏

写真家:Anthony Kwan / Bloomberg

  6月の発売前に香港でのインタビューで、「香港で独立した出版業を維持するために実行可能な解決策はもはやない」と述べた鮑氏だが、「香港独自の出版界が将来も存続できるよう、独立した出版物流会社が少なくとも1社は生き残ってほしい」とも語った。

  香港は中国への返還時、高度な自治が約束されていた。だが、出版界の苦境は中国共産党の権力に疑問を呈するあらゆる出版物を検閲する習近平総書記(国家主席)の意向を映している。数百人あるいは数千人が殺害されたとみられる天安門事件から30年を経て、こうした弾圧を扱うような政治的に微妙な問題をテーマにした出版物はほとんどない。  

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「最後の秘密」の表紙

出典:ニューセンチュリープレス

  89年に民主化を求めた学生らに理解を示したことで解任され失脚した趙紫陽総書記の側近だった鮑氏の父親は、政治改革を支援したとして投獄された。息子の鮑氏は中国を離れ、米プリンストン大学で学び、その後コンサルタントになった。

  鮑氏は「路上デモに参加すれば、共産党が参加者を撮影していると常に頭に入れておくべきだ。それが天安門事件の負の遺産だ」と話し、香港で政治的に微妙な問題を扱う本の出版が不可能になるのは時間の問題だと予測。すでに自著の印刷や出版は断られており、事業は採算割れだと打ち明けた。最新作を印刷した会社名への言及は控えた。標的となる恐れがあるためだ。「印刷業者は本当にリスクを取ってくれている」と述べ、「代替策は米国での印刷だった」と説明した。

  鮑氏によれば、「最後の秘密」はこれまで見つかっていなかった共産党の文書を基にしている。この文書は天安門広場での弾圧決定に至る内情を提供しているが、入手方法などについてはコメントを控えた。

The Threat Within

China spending more on domestic security than defense since Xi took power

Source: National Bureau of Statistics, National General Public Budget, MoF NPC budget report, The Jamestown Foundation

  鮑氏になお希望を与えることが1つだけある。中国本土からやって来る若い人たちがまだ鮑氏の本を買ってくれることだ。「隅々にまで浸透してこそ本当の意味での自由だ。そうした自由の限界とは何か。諦める用意は私にはまだない」と鮑氏は語った。

原題:Tiananmen Book Seller’s Fight Shows China’s Sway Over Hong Kong(抜粋)

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