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Photographer: Keith Bedford/Bloomberg
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大地震にも備え消費増税を、「実感なき景気後退」なら延期不要ー吉川氏

  • 「いつか必ず来る」大地震、30年以内に起こる確率は驚くべき高さ
  • 既に山を付けたがい然性が高まっていることは言える-景気判断で

吉川洋立正大学長は、膨張を続ける社会保障費だけでなく、高い確率で発生が予測されている首都直下、南海トラフなどの大地震も財政破綻の引き金になり得るとみている。これに備えるためにも地道な財政再建が必要で、日本が景気後退に陥ってもリーマンショック級に至らない「実感なき景気後退」であれば、予定通り10月に消費増税を実施すべきだと主張する。

  吉川氏は28日のインタビューで、「今の財政赤字は持続可能ではない。一番の原因は社会保障費の膨張だが、同時に私たちが頭に置かなければならないのは地震ではないか」と指摘した。「大地震が30年以内に起こる確率は驚くべき高さであり、いつか必ず来ると言ってもよい。被害金額は半端ではないが、それに耐えなければならない。地道に財政再建に向けた努力を続けていかなければならない」と語った。

景気動向指数の推移

  

  

  その上で、「景気回復期もよく実感がないと言われるが、同様に『実感なき景気後退』もあり得るし、リーマン級の深刻な不況もある。景気後退と一言で言っても区別しなければならない」と言明。10%への消費増税については、「本当にリーマン級のショックだとはっきりしない限り、先延ばしすべきでない」と語った。

Rissho University Hiroshi Yoshikawa

吉川洋氏

Source: Rissho University

  政府は30年以内のマグニチュード(M)7級の首都直下地震の発生確率70%、死者最大2万3000人、経済被害約95兆円、M8、9級の南海トラフ巨大地震の発生確率が70-80%、死者最大32万人経済被害220兆円と想定している。日本銀行は1923年の関東大震災の経済被害が当時の一般会計予算の2.5倍の規模に上ったと推定。2019年度予算(約101兆円)でみると250兆円と莫大な規模になる。

  3月の景気動向指数の基調判断は景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正された。景気の山、谷を表す景気基準日付を議論する景気動向指数研究会の座長を務める吉川氏は、「機械的な判断なので景気の山はそれ以外の統計も加味して総合判断するが、過去『悪化』の判断が出るとかなりの確度で山を付けたことが多く、既に山を付けたがい然性が高まっていることは言えるのではないか」と語った。

  18年末の国債および借入金は1100兆5266億円と過去最高を更新し、債務残高の対国内総生産(GDP)比は230%超と先進国最悪。安倍政権は消費増税を二度延期しており、三度目もあり得るとの見方もくすぶる。

MMT

  自国通貨建て政府債務はデフォルト(債務不履行)せず、インフレにならない限り財政赤字を出し続けても問題ないとする「現代貨幣理論(MMT)」が話題を呼んでいる。日本の財政赤字は大したことはないという人もいるし、国債を保有しているのは日本人で、日銀が買い支えているので金利は上がらないという声もあるが、財政が破綻する「運命の日々が永遠に来ないということはあり得ない」と吉川氏はみる。

  日本がMMTの実験場になっているとの見方もあるが、黒田東彦日銀総裁は「極端な主張でなかなか受け入れられない」と否定する。市場を通して国債を購入しているので財政ファイナンスではないとの日銀の主張について、吉川氏は「屁(へ)理屈みたいなもので実際にはそうなりつつある。客観的に見れば、異次元緩和とMMTの違いも今一つ分からなくなっている」と語った。

  吉川氏は1951年生まれの67歳、1978年米エール大経済学博士、93年東大教授、2001年から06年まで経済財政諮問会議の民間議員、16年立正大教授、今年4月に同大学長。財政制度等審議会財政制度分科会の臨時委員も務める。

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