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【コラム】1ドル=7元か8元か、問題は水準にあらず

  • 中国が気にしているのは水準ではなく元安の速度とタイミング
  • ペッグ制廃止の05年、柔軟性とは元高だった-今は元安を意味する
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譲れない一線など考える必要はない。中国人民元は恐らく1ドル=7元より安くなるだろう。経済環境がそうした元安進行を正当化しており、政策対応もまた元安を促している。中国においても、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)は、ずっと無視できるものではない。

  中国人民銀行(中央銀行)が人民元の防衛ラインをどの水準に置いているかを巡り臆測がある。だがそこに欠けているのは長期的視点だ。中国の成長は鈍化しつつあり、元相場はいずれそれを織り込む。景気低迷に伴い、当局は財政の手綱を緩め、金融政策を緩和しつつある。今の環境では大きく値下がりした過去1年同様、人民元が弱くなるのは自然だ。経済成長の鈍化は、トランプ米大統領の就任以前から続くトレンドを反映している。

  中国経済が2桁成長を遂げた時代は終わった。労働力が減少し、当局は過剰融資・債務の圧縮を図る。ホワイトハウスが講じた対中関税がさらなる圧迫を招き、中国テクノロジー企業への制裁で自信も揺らぐ。このトレンドに逆らおうと人民銀が過度の資金を投じることに強い関心を寄せているとは私には思えない。

Reduced Reserves

How much firepower does PBOC want to expend?

Source: People's Bank of China

  中国が人民元の対ドルでのペッグ(連動)制を廃止したのは2005年。以来、人民銀が誘導しながらも元相場は上げ下げして推移してきた。他の主要通貨と同じ種類の経済・金融圧力におおむね反応している。

  中国当局が金融政策を調整し、資本流出の阻止を図り、極端な金融のゆがみを防ごうとするのは確かだ。中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の郭樹清主席が5月下旬のフォーラムで人民元投機に警告を発した口先介入はその手段の1つだ。ただ当局がけん制しているのは1ドル=7元台という水準そのものではない。そこに至る速度とタイミングについてだ。

No Level Sacrosanct

Since peg ended in 2005, yuan has moved both up and down

  トランプ大統領の対応を気にすることも無益だ。仮に今後、米財務省が半年ごとに公表する報告書で為替操作国に認定されたとしても、関税や華為技術(ファーウェイ)への制裁措置よりも大きな影響を受けることはないだろう。

  私は05年7月21日、中国がペッグ制を廃止したとのヘッドラインをブルームバーグ・ニュースで配信したが、当時の人々は人民元の先高観にとらわれ、元値下がりもあり得るという事実を軽視していた。米国とその同盟国、そして多くの投資家は、中国が自国経済の変化により容易に対応できるようになるため、為替相場の柔軟性は良いことだと唱え続けた。

  だがそこで言っていた柔軟性とは実のところ、一方向にしか動かない元相場のことだった。つまり元高だ。そしてペッグ制廃止から15年近くを経て、中国経済を取り巻く環境が変わった今、柔軟性が意味するところは元安容認だ。かつて、のらりくらりだったがその時の流れに沿って動いた中国は正しかった。今度もまた正しいだろう。柔軟性はあらゆる類いの問題をカバーしてくれる。

  (ダニエル・モス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、アジア経済を担当しています。以前はブルームバーグ・ニュースのエグゼクティブエディターとしてグローバル経済を担当し、アジアと欧州、北米でチームを率いていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Why the Yuan Could Break 7 ... or 6 ... or 8: Daniel Moss(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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